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different・worlds~異世界狩猟生活編~  作者: スコッ・ティエリエール
異世界狩猟生活の始まり
1/1

プロローグ 終わり始まり突然に

「どぅぅぅわああああああああああ」


 情けない声を上げながら上空から落ちていく、頬が震える感触を感じながら自分の状況を確認するも絶望的な状況であることしか分からない。止まってくれと心の中で叫ぶも自分の体はどんどん加速していく。何か無いか。思案するも答えは出ない。落下で感じる風が強くなっていく。とうとう何もできず地面が目の前いっぱいに広がる。ぶつかる、そう思い目をぎゅっと瞑る。しかし、予期していた衝撃は無かった。


 恐る恐る目を開けると、眼前には草原が広がっており何故か自分が直立していることが分かる。


「え」


 気の抜けた声を出し膝から崩れ落ちる。


「は……はは…………」


 この全く見覚えのない場所で脳裏に浮かんだのは何故自分がこんな目にあったのかである。



 時は少し遡る。先ほどの黒髪短髪で痩せ型長身の青年の目の前には、人型に近い形を保っている光の集合体とも言える存在がいた。


「ようこそ、太一君。ここが君たちの言う死後の世界の真実さ」


 と、光の集合体から声が聞こえてくる。


「この後、君には地球とは異なる世界へ行ってもらう。まあ、いきなり言われても困るだろうが基本は地球を始まりとして死んだら異世界へ飛ぶことになっているんだよ。異世界は一つじゃないし記憶を残したままの人も、元からその世界に存在していた人もいる。君には記憶を保持したまま旅立ってもらうことになる。ここの記憶は君には残さないし地球人はいないし帰る方法は無いと思い込んでもらうけどね。まあ、君が行く世界には帰る方法も地球人も事実いないけどさ」


 そこまで言って光の集合体は太一を異世界へと放り込んだ。



「俺は……死んだのか。いや、多分そうだ」


 芝生に膝を立てて座りながら、死ぬ直前の鈍い感触を思い出す。感触的には車に引かれたのだろうと一人合点いく。


「ここが死後の世界かー、もしかしたら昏睡状態なのかな俺」


 そう思い、頬を引っ張ったり目を開けたり閉じたりするが、あまりにも鮮明な眼前の光景から、現実であると思う他なかった。辺りを見渡すと、落下時に見えていた国らしき場所の城壁が目に入った。


「取り敢えず行ってみるか。死人の国だったりしてな」


 そう言って立ちがろうとするも、力が入らず尻餅をついてしまう。


「はは……死んだのかよ……くそ……くそっ」


 立ち上がる時に不意に理解してしまった自身の死。唐突に自分を襲った理不尽と死んでしまった悲しみで心が埋め尽くされ、ぽろぽろと涙が零れる。



 どのくらい経っただろうか、この世界に来た時は天高く昇っていた太陽も今では地平線近くまで沈んでいる。


「そろそろ行かないと……野宿なんてできる備えなんて無いしな」


 のそのそと門の方まで歩いていく。


 近くまで行くと威圧感を感じるほどに高く聳え立つ門に圧倒される。どうしてこんなに大きな門が要るのか、太一はその時はまだ死後の世界はすごいなあと思うだけであった。門の近くでは入国審査でもあるのだろう列ができていた。太一も列に並び様子を窺う。予想は当たっており、兵士らしき人物らに荷物などを調べられているようだ。


