やっと6ヶ月…
やっと…本当にやっとの事で半年が過ぎた。
お互いの身内への挨拶は済ませ、あとは入籍だけって考えていた時。
思いもよらなかった事を修平が言い出した。
「え? 今、なんて言ったの?」
「だから、やるぞ。結婚式」
「なんで?」
「俺が綾子のドレス姿を見たいから」
「ドレス姿なら…写真でもいいじゃない」
「だめ。絶対、やるから」
「いやよ」
「なんで?」
「この年になって…私は再婚だし…」
「じゃあ、尚更やるぞ。俺、初婚だから」
「…やだって言ってるのに…」
散々渋って見せても、修平は頑として譲らない。
「そんなに…頑なにならなくてもいいんじゃない?」
「…綾子、前は式をしたんだろ?」
「え? ええ、まあ…神前式だったけど」
「ドレス、着たくなかった?」
「え?」
実は…藤森の実家の意向で、前回は神前式にしていた。
正直、着物なんて苦手で、それなのに内掛けなんて気が重かったのは事実だ。
それは…隆弘も気が付いていたけれど、どうにも出来ずに和装で式を行ったんだ…。
「…彼に…藤森に…何か聞いたのね?」
「ああ、まあ…ちょっとだけ。出来ればドレスを着せてやってくれって」
「余計な事を…」
「でもな。前の式に来た人とかは別としてさ、両親とTAJIMAの仲間にだけは披露した方がいいぞ?」
「……」
結局、押し切られる形で、式をする事を了承する事になった。
でも、絶対に、大掛かりなものはやめて欲しいと頼み込んだ。
「なんでそんなに嫌がるんだよ」
「修平…」
「俺との結婚がいやみたいに聞こえるぞ?」
「そうじゃないのよ…ただ…」
「ただ?」
「…大掛かりなものだと…疲れるのよ!!」
「…は?」
「前は神前式だったわ。でも披露宴の間も、ずっと和装だった。結構な人数が来たし、藤森の実家の意向で、大きな式だった。気疲れも凄かったし…重いし…散々な思いをしたのよ!!」
「…大掛かりなものじゃなきゃ…いいか?」
「ええ…修平もご両親には見せたいでしょうし…自分の晴れ姿くらいは…」
「いや、俺が見せびらかしたいのはお前だけど」
「……」
そう言うと、普通だったら女性が嬉々として購入するだろう結婚情報誌を、私の目の前に取り出した。
「旅行は、翔太も連れてくからな? 翔太、どこがいいか考えておけよ?」
黙って話を聞いていた翔太にも話を振っている。
「え? 僕も行っていいの?」
「当たり前だ。お前がいなきゃ、綾子だって楽しくないぞ?」
「や…ったーーーーー!! 僕ね、グアムか台湾がいい!!」
「グアムか台湾? 翔太、ずいぶんリアルな意見ね…」
「僕のクラスの子がね行った事があって、また行きたいって言ってたんだー」
「ふーん…そうなの」
「そうか、じゃあどっちかにしようか」
「やったー!!」
式はこじんまりとする事にして、いくつか式場も候補を立てた。
問い合わせをして、割と早めに式を挙げられるホテルや式場を更にピックアップし、説明を受ける事にする。
よく見ると、情報誌にはいくつも付箋が貼られている。
しばらく前から色々陰で暗躍していた気配がする。
何しろ聞いていたのが、3ヶ月前後で式を挙げられる場所だったから。
そんなにも…そう思ったら、もう反対する気なんて起こらなかった。
「式が決定したら旅行も申し込むから、早めにパスポートを作りたい」
「パスポート?」
「ああ。綾子にも翔太にも、小栗の名前で一緒に行きたいと思ってるんだ」
…そう言って修平が取り出したのは婚姻届だった。
既に修平の書き込むべき半分と、私の署名以外の箇所はすべて埋められている。
保証人欄にも、大木部長と…藤森の名前。
「部長はともかく…藤森がなんで?」
「そうしたいって言ってくれたんだ…。それと、仲人も大木部長に頼んだから」
「何で? 部署も今は違うのに…」
「色々助けてくれたのは、あの人だろう? だからだよ」
「…うん…そうね…」
そばに置いてあったバッグから筆記具と印鑑を取り出すと、私は小栗の名前を背負う為の署名をした。




