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Once again…  作者: 折原奈津子
最終章
47/48

帰ってくる人

久々&若干短め。


「今、ちょっとだけいいかな」

 元夫の藤森が、たまたますれ違った社内の廊下で声を掛けてきた。

「ええ、どうしたの? 和花ちゃんに何かあった?」

「いや、そうじゃない」

 離婚して2年経ち、和花ちゃんも2歳になろうとしている。

働きながら、娘を1人で世話をしている藤森は、以前よりも柔らかい印象の人になった。

よく笑う1人娘のおかげでもあるだろう。

「里美が…戻ってくることになった」

「え?」

「仮釈放が決まったんだ…」

「そう…そうなの。やっと…」

「戻ってきたら…君に会いたいと言ってきた…」

「私に?」

「ああ。…会ってやってくれないか? きっと、君に詫びたいんだろう…」

「もういいのに…」

「それでも、里美なりのけじめをつけたいんだと思う」

「…そう。わかった。帰ってきたら…会う時間を作るわね」

「すまない。小栗君にも…」

「ええ、伝えるわ」

 里美さんが戻ってくる。

離婚から2年経って、今はもう複雑な思いは残っていない。

母親を知らずに2年を過ごした和花ちゃんを、私なりに見てきたからかもしれない。

これから母親として係わるのは、大変なことも多いだろう。

それでも、あのかわいらしい笑顔を糧に、頑張ってほしいという気持ちの方が大きい。

いい人ぶっていると思われる事もあるけれど、本音でそう思っているんだから仕方がない。

自分の部署に戻りながら、そう考える。


 本来、小栗修平との再婚後、私は寿退社をするはずだった。

けれど、補佐の人員が足りなかった事や、諸々の事情が重なって退職が出来ずにいた。

その代わり、社員ではなく、パートでの勤務に変えてもらったけれど。

部署も営業からは出ずに、小栗専属ではなく広範囲で後方支援を担当していた。

普通なら、夫婦で同じ部署…なんてありえない。

そこは、またしても大木部長…改め次長が暗躍…という事らしい。

大木部長は前回の大騒ぎの責任を取って、降格となってしまった。

大木部長が悪いんじゃないのに、結果として損害も出てしまっている以上仕方のない処置だと言う。

みんな納得がいく話ではなかったが、部長本人はけろっとしていた。

私も辞めるつもりだったところを、残るはめになったのも、彼が原因とも言えるだろう。

大木部長…じゃなかった次長、恐るべし。

 それでも…やっかみとか、陰で色々言われているのは知っている。

やっぱり、他部署に異動になるのが普通で、担当を外れただけで同じ部署っていうのは通常ならあり得ない事。

大木次長、恐るべし…とか言ってる場合じゃなく、なんで? どうして? が普通。

うん、私もそう思っている。

なんで?

なんで、私はTAJIMAに残っているんだろう。

何か、物凄く貢献したとか、そんなことは一切なくて。

普通の、ごく普通の営業補佐でしかない。

「ねえ…私、なんでTAJIMAにまだ残ってるのかしら…」

「…さあ」

「なんで、私の退職届、受理してもらえないんだろう…」

「オレニハ ワカリマセン…」

「片言になってる…何か知ってるのね?」

「…まだ知らせるなって言われてるんだよ」

「誰に」

「大木次長と…社長…?」

「……なんで疑問形になるの?」

「ごめん、もうちょっと待ってて…そう遠くない時期に発表になるから」

「……」


 里美さんが戻ってきたのは、その翌週の事。

和花ちゃんともすぐに打ち解け、うまくやっていると聞いた。

それだけが、ここ最近で唯一ほっとした話だった。







8/19 役職についてご意見をいただいたので、大木次長誕生エピソードを若干変更しました。

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