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風の神殿、二人きりで

朝早くに宿を出て、森を抜けた先にある風の神殿へとやってきた。

しかし問題は、一つ目の部屋から続く回廊が二つあることだ。


「どうする?多分両方進んでやっと試練が受けられるって感じだと思うけど」

「神子さ…マナが戦えない分、そのルートの人員は多い方がいいんじゃないか?」

「それにサポートの必要な僕は人数が多い方がいいな」


「となると…神子と別なルートを進む側は、二人になるが…」


「それなら、俺とサツキで間に合うだろ」

「え?!」

「あんたは強いし、魔法も使える。俺は魔法が苦手ではあるが、剣の腕はある…だから、大丈夫だ。万が一の時は護衛の任くらいは果たしてみせる」

「とりあえず、万が一に陥らないように気をつけるけど…でも、本当にバランスはいいのかも」


「でも、二人だけなんて…」

「どうせ地の神殿でも二人行動だったんだ。あまり変わらない」

「あー、分かった分かった。そしたら、お前ら二人にあっちのルートは任せたからな」

「ああ」


皐とヒロトが二人で片方の入口をくぐる。


「…風の神殿、ってどういう仕掛けがあるんだろ…」

「進まないと分からないな」

「うん。気をつけて進もう」

「ああ」


神殿の中を進んでいくと、光った順番を覚えて次の部屋にあるスイッチを同じ順番で風の魔法を使って動かす仕掛けや、突風が吹く中をくぐり抜ける部屋などがあった。


「なんとか抜け切ったか…」

「きっつ~…」

「大丈夫か?」

「…ゲームの主人公のタフさを垣間見た」

「?…疲れたなら、少し休むか?」

「や、大丈夫…」

「…なら、進むが…」

「うん、向こうが進めなくなってたら大変だしね」

「本当に無理なら言え。向こうだって、全員が兄貴のように体力が有り余ってるわけじゃない」

「あー、愛はこんなトラップばかりならキツいかも…」

「ランスさんも結構…ひょっとしたらあんたの方が体力あるくらいだ」

「そうなの?」

「ああ。あの人、普段本の虫なせいか体力ないからな」

「あー…」


本で想像力を養っているから、その軽めなノリの他は普通なのに国内最高峰の魔術師とか言われているのか、と思ったことは伏せておく。


「元々兄貴とランスさんは子供の頃から仲が良かったんだが…その頃は本に夢中なランスさんを家から連れ出しては振り回してたからな」

「な、何か、イメージはできるかも…」

「だろ?兄貴より上の兄さんたちは普通なんだが…兄貴だけちょっと、いや、だいぶヤンチャだった。だからなのか、両親は俺に厳しかったな」

「でも…だからなんだね、ヒロトがこんなしっかりしてるの」

「騎士団の同期からは、融通が利かないとか、クソ真面目と言われてる。もう少し、兄貴のようになれたらと、俺も思うしな」

「ハルトさんみたいにフランクなヒロトって想像つかないよ。今のままでいいんじゃないかな?」

「…そうか」


皐は後ろを歩いていたため分からなかったが、ヒロトの表情は少し嬉しそうなものだった。


「次は…うげぇ、前のトラップの進化版じゃん…」

部屋中強風が吹き荒れていて、吹き抜けになった床にある、一本だけの細い通路。

幅は、皐の両足を並べたサイズよりは大きいが、ヒロトが両足を揃えると少しはみ出るくらいだ。

そして高さも、普通に考えて、ここから落ちればやり直しどころか、落下速度を緩めたりする魔法が使えなければ潰れたトマトだ。


「…とりあえず、進むぞ」

「…うん」


慎重に進み、半ばに差し掛かった、その時。


「わ…っ!」

「っサツキ!」


風でバランスを取りきれずに、皐が足を踏み外す。

ヒロトがすぐに気づいて手を掴んで引き寄せていなければ、落下していた。


「…た、助かった…ありがと…」

「ああ…」

「あの、もういいよ?」


抱きしめるようにしてヒロトが自分を支えていることに恥ずかしくなった皐が声をかける。


「いや…このまま掴まってろ。次落ちかけても助けられるか分からない」

「…いや、けど…」

「お互い落下死したくないだろ。いいから我慢してくれ」

「分かった…」


手を繋いだままで残りの道を歩く。

そのおかげなのか、今度は無事に渡りきれた。


「…鬼畜ダンジョンとはこのことか…」

「さっきからあんたは変なことばっかり言ってるな」


ヒロトが分からないのは当たり前なのだが、ゲーム好きな皐としては、そう思わずにはいられなかった。


「お。二人共早いな…って、何で手繋いでんだ?」

「さっき通ってきた道があまりにも酷い道だったんだ」

「そ、そうなのか?」

「ああ。それはそうと、この奥が祈りの間、か?」

「そうなるっぽいな。マナ、最後の解放を」

「…はい」


愛が祈りの間へと入っていく。


そして、最後の精霊は、解放された。


俺たちの戦いはこれからだ!

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