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Once again…  作者: 折原奈津子
第3章
37/48

ばいばい、和花

お待たせしました



 里美さんが収監されてから2ヶ月。

隆弘はなんとか意識を取り戻し、リハビリに励んでいる。

翔太のことがあるから、今回は実刑になる可能性が捨てきれない事も正直に話した。

「藤森さん、あなたは翔太を本当に愛せなかったんですか? もしそうなら、里美さんが戻るまでとはいえ、あなたに和花を渡すのは忍びない…」

「…あんな風に綾子と翔太を捨てた俺には、反論する資格なんてありません。それでも、綾子を愛していたから結婚した…。翔太が産まれた時も、嬉しかったのは嘘じゃない。でもいつからか気持ちがすれ違っていったように…思います…。」

「…綾子の気持ちが、俺には向いていない…そう感じることが増えてきたんですよ。それに耐えられなかった…」

「…誤解よ…。誰にも頼れないまま、慣れない育児をしていたんだもの…」

「……すまない…」

「綾子と翔太に申し訳ないと思うなら、里美さんを待って、和花をちゃんと見てやって欲しい…」

「そうね、和花ちゃんは、あなたの子だし…翔太の妹なんだから…」

「翔太の…妹…?」

「そりゃそうじゃない? 母親は違うけど、父親は同じだもの」


翔太の妹…そう呟くと隆弘は黙り込んでしまった。

二人とも自分の血を分けた子供だと言うのに、そんな感覚がなかったように見受けられた。

暫く黙ったまま考え込んでいたため、私達は次の言葉を待つことにした。

どの位待ったのだろうか…俯き加減だった隆弘が顔を上げた。

「里美を…待ちます…和花と…」

「…苦労するかもしれない。まして、あなたを襲った連中はまだ捕まってないからね」

「それでも、実家からも見放された里美が帰ってくるのは、俺と和花のところだけだ。綾子と翔太には悪いことをしたと思う。でも…今は君がいてやってくれる…。それなら俺は、里美を受け止めてやれるし、そうしたいと思う…」

「うん、そうね。私達には修平がいてくれる。だから…和花ちゃんと里美さんをお願い…」

「ああ…。ありがとう…それから…すまん…」

「もういいわ、お互いに歩み寄りが足りなかったのよ。だからその分、二人をちゃんと見てあげて?」

「分かった…」

「あ、それから。翔太の養育費は、要りません。その分は、和花ちゃんに使ってやってください。これからが物入りなんですから」

「いや、でも」

「いいわよ、こっちは二人で働いているんだもの。特に必要ないわ」

「……」

「まったく…ありがとう、助かるよって言えないの?」

「お前って…そんなタイプの女だったのか? 俺と一緒にいた時は…そうじゃなかった」

「綾子は昔から、こうでしたよ。お互いに顔色うかがってたんじゃないですか?」

「…そうか…そうかもしれないな…」




 暫くして、和花を引き取りにやってきた隆弘の顔は、今までよりもすっきりとして見えた。

なんとか認証保育園ではあるが、預けることが出来ることになったらしかった。

ただし勤務先はこの一件のせいで、勤務し続けられなかったようで。

それでも退院後直ぐに就活したらしく、なんとか就職にこぎつけたという。

「それがな…綾子の上司の大木さんっているだろう? 彼が口利きをしてくれたんだ…」

「え? 大木部長が?」

「ああ、それは俺も聞いてた。退院直前に病院を訪ねて、直にオファーしたらしい」

「そう…それで? どこに決まったの?」

「…TAJIMAの資材部だ…」

「…は?」


 部長…暗躍しすぎではないですか?

隆弘は前職で、そこそこ使えると言われており、データ処理能力がかなり高かった。

そこを人員補充を含めて、大木部長が動いていたのだと思われる。

「同じ会社で、やりにくい部分はあるかもしれないけれど、よろしく頼みます…」

 そう言うと、片手で和花を抱き上げ、もう片方の手で荷物を持った。

そして、ふと黙ったまま立ち尽くしていた翔太に目を向けた。

「翔太…」

「何?」

「ごめんな…」

「うん…」

「また和花と…遊んでやってくれるか?」

「当たり前だよ…僕の妹なんだから…」

「…ありがとう…」

 荷物を車の助手席に入れ、後部座席のチャイルドシートに和花を乗せると、自身も乗り込んだ。

そして頭を下げ、ゆっくりと車を発進させた。




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― 新着の感想 ―
[一言] 子供には罪がないとは言え、隆弘と里美に都合よすぎる展開。綾子と修平がお人好しすぎてイライラ。ラストまで耐えられず途中降板。
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