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Once again…  作者: 折原奈津子
第1章
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事情聴取





 幸い、翔太の怪我は頭を打っていたのも係わらず、検査結果も特に問題は見受けられなかった。

でも、数日は様子を見るように支持された。

学童での対応に怒りを顕にしていた小栗さんは、会社への連絡とともに通報もしてくれたようだった。

「綾子、翔太。行こうか」

「うん…」

「ごめんね、ありがとう…小栗さん」

 元気のない翔太を連れて、小栗さんの車で帰宅する。

食事の支度をしている間に、小栗さんが翔太に詳しい話を聞いてくれていた。

「翔太…覚えてるだけでいい。どんな人で、どんなことを言われたのか教えてくれるか?」

「…うん…。おなかの大きい女の人。おかさんが悪いんだから、恨むならおかさんにしろって。赤ちゃんが生まれるのに、おかさんのせいでちゃんとできないって…」

「…それで?」

「ドンって押されて。僕、桜の木に頭をぶつけちゃって、そのまま…」

「倒れちゃったのか?」

「うん」

 聞こえてきた話に、私は息が止まりそうになった。

私を恨めって…該当する女性は一人しか思い浮かばない。

「…綾子?」

 包丁の音が止まって、呆然とした私に気付いた小栗さんが、こちらを向いた。

「綾子、何か心当たりでもあるのか?」

「…あるというか、一人しか思い浮かばないの…」

「誰だ?」

「誉田里美っていう、旦那の会社にいた派遣社員よ…。彼が一緒に暮らしているはず…」

 翔太はすっかり落ち込んでしまっている。

「もしそうなら、これからはもっと調停も有利に出来るはずだ。翔太、大丈夫。これからは迎えはお母さんと、都合が悪くない限り俺も行くからな」

「本当? 一緒に来てくれる?」

「ああ、勿論だ。翔太をこんな目に合わせた奴は、俺が許さないからな。安心して良いぞ」

「うん。ありがとう」 

 翔太は少しだけ食事を取ると、お風呂にも入らずに寝てしまった。

それだけショックが大きかったのかもしれない。

「綾子。警察にも言ったけど、何日かのうちに翔太からも話をしないといけない。それと、お前は調停を担当している弁護士にも話しておいた方がいい。これで、今後は少し話が進むはずだからな」

「うん…」

「部長にも知らせたから、お前は明日から少しの間休みだ。翔太が急変するかもしれないし、よく見ててやれよ?」

「分かったわ、色々ありがとう」

「いいよ、これくらい。っていうか、俺はお前を取り戻すつもりなんだから。これ位は当たり前だよ」

「またそんな事…」

「本音だから仕方ないだろ? とりあえず、すぐに弁護士には連絡を取れよ」

「うん、分かった…」

 小栗さんは一つだけ頷くと、荷物を手にして帰っていった。




 翌日、朝一番で弁護士に連絡をする。

多分、昨夜考えた通りに、誉田里美が係わっている可能性が高いでしょうとの見解だった。

「小栗さんですか? おはようございます、藤森です…」

 弁護士との話が終わった後、小栗さんの携帯に連絡をした。

「おはよう。連絡したか?」

「ええ、弁護士さんも彼女の犯行の可能性が高いっておっしゃってるの」

「そうか…。なぁ、その女の写真って手に入るか?」

「…うちにあるわ。彼が残した荷物の中にあるから」

「今日、警察がそっちに行く。だから翔太に見せて、確認しろ。間違いなければ、警察に渡すんだ」

「はい…分かりました」

「翔太は? どうしてる?」

「昨夜はあんまり眠れなかったみたいだけど、容態が急変したとかはないわ」

「そうか…。でも注意しとけよ?」

「ええ、分かってる。小栗さん…」

「ん?」

「ありがとう…」

「…仕事終わったら、またそっち行くから…」

「ええ、分かりました」

「じゃ、また後で」

 電話を切ると、夫の荷物を漁って、目的の写真を探す。

もし彼女が本当に翔太に手を出したなら、私は何があっても絶対に夫も許せないと思った。


 写真を探し出し、翔太に確認をさせる。

「この人だよ」

「そう、分かったわ。ごめんね、怖い思いをさせて」

「おかさんのせいじゃないよね? おかさんが悪いこと、したんじゃないよね?」

「違うわ。お母さんは何もしてない。悪いのはお父さんの方だもの」

「じゃあ、僕はおかさんと一緒にいられるんだよね?」

「当たり前でしょう? お母さんはどこにも行かないわ」

「あのおじさんは?」

「あのおじさんって…小栗さんのこと?」

「うん。あのおじさんもいてくれる?」

「…どうかしらね…それはお母さんには何とも言えないわ。今夜は翔太の様子を見に来るって言ってたけど?」

「ほんと? 来てくれるの?」

「ええ、さっき電話で言ってたわ」

「やった! 僕、おじさんとゲームやりたかったんだぁ」

「何時に来るかは分からないから、やれたらにしておきなさいね」

「うん!」

 ニコニコと笑顔を見せる。

その後、やって来た警察の方の事情聴取にも頑張って答え、私が渡した写真も持って帰っていった。

「いやなこと思い出させてごめんな。でもちゃんと翔太君のためにも、悪い人はおじさん達が捕まえるからな」

 そう言いながら頭をそっと撫でてくれた。

くすぐったそうに笑う翔太のためにも、一日も早く解明してほしい…そう思った。









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