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Once again…  作者: 折原奈津子
最終章
44/48

Wedding dress


入籍後、まずは式場を選びを始め、半月ほどかけて…4軒のうち3軒目に話を聞いた式場に決定した。

決定打は…かわいらしいこじんまりとしたチャペルが併設されていた事と、翔太が言う『修平おとさんに、べたべたするお店の人がいない』事だった。

他の式場は、翔太にとって面白くなかったらしい。

「そっか、そうだな。俺もいやだな。よし、3軒目の式場に決定! それでいいよな?」

 男の子が嫉妬するってどうなのかとも思うけれど、それだけ修平に懐いているんだろう。

休みの日は一緒にサッカーの練習をしたり、公園に出掛けたりもする。

早く帰れた日は、宿題を見てもらったりしている。

今までは私一人で見てきていたものを、血の繋がりはないものの男親に頼れるようになり、翔太も一段と成長したように思う.

今日も一緒に算数の宿題をしながら、まわった式場の善し悪しを…二人で討論している。

「宿題、進んでるの? 集中しないと、終わらないわよ?」

 そう口を挟んでみる。

「大丈夫。もう終わるから」

 あっさりと翔太に切り返される。

味方を得て、以前よりも口達者になってきたように感じる。

藤森と今も一緒に暮らしていたら…こうはならなかったろう。

翔太の成長をこうして見られただけでも、修平ともう一度やり直す事にしたのは間違いではなかった。

「修平…」

「うん?」

「…ありがとう…」

「あ? ん…まあ…いいよ、そんなの言わなくても」

 なんとなくお礼が言いたかった。

でも、一瞬何事かという顔をしたけれど、すぐに照れくさそうに切り返す修平。

「それでもね…なんとなく…言いたかったの」

「…ん。まあ…これからだ…」

「そうね…」



 結婚式当日。

天気に恵まれた暖かなその日、ささやかなチャペルでの式と、ガーデンパーティーを執り行った。

ウエディングドレスは、スレンダーなAラインのシンプルなドレス。

それでも、腰の辺りまで背中がぐっと開いていて、少し恥ずかしかった。

ガーデンパーティーは、淡いラベンダーカラーのドレス。

こちらは、ビスチェタイプのドレスにしたので、肩が丸見えなのが気になる。

…両方、修平と翔太が選んだもので、却下がしにくかった。


「おかさんには、絶対これだよ!!」

「紫かよ!」

「ラベンダーって言うんだよ! 知らないの?」

「悪かったな! 知らなくて!」

「…煩いし…」

「じゃあ、翔太がそっちのパーティードレスなら、ウエディングドレスはこっちな?」

「…背中開きすぎ…」

「おとさん、エロい!!」

「うっせー!」

「いや、修平が煩い…」

 そんなこんなで、ドレス選びは煩さと恥ずかしさの中で行われたのだった。


 今日はそんな二人が選んだドレスで、参列してくれた両親や友人、同僚達の前に立つ。

修平はシルバーグレー系のタキシードだ。

和やかに、にぎやかに…時間は過ぎていく。

「ここで、祝辞を読ませていただきます」

 たくさんの花と一緒に、取引先や、遠方にいる友人達からの祝辞が読み上げられる。

「最後に…ご結婚おめでとうございます。心から君達家族の幸せをお祈りいたします。

藤森 隆弘、里美、和花」

「…藤森? あの人が…?」

「うん。式にも来てくれって言ったんだけど、自分達が行くと縁起が悪いからって断られた。だからせめてって事で、祝辞をくれたんだと思う」

「そう…」

「里美さんももうすぐ出所してくるみたいだし、今度は幸せになって欲しいな」

「そうね。そうなって欲しいわ」

 もし彼らが、こんな風に結婚式をあげる事があるのなら。

その時は、私達もお祝いの言葉を伝えてあげたい。

私と藤森は別の道を選んだけれど、翔太と和花は兄妹としての絆があるのだから。

でもまずは、彼らが3人揃う日が一日も早く来るように…それを祈るだけ。

「お礼、しなくちゃね…」

「ああ、そうだな」

 彼らにも届くように…その後のブーケトスは、大空に向けて思いっきり投げ上げる。

風に乗って彼らにも…受け取った人にも、私がもらった幸せのおすそ分けが届くように…。






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