「やべ、入国証も身分証明書も無いぞ。あ、死後の世界だから要らないか。待て待て待て審査ってなんだ、俺は死後の世界にきたのではないのか?」


 半分正解で半分間違いの結論を出す。どうするか考えているうちに自分の番が来た。


「ギルドカード等の身分を示せる物をお願いします」


 兵士の厳格な声が聞こえる。鼓動が早くなるのが分かる。少し間を置いて太一は口を開いた。


「すみません、自分は今、身分を示せる物がありません」太一は少し声をうわずらせながら続ける。「気づいたら、あの草原にいました。」


 嘘をつかなかった自分を心の中で責める。兵士は少し困惑した表情を浮かべた後、何か合点がいった様子で優しく語りかけてくれた。


「ああ、賊に襲われたんだね。怖かっただろう。仲間やご家族は?」


 ふるふると首を振る。


「そうか……取り敢えず中に入るといい」目の前の兵士は少し離れた場所で審査をしている、もう一人の兵士の方を向く「ハロルド! 後で人を寄越すから暫く頼むぞ!」


「はいよ」軽く答えて並んでいる人達の方へ向き「すみませーん! 皆さん一時的に一列にお願いしまーす! 譲り合って喧嘩はしないでくださーい」


 非常に連携が取れている。門から見える中の建造物の様子から、ルネサンス期のイタリアを連想したが、門の外見や列に並んでいる時に見えた防具に身を包んだ人物の防具のつくり、さらに身分証や看板には文字が使われており、この世界では一般的に文字が使われていることが見て取れ、教育がしっかりしており、文明の水準が決して低くないことが分かる。そして、その文字が何故か自分が読めることに気づき頭がクラクラしてくる。一体自分に何が起きたのか。そんなことを考えながら先程の兵士についていく。


「座りな」どこかの一室に入った後に椅子を薦めてくれる。「辛いだろうが何が起こったのか教えてくれないか?」


 少し真剣な表情で語りかけてくる。


「歩いていると急に背後から鈍い衝撃がして気づいたらここに……」


 自分でもありのまま話したら、何一つ嘘をつかずに説明できたことに驚く。


「お前さんはどこの出身なんだ?」


 その発言に少し戸惑う、何と答えればいいのか。どうやら自分は日本とは違う世界へ来たようだということが分かったが説明ができない。


「日本です」


「二ホン? 初めて聞くな……どこかの村か?」


 言いながら首をかしげる。


「そんな感じです」


 実際は違うが相手に合わせる。兵士は暫く髭の伸びた顎をさすった後に再び話しかけてきた。


「あれだな、理由は分からないがお前は襲われて攫われた後に魔物か何かの囮にでもされて放置されてたんだろうな。ん? そうすると縛られるだろうしここまで来れねぇか。あ、縛ってなかったのかもしれん……それか人を気絶させた後に攫う魔物だったのかもな」


 兵士は一人で勝手に話を進めるが、怪しく思わないのだろうか。気になり、つい尋ねてしまう。


「あの、僕って怪しくないんですか?」


 尋ねた内容に驚いたのか、オドオドしている様子が面白かったのか。いや、両方だろう驚いた表情を見せ豪快に笑いながら


「ガッハッハッハ、そりゃあ怪しいがお前みたいなやつが何かするとは思えねぇからな。泣き腫らした後の顔、荷物が一つもねぇところ、それに貧相な体。そのなりで何するってんだよ。しかも案外そういうのは多いしな」


 そう言われて顔から火が出る程に恥ずかしかったが納得する。


「まあ、盗みとか働く可能性があるからすんなりと入れることはできない。おまけに村の名前が分からないってのは変だしな」


 急に兵士との距離が遠くなったように感じる。自分は本来ここにいてはいけない存在だと暗に言われている気がする。太一は俯き沈黙する。目に涙が浮かんでくる。どうしたらいいか分からない、真っ暗な自分の未来が怖くて胸が詰まる。


「ははは、そう心配するな。この国は優秀な国王様と警備隊がいてな、そのお陰でお前も国に入れる」


 ばっと顔を上げる。その顔には驚きの表情が見て取れる。


「お前も分かっているだろうが、この辺りには、魔物やモンスターが数多く存在する。ここまで言えば分かるだろう。ハンターになって依頼をこなすという契約の下、この国に入れるぜ。まあ、これはどの国でもやってるか。条件はハンターズギルドに登録して三か月以内に依頼を五つこなすこと。そうすれば、国民の証としてギルドカードにヤララカン王国の判子を押してもらえるぜ」


