和久弁護士の来訪
今回は、会話がメインになります。
隆弘と里美の近況が判明するのですw
その日、報告書を携えて和久弁護士がやってきたのは、19時を過ぎた頃だった。
夕飯の準備をしながら、電話を受けた。
『誉田里美さんと、藤森隆弘さんの状況が分かりましたので、これから報告に伺いたいのですが』
そう言って、19時過ぎにやってくることになったのだけれど。
話を聞いて、置き去りにされた子供が、可哀想で仕方なかった。
「お二人とも生きてはおいででした。しかし…」
「しかし…なんでしょうか…」
「藤森さんが事故にあったようで、現在意識不明のままだそうです…」
「…意識不明? どういう事なんですか?」
「出産直前に事故にあわれたそうです。事故は藤森さんを狙った可能性が高いらしいので、警察も捜査をしているようですが…まだ…」
「そうですか…彼を狙うのであれば、怨恨と言うことでしょう? じゃあ、私のところにもそのうちいらっしゃるんでしょうね、警察が」
「そうなるかもしれません。彼の事を分かっているのは、蓮見さんと…誉田里美さんの二人しかいらっしゃらない」
「修平…」
「ん…」
「巻き込んで…ごめん…。こんな面倒なことに」
「覚悟してるよ。ところで、藤森さんが意識不明なのは分かりましたが、誉田里美は…」
「藤森さんと復縁をしたことで、実家からは縁を切られたようで」
「は?」
「それもあって、藤森さんに付き添うために…お子さんをあなた方に預けようとされたようです」
「二人のいる病院は?」
「…修平?」
「藤森さんは話せる状況じゃないでしょうが、誉田里美さんには話が聞けるはずだ」
「でも…」
「子供を預かるのはいい。でも、せめて正式な名前くらいは知りたい。便宜上の名前は付けたけれど、それが違うなら…」
「そうね…このままだと、里ちゃんは本当の母親も父親も認識しなくなってしまうわね」
「ああ」
「…新宿区にあるH総合病院です」
「…H総合病院?」
「はい、なにか?」
「翔太が産まれた病院です…」
「え? そうなのか?」
「そうよ、間違いないわ」
その頃暮らしていたのが新宿区内で、自宅からも通院がしやすかった。
何かあっても、別の科が連携して診てくれる安心感もあり、そこを選んでいた。
確か今でも、その頃にお世話になった先生がいるはずだ。
私は翌日、一度出勤をし、上司の許可を得て早退をした。
その足で、H総合病院を訪ねる予定だったからだった。
電車とバスを乗り継いで、何年か振りにH総合病院の門をくぐった。
「あいかわらず、どこに何があるのかわかんない病院ね…」
広大な敷地に、巨大な病院。
しかも担当の科によって、建物が別棟になったりもする。
今回、私が向かうのは外科病棟。
だから別棟には用はないけれど。
総合カウンターで確認をし、私は外科病棟のナースステーションに立ち寄った。
そして、そこにいた見覚えのある看護士に声をかけた。
「あの、藤森隆弘の病室はどこですか?」
「お見舞いですか? 申し訳ありませんが、面会はご遠慮いただいて…あら?」
「…覚えてらっしゃいました? 藤森の元妻です」
「ええ、覚えてるわ! お久しぶりね、あの時の赤ちゃん…元気?」
「はい、もう小学生です」
「へえ、早いわね。もうそんなに大きくなったのね…」
「いつからこちらに?」
「去年からよ」
「そうでしたか…」
「ああ、藤森さんね…。今、意識がないから…面会は出来ないのよ」
「ええ、知ってます。私が用があるのは隆弘ではないんです」
「…付き添っている方ね?」
「ええ…」
「分かったわ。左に6つ目の部屋よ」
「ありがとうございます…」
教えられた部屋の前に立ち、名前を確認する。
間違いのない事を再度確認すると、ドアをノックした。
「…はい…」
聞こえた声にドアを開け、中を覗きこむ。
そこにいたのは、やつれてやせ細ってしまった誉田里美と思われる女性。
「…あなた…どうして…」
「誉田さんに聞きたいことがあって来ました…」
「…そうですか…」
「その前に、隆弘はどうしてこんなことに?」
「…襲われたんです…多分、私のところから出て行った時に一緒にいた女性の雇った人に」
「そう…」
「そう…」
「それと…ごめんなさい。他に頼れる人がいなかったんです…」
「赤ちゃんね…。やっぱりあなたの子だったのね。名前は?」
「…まだ証明書を出してなくて…名前も…」
「代理で証明書を出してあげる。名前があれば、医療補助だって受けられるのよ? それに、まだあなた達は入籍していないんでしょう? 片親申請もしておいたほうがいいわ」
「でも…」
「それとも、隆弘の意識が戻っても戻らなくても、あの子を引き取りに来る気はなかったの?」
「いいえ! 必ず迎えに行きます!」
「じゃあ、名前を決めてあげて。必要な書類は準備して手配してあげる…」
「…すみません…」
「…私達が離婚したのは、確かにあなたが原因だわ。でもね、だからって手助けしないって言うと思う?」
「…ありがとうございます…」
「それでいいのよ」
我が家で預かることになった彼らの娘はこの日、和花と名づけられた。
書いて置けばよかったですね。
今回は会話メインなので、本来なら織り込むことが必須だったであろう刑法や、産後の身体のこととか…はしょってます。
次回以降、そうした暗い内容を織り込んだ内容になるかと思います。
ただ、1回でUPしきれないので、多分数度にわけると思われます。
リアルが繁忙期で残業の毎日、労働基準法すれすれになる気配濃厚なほどに多忙な折原です。
毎日は書いていられませーん!!
すみません、ご理解ください!!




