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Once again…  作者: 折原奈津子
第3章
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やる気に溢れて



ここ最近は、早退をさせてもらったりしていたせいで、やや業務が滞っていた。

昼食は、片手でも食べられるような、サンドイッチやおにぎりを持参し、おかずもフォークやピックなどで刺して食べられるもの。

それでやっと、残業をせずに日々まわしていけるようになっていた。

残業になるとしたら、せいぜい1時間程度。

そんな時は、翔太も学童を延ばしてもらって、預けている。

暫くは和花がいなくなったことで落ち込んではいたけれど、段々と落ち着きを取り戻してきている。

最近の口癖は【妹は和花がいるから、弟が欲しい…】だ。


「今日もまた、弟はいつ来るんだって言ってたぞ?」

「また? 気が早いったらないわね」

「やっぱり寂しいんだろうな」

「それは分かってるけど…今はまだ無理よ」

「うん、あと1ヶ月は我慢だな」

「そうね、あと1ヶ月…」


 離婚から、やっと5ヶ月が経とうとしている。

やっと、私達も新たな一歩を踏み出せる。

昨日、出勤した時に社内で遭遇した隆弘が、まだ収監されている里美さんと、所謂【獄中結婚】をしたと告げてきた。

和花も認知して、実子として入籍したと言う。

慣れない男手での子育てと勤務で、若干やつれてはいるが、憑物が落ちたかのような表情をしていた。

「初めて自分一人で子育てするんですもの、大変でしょう? しかも働きながらだものね」

「そうだな。翔太は君に任せたきりだったから、今度は頑張らないと。あと何ヶ月かしたら、離乳食もなんだよな…。予防接種も何度もあるし…こんなに大変だとは思わなかった」

「でも…かわいいでしょう?」

「ああ…。翔太がかわいくないわけじゃない。でも、やっぱりな…女の子だし」

「頑張って、新米パパ!」

「ああ…ありがとう…」

 そう言うと手を上げて、歩き出し…振り返らずに資材課の方へ歩いていく。

これからも折を見て、色々話すこともあるだろう。

それでも、道が分かれてしまった、一度は愛した人の背を見送った。


「これ、大至急、見積もり出してくれるか?」

 今日の午後は、なんだか慌しくなっていた。

「今日はどうしたのかしらね…急にこんなに…」

「耐震化の工事を請け負ったらしいぞ、安井さんのとこが」

「ええ!! そうなの?」

「ああ、結構でかい仕事らしい」

「それでうちにも?」

「そういう事。ただうちも、しっかりとした製品を提案しなくちゃいけないからな。ここが正念場だな」

「そうね、頑張りましょう…みんなで。私も出来る限りのサポートをするわ」

「ああ、頼むよ」

 

お互いに笑顔で、周りの仲間を見渡す。

みんな自信の溢れる、やる気に満ちた表情で私達を見返していた。

繰り返しなり続ける電話に応対しつつ、PCを操作する。

そんな単調な作業でも、一丸となって立ち向かえる。

そんな仲間がいる事が、やけに嬉しく感じていた。

それは専業主婦だった時には感じる事のなかった、そんな感覚で。

まだ1年に満たない勤務期間…。

それでも、ここで、支えになれる事が嬉しくてならなかった。






今夜はちょっぴり短め…。

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