「ありがとう……ございます……」


「ガッハッハッハ、俺に言われても困るぜ。ただ本当に感謝しているなら、この国の為に精一杯頑張ってくれよな」


「はい」


 涙が溢れて止まらない。昼間ずっと泣いてもう出ないと思っていたが、――なんとかなる―― そう思うと安堵して涙が次から次へと零れていく。兵士の人が隣で優しく肩に手を置く。ゴツゴツした手から伝わるぬくもりがとても暖かった。



「うーーーん、ああっ」


 昨日のあれは夢ではなかった。兵士とともに部屋から出た後、ギルドまで行き事情を説明し、仮ギルドカード(この世界では身分証明書のような物で名前や住所等が書かれている。ギルドカードの場合は、ランクなど今までゲームでしか見たことが無い欄がある。)を発行してもらい、雑魚寝(どころ)というギルドが事情を認めた人だけに、無料で宿泊できる場所まで案内されて寝たのであった。名前通り雑魚寝で気持ち程度の毛布しか無いため、肌寒く体が痛い。服はこの世界に来た時からこの世界の一般的な服装をしていたが、着ている分しか無いので早急に服を買わなければならない。

 ふと、涙が頬を伝うが、すぐに手で拭い、何事も無かったように本日の予定に頭を巡らせる。


「おはようございます」


 昨日お世話になったギルドの職員さんの所まで行き挨拶をする。彼女はサナという名前で、淡い水色の髪にショートボブの髪型をしている。しかし、彼女は普通の人では有り得ない容姿をしていた。猫耳と尻尾が()()()()()そう生えているのだ。断じてコスプレではない。この大陸――アスニア――では獣人、エルフ、鬼人など様々な種族が存在しており、さらに共存しているのだ。その事実を昨日、目の当たりにした時は心が躍った。夜のハンターズギルド街を歩けば、様々な種族が笑いながらお酒を飲み、肉に食らいつきながら談笑している様子は、見ているだけで気持ちがいいものだった。ギルドカードを発行した後ダラムさん(お世話になった兵士)に御馳走になったギルド飯の味はきっと忘れない。


「はい! おはようございます太一さん。今日は初めての冒険ですね。依頼書の確認をしますね」


 そう言われ、太一は受付に来る前に取った薬草採取の依頼書と、草食動物の生肉採取の依頼書を提出する。


「ちゃんとランクに見合った依頼書ですね」そう言い、判子をポンポンと押す。「では、あちらの貸し出し所で装備を借りていってらっしゃいませ。仲介料と貸し出し料金は五回までは無料ですので」


 軽快な口調で説明を終えると、笑顔で手を振ってくれる。


「はい、ありがとうございます」


 太一はダラムさんに挨拶した後に、ヤララカン王国の森林――ヤララカン森林――へと向かう。


 この度は私の小説をお読みいただき誠にありがとうございます。本当は引き込めるように最初に強烈な出会いを演出しようかとも思ったのですが、世界観や雰囲気をある程度分かってもらってからでも遅くないなと思いプロローグとしてしたためました。処女作でびびったのかもしれません。 

 本当はもう少し小説を書く研究が必要だとは思うのですが書かずに成長するのは難しいと思うので拙著ではありますが投稿する運びとなりました。

 更新期間やTwitterについては考えがまとまってないので、時間と宜しければ意見をいただきたいと思います。

 文字の読み書きなどができることについては、できないことで皆さんに伝えたいことが無かったので光の集合体君に頼みました。

転生者達は赤子から始まるときもありますし、全盛期の状態から始まることもあります。基本的に少年や青年の多感な時期になります。今回は「もしもある日本の若者がとある異世界に行ったら」という物語です。

 何故転生させたか、それは書きやすいという理由もありますが、一番は上述の通り「もしも日本の若者が」という物語を書きたかったからです。次回作は多分転生前の記憶は無いタイプになると思うのでお手柔らかにお願いします。

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