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Once again…  作者: 折原奈津子
第1章
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調査報告



 頭痛がしてきた。

だって私は、こんな風に邪魔される覚えはないもの。

小栗さんが好きだから、コンビを組む私が邪魔とか…社会人としてありえない。

伝票の改竄に、嫌がらせメール。

そんな暇があったら、小栗さんとコンビを組めるように努力をすべきだったんじゃないかって思うもの。

でも今回は、取引先にも迷惑をかけることになった。

私だけだったらまだ良かったんじゃないかって思う。

だけど今回のそれは、小栗さんと大木部長にも迷惑をかけて、取引先に迷惑をかけて。

挙句に、自分の首を絞めた結果になっている。

「あー、頭痛い…」

 こめかみの辺りをぐりぐりと押す。

「藤森、頭痛か?」

 同じ班の、寺尾先輩が声をかけてきた。

男っぽいけれど、れっきとした女性だ。

「はい、ちょっと…」

「薬、使っておくか?」

「いえ、そこまでではないので」

「必要だったらすぐに言ってくれな」

「はい。ありがとうございます」

 頭をぷるっと一振りして、またPCに向かう。

それでも気分が落ちつかなくて、なんとか業務は続けたけれど集中することが出来なかった。


 大木部長が戻ってきたのは、終業時間間近のことだった。

「藤森さん、ちょっとよろしいですか?」

「あ、はい…例の件ですか?」

「はい。じゃ、ちょっとこちらへ…」

 部長について、廊下を歩く。

向かったのは、小会議室だった。

「こちらです」

「はい、失礼します」

 部長に続いて小会議室に入ると、小栗さんや経理の小美濃主任、マキさんもいて。

上座の席には社長に専務、そしてクローゼット部の小出部長、人事部の中村部長もいた。

「藤森さん、終業時間直前にお呼び立てして申し訳ない。少しお話を伺ってもいいだろうか」

「はい、もちろんです」

 そうして今回起こった伝票改竄から嫌がらせなどを、しばらくの間説明することになった。

「この後は私から説明いたします」

 そう言って話を引き継いだのは大木部長で、小栗さんが証拠のメールのコピーや伝票のコピーなどを配布し始める。

「藤森君の話から、私と小栗君で調べたのですが。ほぼこの女性のやったことだと思われます」

 そう言うと、書類を一枚取り出した。

―――松田有紀子――

そこに写っていた写真は、昼間絡んできた女子社員の顔。

「この松田君は、クローゼット部に所属しております。どうやら小栗君に気があるようでして。最近になって藤森君が小栗君のサポートをすることになり、面白くなかった。

しかもその業務は順調に行っている」

「あと、藤森さんが私にとって、過去に付き合いのあった女性だという事も知って、更に面白くなかったんだと思われますね」

「しかし今回は、社内での嫌がらせだけに留まらなかった。既に納品に問題が生じたりもしましたし、彼女はやりすぎた。その後にも、我々の打ち合わせを尾行し、二人だけの写真を隠し撮りして社外から社内へのメールで多数の社員の目に触れるようにもしています」

「ただ違うのは、藤森さんに送ったメールにだけ、特有の嫌がらせの文章をつけている事です」




「小出君、この社員の普段の様子はどうなんだ?」

 社長の声に、額の汗を拭きながら小出部長が話し出す。

「えー…彼女は普段は…あまり重要な業務は任せずにおります。遅刻も結構多く、常々なんとかするよう話してはおるのですが。業務的にも中途半端なことがありまして…」

「ではどう対処したらよいのかな?」

「どうと言われましても…なんとも…」

「今回の被害は1セットだけだったらまだ良かった。ですが必要だった数が多すぎた。たまたま倉庫に在庫があったからなんとか間に合わすことが可能でした。それにはマキさんにも不便をかけましたがね」

「それだけじゃない。本来発注するはずだった企業の品物を、一日から三日遅らせてもらったりの調整も必要でした。もう一社だけの損害にはならないかと思います」

「社長、彼女は我が社に残るのであれば、また同じことをしますよ」

「小栗、それは言いすぎじゃないか?」

「いいえ、専務。この程度じゃ彼女は絶対にやめたりしない」

「我々としましては、彼女には厳しく処分を下してほしいと思います」

「大木君!」

「我々は自分の業務を放り出してでも、こちらを処理する必要がありました。

それには半日がかりで当たったので、残業をして放り出していた業務を済ませる必要もありました。

勿論当日中に終わるはずもなく、翌日に持ち越しましたので色々と支障が出た。

ですがまた、彼女はこうして脅迫まがいのことをし続けている。かばう必要がどこにありますか?」

「ふむ…」

「まずは謹慎処分にして、週末の役員会議まで持ち越したらいかがでしょう」

「中村部長、人事に何も迷惑がかからなかったといって、その判定は甘い!」

 何も口を挟めないでいるので、正直その場にいるのはいたたまれなかった。

内心では【早くこの場を脱出したい…】と、それしか考えていなかった。









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