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Once again…  作者: 折原奈津子
第3章
33/48

BABY

内容に関する苦情・批判ありましたら、必ず記名付でメッセージ、感想等でお寄せください。

ちなみに前回の『贖罪』は、変更予定ございません。

それに関しての苦情・批判は今後は受け付けません。

今後のストーリーに必要な内容ですので。



 新しい家に引越しを済ませたのは、梅雨入りする直前のことだった。

元々お互いに荷物もそんなに多くなかった事もあって、簡単に済んでしまって拍子抜けした位だ。

片付けも済んで、慣れない3人暮らしを始めて、そろそろ1ヶ月が経とうとしている。

そんな時に入った1本の電話に、戸惑いを隠せなかった。

ちょうど勤務を終え、修平と岐路に着こうとしている時だった。


『あなた達が住んでいた部屋の前にね、赤ちゃんが置き去りにされていてね…。あなたに頼むってメモがあるのよ…』


 そんな電話をくれたのは、少し前まで暮らしていた部屋の管理人さんで。

私の名前を名指しで置いていくっていうのが、どうにも解せない。

とりあえずは最寄の警察に知らせたから、連絡が行くはずだという。


「判りました。私からも連絡してみます」

 正直言って、私に頼むと置いていく神経は疑うが、心当たりは一人しかいなかった。

そろそろ産まれていてもおかしくはなかったし。

―――誉田里美。

 隆弘の元愛人で、妊娠後期に隆弘に捨てられてしまった女性だ。



離婚調停の際にお世話になった弁護士に連絡を取り、今回の置き去りの話をする。

『正直、何が起こったのかは、現段階では判りかねます。彼女のご実家に連絡を取ってみましょう。しかし…置き去りにされていたというお子さんは、流石に児童施設にお願いするしかないでしょうね…』

「いえ、警察には連絡したようですが、まだ管理人さんのお宅で保護をしているそうなんです。ですから、まずは病院で診てもらって、うちで預かります…とりあえず」

 管理人さんとの話の中で聞いていた時に、病院の事とうちで預かる事は伝えていた。

昼間は勤務している都合上、結構余裕があるからと日中は管理人さんが見てくださると申し出てくれていた。

『そうですか…ではまず私どもでは、誉田家に連絡を試みてみましょう』

「お願いします…」

 正直、彼女が何を考え、こんな事をしているのか理解出来ずにいる。

「理由がはっきりするまでなら構わない。でも、それ以降は無理だよ?」

「修平…」

「子供には罪はないけど、綾子と翔太を苦しめた二人の子供だろう? 俺には無理だよ」

「うん、そうよね…」

「何もないならいいんだけどな…」

「…ちょっと隆弘の携帯にかけてみるわ…」

「ああ、そうだな」

 一応の緊急時のために、連絡先は消去せずに残していた。

けれど、電アナ【電波の届かない…云々のアナウンス】が流れるだけで、応答はない。

「出ない…勤務先にかけても仕方ないし…」

「…彼の実家は?」

「…そうね…かけたくはないけど…」

 登録していた番号を呼び出し、通話ボタンを押した。

暫くコール音が聞こえてきて、聞き覚えのある年配の女性の声が聞こえてきた。


「綾子です…お久しぶりです」

『おや、綾子さん。今頃なんやの? あれかね、金が足らんかったって話しかね』

「そんなくだらない話はするつもりはありません。隆弘さんは今どうなっているんです?」

『そんなん今更教えてどうなるんかね』

「…隆弘さんの愛人だった、誉田里美さんをご存知ですか?」

『ああ、知っちょるよ? 隆弘とやり直すことになったいうて、今一緒におるはずじゃが? それが問題とでもいうんか?』

「一緒に本当にいるんですか?」

『そう聞いとる! さっきからなんなんじゃ? 文句があるなら、二人に言えばええっちゃ』

「…里美さんらしき女性が、先月まで私と翔太の住んでいた部屋の前に、赤ちゃんを置き去りにしたそうです…私宛に…」

『…え?』

「お義母さん、まさか私にしたように、彼女にも辛らつな表現はされてませんよね? 彼女は隆弘との事で精神を病んでいましたし、辛らつな表現には耐えられる状態ではありませんでした。なさってませんよね?」

『……』

「…してたんですね…」

『嫁に来るからには、それ位耐えて当たり前じゃろう!』

「くだらない…自分がそうだったからって、みんながみんな耐えられるわけではないんです。私のように言い返せる訳でもないんです! くだらなすぎる! もういい、私が二人に連絡を取ります。二度と掛けませんから…じゃ、さようなら」

『綾子さん! 孫は!』

「これから引き取りに行きます。でも二人に万が一のことがあっても、そちらには引き渡しません。誉田さんのお宅に任せます」

『ちょっと、綾子さ…』

 何か言いかけてはいたが、無視して通話を終了する。

「ごめん、修平。マンションに行ってくれる?」

「ああ、そうしよう」









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