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Once again…  作者: 折原奈津子
第2章
30/48

もう一度…

6/20~6/26ごろまで、WEB環境にありません。(プロバの設定工事のため)

なので、予約にてUPします。





 彼が口にした【もう諦めたほうがいいのかって悩む事もあった】という科白。

それを考えると、随分我慢させてきたんだなって思った。

バツイチだから…子持ちだから…離婚したばっかりだから…。

そうやって、彼にたくさん自分を抑えさせて、私は自分の事ばっかりだったんだって思う。

「ごめんね、修平…」

 藤森に連絡をしてから2日。

今日は…約束の日だった。


「もしもし…私です。近くまで来たので…」

「わかった。ビルの中に喫茶店があるだろう? そこにいてくれ」

 彼が勤務しているビルの中には、小さなカフェがある。

そこに入って、グレープフルーツジュースを頼んだ。

5分程で出てきたジュースには果肉が入っているのを考えると、グレープフルーツを絞って作っているんだろう。

「待たせたな」

「いえ…たいして待ってません」

「そうか…で、話って?」

「翔太の事です。今後の事を確認したいんです」

「今後の事? 養育費なら払うと言ったろう?」

「養育費は関係ないわ。あなたの事だもの、すぐに都合が悪くなって払わなくなるに決まってるわ」

「そんな事はない。大丈夫だ」

「兎に角、今日はそんな話じゃないの。あなたは今後、翔太に会おうとする気はないって本当ですか?」

「何だ? 藪から棒に…」

「あなた、私と別れる原因になった方とも別れたんですってね。お腹も大きいのに…」

「いらないと言っている子供を、あいつは産むと言って聞かなかったからな。今一緒にいるヤツは、子供が嫌いなんだとさ。だから安心して一緒にいられる」

「じゃあ、翔太にも会いに来ないでいただけますね?」

「あ? 元々そのつもりだ。安心しとけよ」

「そう、よかった…」

「新しい男でも出来たのか?」

「あなたには関係ないことです。じゃあ、私はもう用事もないですし、帰ります」

「そう、じゃあ元気でな」

 翔太には会う気はない…それが聞けただけでも良かった。

それだけ解れば、私は前を向ける。

そんな人だったんだと、きれいさっぱり忘れられるかもしれない。

だから、私も彼の事…修平との未来を考える事が出来るかもしれない…そう思った。




「ただいまー」

「おかえり、おかさん!」

 夕方藤森に会いに行ったから、もう翔太は帰宅していた。

「ただいま。ごめんね遅くなって」

「そんなに遅くないよ。でも早くしないと、もうじきおじちゃんが来ちゃうよ?」

「そうね、急いで食事作らなくちゃね」

 急いで着替えて、キッチンに立つ。

「ねえ、おかさん?」

「何?」

「…おじちゃん…おとさんになってくれる?」

「翔太?」

「僕…おじちゃんといつも一緒にいたいんだ…」

「…そっか。でもね、もう少し待ってくれる?あと何ヶ月かは、おかさん…お嫁にはいけないの」

「なんで? もうおとさん、いないんだよ?」

「うん、でもね、そうゆうお約束がね、偉い人としてあるの。だからもう少し待っててくれる? その間に、おじちゃんともよく話してみるからね」

「うん…」

「ごめんね」

 インターフォンが鳴って、翔太が飛び出していく。

「おかえり、おじちゃん!」

「ただいま、翔太。綾子は? 帰ってるのか?」

「お帰りなさい。帰ってるわ」

「ああ、ただいま」

 いつものようにジャケットとバッグを受け取り、リビングへ向かう。

「修平、車は?」

「パーキングに入れてきた」

「そう…ここにもう1台借りた方が経済的かしらね。空いてるみたいだし」

「そうなのか?」

「ええ、下に張り紙があったもの。明日にでも聞いてみるわ」

「…いいのか?」

「何が?」

「俺がいつでもここに来れるようにって…事だぞ?」

「そうね」

「…綾子?」

「翔太がね、修平におとさんになって欲しいんですって」

「うん! 僕、おじちゃんにおとさんになって欲しい!」

 照れくさそうに翔太を見て、修平がうっすらと微笑む。

そして、まっすぐ私を見て問いかけてきた。

「お前は? 俺がいても…いいのか?」

「…いいんじゃないかと思うわ」

「…綾子…」

「まだね、6ヶ月経たないから…きちんとする事は出来ないわ。というよりも、すぐに入籍するのはいかにもって感じで嫌なの。だから…暫くは…」

「…一緒に暮らすことは?」

 修平と共に、翔太が期待をこめた視線を送ってくる。

「…いいわ…」

 妙に照れくさくて、それだけ言うとキッチンに逃げ込んだ。

「やったー!!」

 リビングから叫んでいる翔太の声が聞こえる。

「綾子…!」

 キッチンに飛び込んできた修平に、背後から抱きすくめられた。

そして耳元で【ありがとう…】と囁く声が聞こえた。

顎をつかまれて、修平のほうへ振り返る。

「愛してる…もう絶対に離さない」

 その声と同時に、振り返った私のそれに唇が重なった…。




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