卯月さん(仮名・男性作家さん)
なんかあるかなー。なんかあんまりないかも?
強いて言えば、今の嫁との馴れ初めですかね。
八年ぐらい前かな。当時編集の仕事をしていた自分は若い才能の絵をお金にするプロジェクトをやってたんですよ。そりゃ世界中の若い才能を集めて、指導したり。
で、二、三回電話でビジネス的なやり取りをしたある日、携帯の電話越しでソイツはいきなり告白してきましてね。顔もオレの性格も全く知らないのに向こう見ずで面白かったのと、丁度その前の彼女と二日ぐらい前に別れてたので、こっちも即OK! こっちも仕事あるし、いろんな打算でオレと特別な関係でいたいだけだろう。と、オレはソイツのことを適当に扱ってたんですよね。
実際、多かったですから。今みたいに成り上がるためのコミュニティーもなかった時代ですからね。具体的な話は伏せますが、そういうギラギラした女嫌いなんです。
だからソイツもどうせすぐ飽きるだろうとタカ括っていたら、なんと遠距離恋愛は二年続きましたね。ちゃんと顔を合わせたのは交際開始から一年後。三年後には上京して、最近ではゲーム業界でバチバチやってるクリエイターの一人であり一児の母親ですね。
これ話しても誰も信じてくれないんですよね。
でもま、お互いすげぇなとケタケタ笑える夫婦ですね。
当人しか笑えないので、なんとも。爆笑と言うには遠いですね。
補足するならば、実はあのとき彼女には婚約者がいたんですよね。一回り年上の。
えーっと、確か中学から付き合ってるって言ってたから……約五年ぐらいですかね?
家族公認の付き合いだったみたいですが、それを投げてこっちに来たみたいです。
なにが彼女をそこまで駆り立てたのか。つくづく謎なわけですが、五年後嫁はこんなことを言ってました。
「運命って言ったらかっこよくない?」だって。
それが何だか面白くて、「じゃ、それでいいや」と特に追及することなく今日に至ります。
ちょっとした裏エピソードでした。