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Once again…  作者: 折原奈津子
第1章
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心が折れそうで





「とりあえず、こいつは何も悪いことはしてない。それは寺尾さんや斎須さんが言ってるように、ここの部内の人なら一番判ってると思いましたけどね。俺の買い被りでしたかね」

「小栗、みんなだってこれを信じてるわけじゃない!」

「だったら! もっとこいつを信じてやってくれてもいいはずですよ!」

「小栗さん…」

「こいつは、旦那に裏切られて、子供と二人きりになった。だからこそ、必死に仕事して。会社内だけだったらよかった。けど、関係ない事件にまで巻き込まれた。もうボロボロなんですよ。なのに社内でまでそうやって疑われたら、どこに行けばいいんです?」

「もういいから…」

「良くないだろ! どこがいいんだよ!」

「…ごめん、藤森。そうだよな、俺達が一番近くで藤森の頑張りを見てたのにな。なのに疑うみたいな事言っちまって…」

「遠藤さん…いえ、いいんです。仕方のないことですから…」

「だからそうやって、仕方ないとか言うなよ!」

 小栗さんは憤りを隠せない様子で、カリカリしている。

でも、それは私を心配してくれる上での事で。

「それで小栗。アクセスしてきてたのは誰だ?」

「上村係長…。誹謗中傷の主犯は、クローゼットの松田です。松田は伝票の改竄にも係わってます。ただし、実際に伝票を差し替えたのは、経理の仙道でした」

「松田とよく一緒にいる子じゃないか」

「しかも、あまり表立って動く子じゃないわね。ある意味、松田に利用されたってところじゃないかしら?」




 部長が昼食から戻ってきて、私たちはいつも通りに午後の業務を始めた。

私に出来る事は、ただただ誠実に業務をこなす事だけ。

「TAJIMA 資材部藤森です。安井様、いつもお世話になっております」

「お世話様です。藤森さん、さっきFAX送ってるんだけど、届いてるかなぁ」

「はい、頂戴しております」

「じゃあ、それをお願いします。それとね…俺のところに変な封書が届いてね」

「は?」

「君に対しての誹謗中傷だったから、ちょっと気になってね」

「は…。それは安井様のところだけにですか?」

「うん、そうみたいだ。何か心当たりあるかい?」

「ええ…物凄くあります…」

「小栗君は知ってるの?」

「ええ。大木部長と一緒に走り回ってくれてます」

「そうか…。じゃあ、僕の方に来た手紙も、証拠として提出した方が良さそうだね」

「お願いできますか? ああ、でも…こうやって安井様の所にも手紙が行っているという事は、他のお取引先にも行ってますね…。多分、担当を外されるかもしれません…」

「ええ!? そんなに大事になってるのかい?」

「ええ、まあ…身に覚えはまったくありませんけど…」

「大丈夫だよ。藤森さんはそんな人じゃない。俺にもそれは判ってるからさ。」

「ありがとうございます。心強いです」

「兎に角、さっきのFAXは頼んだよ! こっちの件は、俺も協力するから安心して!」

「はい、ありがとうございます」

 電話を切ると、どっと疲れが襲ってきた。

でも、これを報告しないわけにはいかない。

心が折れそうな切なさを感じていた。







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