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Once again…  作者: 折原奈津子
第1章
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一人になってしまう恐怖




 何かあったらって…何か起こるっていうんだろうか。

とりあえず、学童は必ず迎えに行くようにすることにした。

でも、出張とか会議とか、余程の事がない限り小栗さんもついてくる。

「…だからなんでついてくるんです?」

「お前にも何があるか分からないだろ?」

「子供じゃないから…」

「でも良く考えてみろよ。男が相手だったらどうにもならないだろ?」

「じゃあ、当分は車通勤します」

「金がもったいないからやめろ」

「じゃ、タクシーで」

「余計に悪いっての」

 どうせ小栗さんが来ない日は、一人で迎えに行くんだから同じなのにと思う。

「…お前、一人の日もあるから同じだって思ってるだろ」

「…」

「ビンゴかよ…」

「何も言ってませんが…」

「…じゃ、妥協案。車を使うなら、使う駐車場は俺のスペースを使う事」

「は? 小栗さんのスペースって、社用車を置いているところでしょう?」

「いや、俺の車。時間が不規則だからな、通勤は基本的に車だよ」

「…そんなの聞いてなかったし」

「言ってねーもん」

「…でもそこを借りたら、通勤が大変なんじゃないんですか?」

「朝は綾子が俺を迎えにくればいいんじゃん?」

「…却下です」

「ケチだな。せっかく俺のスペース貸すって言ってるのに」

「何とでも言ってください」

 本音では、小栗さんといるのを見られて、これがエスカレートしたら嫌だって思ってるんだけど…あえてそこには触れないでおく。

でもその少し後に、学童の先生から来た電話で考えを変えた。


「学童の須貝です。翔太君が外遊び中に怪我をしまして…。お迎えに来ていただけますか?」


 …翔太君が外遊び中に怪我を…。

頭が真っ白になった。

まさか…その台詞だけが頭の中を廻っていく。

偶然だって思いたい。

ううん、偶然に決まってる。

仕事上の妨害とかはあっても、こんなことまでなんかするはずない。


 タクシーを拾って、急いで学童に向かう。

その間に、車内から小栗さんに電話を入れた。

「もしもし、小栗さん? 翔太が外遊び中に怪我をしたって、ついさっき学童から連絡が来たの…」

「今、どの辺り?」

「もうすぐ着くわ。怪我の状態によっては、そのまま病院に行くけど。ただ学童に迎えにって言われたから、そこまで酷くはないと思うんだけど…」

「わかった。俺もこれからそっちに向かうから。移動するなら連絡して」

「はい…」

 夫は愛人を作り、子供まで作って私達母子を捨てた。

これで翔太に何かあったら…。

また最悪の考えばかりが頭に浮かぶ。


少しして、タクシーが学童に一番近い門の前に横付けされる。

チャイムを押し、名前を告げる。

「翔太!」

「あ、おかさん…」

部屋の一番奥に寝かされていた翔太は、頭部に冷却材を当てられている。

「先生、頭を冷やしてますけど、寝かせているだけで大丈夫なんですか? いったい何があったんですか?」

「頭部は裂傷も見られませんでしたので、とりあえず様子を見ています。某かの症状が出るようなら、病院に運ぶ必要はあるかと思います」

「そうですか…。それで…」

「学校の保護者の方のお一人だと思ったんですが、お若い方でしたが妊婦さんの様でした。翔太君に話しかけたと思ったら、すぐに翔太君が倒れて」

「その妊婦はどうしたんです?」

 背後から聞こえたのは、小栗さんの声。

「小栗さん…」

「遅くなってごめん。それで、先生。その妊婦は?」

「あ、はい。すぐに探したんですが見つからなくて…。申し訳ありません…」

 見つからなかった?

それって、故意に怪我をさせて逃げたって事じゃないの?

「通報とかはしてないんですか?」

「ええと、それは…まだです…」

「故意に怪我をさせたのかもしれないのに、ここの学童は通報もせずに放置したんですか? 怪我の具合も、自分達の判断だけで安静にしてただけじゃないですか」

 静かに、でも怒りが込められた小栗さんの言葉。

「…連れて帰ります。通報もさせていただくので、そのおつもりで。藤森、翔太君…行くぞ」

 すぐに荷物を用意すると、三人で学童を出る。

小栗さんの車に乗り込むと、一番近い救急施設のある病院に向かうことになった。




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