表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。

沈黙回路

手を動かすのは止めない。

でも、あくまて゛機械的に動かすだけ。


ずっと誰とも喋らないでいると、頭ばかりが無駄に働く。


あの人も今、同じことを考えているのがもしれない。

チーフは相変わらず無言で自分の仕事をこなしている。


かれこれ二時間近く、お客は来ていない。洗い物は無限に続いているような気がする。


「こんだけ静かだと死にたくなりますね」


冗談混じりに聞いてみたくなる。


でも、チーフが答えたあと私は何を言えばいいのか分からなくなるだろう。


出来れば一笑して、何も言わないで欲しい。


そうじゃなければ…そうじゃなければ私は


「一緒に死のう」


って言ってしまうにちがいない。


その場の空気っていうものがやっぱりあって、今なら死んでしまってもいいとさえ私は思っている。



後で後悔するのは分かっている。でも、今しかチャンスはないのかもしれない。

私は泡だらけなった自分の腕を見た。



そういう風に、ある時ある瞬間に、人はフラッと死んでしまえるモノなのかもしれない。


大した理由なんてないんだ。ただ、流れに乗れば人は死ねる。



「こんだけ静かだと死にたくならないか?」


私は虚をつかれた。


問われるのは私だった。


私は

私は

私は…死にたくない…


「何言ってんですかチーフ?彼女にでもフラレたんですか?」


私は笑った。

笑えた。


チーフはキョトンとした顔をして一呼吸する。


そして、まぁ、いいやって顔をするチーフを見て


心から死ななくて良かったと思った。


泡だらけの手は忙しく動いていく。


静けさの中、水音とパソコンを弾く音が小気味良くなり続けた。

評価をするにはログインしてください。
この作品をシェア
Twitter LINEで送る
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
[良い点] 一緒に暮らさないかならいいのにね
2019/11/02 19:19 退会済み
管理
[一言] 「死」へと向かいながらも危うく「生」に戻ってくる。そんな場面に着目して切り取った作品だと思います。 まずそれに興味を持ちました。 文章は読みやすいです。少し淡白な気がしましたが、それはこの…
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

この作品はリンクフリーです。ご自由にリンク(紹介)してください。
この作品はスマートフォン対応です。スマートフォンかパソコンかを自動で判別し、適切なページを表示します。

↑ページトップへ