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Once again…  作者: 折原奈津子
第3章
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揺れる思い

本年中は、たくさんの方々にご愛顧いただき、心より御礼申し上げます。


また来年も、ご指導いただけますようお願い申し上げます。


折原奈津子 拝




日々の仕事の忙しさの中、ちょうどやってきた年末に向けて、少しずつ大掃除をしたりと公私共に充実していた。

3人から2人、そしてまた3人になって…荷物の量も変わった。

引越しをして、また引越し…だからまだそんなに荒れていたわけではないけれど、やはりそれなりに家具の裏には埃がたまっていたりする。

短期間とはいえ、妹の存在で一段と成長した翔太も、自ら手伝ってくれていた。

「翔太、ありがとうね。おかさん、めっちゃ助かった!」

「うん、でもこれ位僕にも出来るからさ、いつでも言っていいよ?」

「ほんとー? 嬉しいなぁ。ありがとう、翔太」

「おとさんと約束してるんだ。おとさんのいない時は、僕がおかさんを守るんだぞって」

「えー? そんな約束してたの?」

「そうだよ?」

「…」

 修平は今、仙台の取引先へ出張中。

震災後、やっと通常の生産ラインに戻ってきたという事で、早速出向くことになったらしい。

そこには、入社以来お世話になっている斎須さんの、お付き合いしているという営業さんもいる。

震災後の復興期間、朝も夜もなく働き続ける人を、遠距離であっても必死に支えてきた斎須さん。

通常の生産ラインに戻ったことで、斎須さんの表情にも安心した表情が伺える。

もう少し安定して業務が出来るようになったら、仙台の彼の元へ行く予定だと笑って言っていた。

「小栗と、今度は幸せになれ…」

 そんな言葉を残して、書類を扇代わりに扇ぎながら、悠然と自分の席に戻っていく。

「受け入れる決心はついたはついたんだけど…」

 そう、まだ実は迷っている。

年上で、バツイチで、息子もいる。

大木部長の声がかりとはいえ、元夫も今では同じTAJIMAにいる。

複雑な思いを抱えていると言ってもいい。

それでも、元夫は新たな道を見出し、進み始めた。

私も立ち止まっている訳にはいかないのだけれど、ついていけていない感情が残っている。

それは、修平と離れていた10年間のことだ。

会えなくなった頃からの10年。

その間の修平の気持ちが、彼の中で続いていたと言うのが良く分からないからかもしれない。

「今の私の気持ちは…?」

 心の中で繰り返す問いかけ。

TAJIMAで再会してから、彼と係わるうちに、支えられている事を感じる度に、また彼に傾いていったのは事実だ。

一緒に暮らし始めてそれは、穏やかにではあるけれど感じている。

「だったら信じればいいのに…」

 そう思いながらも、自らの自信のなさに揺れてしまう。

もうすぐ正式に離婚が成立してから半年。

男はすぐに結婚が出来ても、女はそうはいかない。

それが出来れば、こんなに揺れなくて済んだかもしれない。

ちょっぴり不条理に思ったのは秘密だ。


「お前さ、なんか面白くない事、考えてるんじゃないか?」

 週末に出張から戻った修平が、私の顔を見るとそんな事を言い出した。

「…昔からそうゆうとこだけは鋭いのよね…」

「ああん? 何か言ったか?」

 小さな声で言ったはずなのに、聞こえたようだ。

「…地獄耳…」

「なんだと?」

「いいえ、何でも…」

「籍を入れるまでに時間掛かるからな、迷うのは分かる。でも俺の気持ちまで、疑うのはやめてくれよ?」

「…うん…」

 きっと修平は、私がこうして迷ったとしても、一緒に道を探してくれることだろう。

それなら私は、そんな彼に応えていきたい。

3人で幸せになる事…それは道を違えてしまった許しあえた人達への思いとなってくれるに違いない。






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