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Once again…  作者: 折原奈津子
第1章
13/48

鬱々として



「ところで、小出君。彼女が我が社に残るとして、どうしたらもう二度とこのような真似をしないと思うかね?」

「社長…それは…」

「はっきり言ってもらえるかな。どうなんだ?」

「は…そこにいる小栗君と藤森さんの接触を絶ち、小栗君が松田君の気持ちに応えてやってもらえれば恐らく…」

「…なぜ私が、私の意思ではない交際をせねばならないのか、理解できませんね」

「その通り。藤森君と小栗君が接触を絶つという事は、業務にも差障りが出てくる。そんな馬鹿な話が改善案だとでも?」

「こんなところで話す内容ではありませんが、私は離婚調停をしているという藤森さんに、復縁を申し込んでいる立場です。だからこそ、その案は受け入れられない」

「ふむ…確かに馬鹿げている。もう少しまともな案を、役員会までに出したまえ。それまで松田という女子社員は、自宅謹慎をさせなさい」

 呆然としていて、話し合いがとりあえず終結した事に気づくのが遅れた。

「藤森さん、戻りましょう」

 大木部長の優しい声で我に返る。

「は、はい…」

「ごめんな…俺のせいで巻き込んだ…」

「小栗さんのせいなんかじゃないわ」

 小会議室を出ると、三人で廊下を歩き出す。

「部長、結局どうなるんでしょうか…」

「今決まった通りに、彼女は自宅謹慎、役員会議で進退が決定される事になります」

「もしその間に、またメールなんかで嫌がらせがあれば、そのときは有無を言わさずという決定になるんじゃないか?」

「…」

「とりあえず君たちは、今まで通りの業務に徹してくれるかな。いいね?」

「…はい…」




 資材部に戻ると、残業をしている男性社員の他に、斎須さんまでが残っていた。

「藤森、待ってたよ! どうだった?」

「斎須さん…。とりあえず私はとりあえず、今まで通りです。彼女は…まずは自宅謹慎で、役員会で決定するそうです」

「そう。面倒な話に巻き込まれたものだね。まあ、いい。今夜は気分転換しましょう! 息子さんも連れて、食事行くから準備しなさい!」

「え? あ、はい!」

 慌てて退社の準備を始める。

今夜は確かに鬱々とした気分になって、食事も落ちついて取れないに違いない。

それにきっと、家にいてもあまり気分が良くないと思う。

それなら、事情も分かってくれている斎須さんと気分転換するのも、今の私には必要かもしれない。

今夜は小栗さんと会わないといいけど…。

だってあの夜、部長もいたけれど、小栗さんと遭遇したことで嫌がらせが悪化したようなものだ。

彼のせいではないけれど、でも…。


 時間ぎりぎりにではあったけれど、帰宅しようとしていた翔太をうまく学童の側で捕まえた。

「翔太ぁ、ちょうど良かった! ご飯食べに行くわよ!」

「あ、おかさん! ほんとに? やったぁ!」

 嬉しげに、学童の先生にさよならを言うと、こちらに走ってきた。

「翔太、こちらは会社の先輩の斎須さんよ。ご挨拶してね?」

「こんばんは、斎須です」

「藤森翔太です! こんばんは!」

「お、礼儀正しくて、しっかりしてるなぁ」

「ありがとうございます、挨拶だけはきちんとって思ってるんです」

「今時は出来ない子供が多いからなぁ」

 褒められて悪い気はしない。

翔太もすごく嬉しそうだ。

斎須さんと翔太と連れ立って、駅の方に向かう。

というのは、この辺りは駅周辺にしか飲食店がないからなのだけれど。

「翔太君、君は何が食べたい?」

 斎須さんにそう問われ、翔太が首をかしげた。

「んー…給食が今日は烏賊の松毬焼きってやつだったんだ。僕、烏賊ってあんまり好きじゃなかったから…」

「じゃあ、お肉のほうがいいかな?」

「うん! 僕、お肉大好き!」

「ははは! 私も大好きだ。じゃあ、焼肉でも行こう!」

「うわー、焼肉? すっげー!」

 ウキウキと手に手をとって、焼肉屋を目指して小走りになる二人を追いかける。

その二人の様子に、思わず苦笑した。


 向かった店は、1時間半ほどのバイキング形式で、以前一度だけ来たことがあった。

いい肉を使いつつも、寿司やデザート、サラダに麺類までが豊富で、好きなものを好きなだけ食べられる。

「翔太、デザートは後よ!」

嬉々としてアイスコーナーに走ろうとしていたところを捕まえる。

「はぁい…」

サラダやサンチュを大量に取って、その後に肉類を運ぶ。

ドリンクはソフトドリンクだけチケットがあったけれど、私と斎須さんは酒類も頼んでいた。

「藤森は何を飲む?」

「マッコリの…キウイジュース割にしようかしら…」

「じゃあ、私は…何にしよう…。それ、美味しい?」

「はい、飲みやすいですよ。摩り下ろしのキウイなんで、ビタミンCも豊富ですし」

「じゃあ、同じ物にしてみよう」

 そう言うと、すぐにオーダーをする。

翔太は慣れたもので、自分でドリンクを取りに行く。

今夜は珍しく、レモン風味の野菜ジュースにしたようだった。





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