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第一幕その2~海辺の少女~


 やりましたね。当初の目標であるユニーク百人を突破しました。今度はドーンと1000人を目指しますので、これからも宜しくお願いします。それでは本編をお楽しみください。


 海沿いの町は平凡な所だ。

 ここの海でいつもラインハルトは馬を洗っていた。だが、自分の馬はニコラ

が洗うようになってからはそれもしていない。それでもこの町にはなんとなく

来てしまう。

 

 海を眺めるのが好きなのだ。


 この先には一体何があるのか?そんな事を考えるのがたまらなく好きなのだ

ろう。

 また時間、季節によっても海は様々な表情を見せる。

 今は秋だ、収穫が終わったこの時期はとても静かだ。

 春の出水で海が荒れている訳でもなく、冬の凍った匂いを潮が運ぶわけでも

 なく、ただ静かだ。これはこれで趣がある。


 早い朝に来たとき、紫色の太陽を見たことがある。まだ一度しか見ていない

が素晴らしかった。いつかまた見ることが出来る。そんな淡い期待が、この町

に来る理由の一つだと最近気づいた。


 「ラインハルト様、魚が焼けました」


 海では好んで魚を食べる。川の魚と味がまた違ってうまいのだ。巡羅隊の兵

も好んで魚を食べる。


 「ニコラ、お前は食べないのか?」


 「私は、後で食べさしていただきます」


 「勝手にしろ」


 子供のくせに小ざかしい、子供なのだから余計な事は考えず、気ままにやれ

ばいいものを・・・。

 

 ニコラはまだ十四歳だった。自分は二十歳だが、同じ年齢の頃はこんなに小

利口ではなかった。

 自分の従者として、恥ずかしくないように鍛えて欲しいと言っていた。その

時に性根をたたき直してやろう。

 食べ終わった魚を焚き火の中に捨てながらラインハルトはそう考えた。


 「調練を始めるぞ」


 兵が慌しく動き始める。


 まずはいつも通りに巡邏隊の兵を半分に分けてぶつける。準備運動としては

これぐらいが丁度いい。叩き落とされた者は闘争心がむき出しになる。

 自分が鍛えに鍛えた兵の調練を見るのはなかなかいいものだ。

 

 兵が配置についた。後はラインハルトの合図を待つだけである。


 「ラインハルト様っ! 伝令にございます」


 ・・・間の悪いことだ。


 不機嫌な気持ちを隠そうともせずにラインハルトは報せにきた兵と顔を合わ

せる。


 「状況を報告しろ」


 「うんっ? なんだこの小娘は?、偉そうに大きな馬に乗りよって、火急の

  要件だ、ラインハルト様に取り次げっ!」


 ガンッ、と硬いもの同士がぶつかり合う高い音が出る。


 ラインハルトの持つ調練用の鉄棒が伝令兵の兜のみを上に吹っ飛ばしたのだ。


 「き、・・きささ・・・っさま、イマ、我を小さいと申したのか・・・?」


 ラインハルトの声は余りの怒りに声がうまく出なくなっていた。

 訳が分からないといった顔で兵士はこちらを眺めている。自分の兜が何故吹っ

飛んでしまったのか、知覚できなかったのだろう。


 「・・・お前、死んだぞ」


 鉄棒を槍に持ち替えて相手の首を刈り取ってやろうと思った。


 「・・・・!、ラインハルト様!、まずは火急の要件を聞いてからにしまし

  ょう」


 ちっ、ニコラが馬に乗って俺と伝令にきた兵士の間に割り込んできた。これ

では斬れない。


 「えっ、この子がラインハルト様?、しかし余りにちいさ・・・」


 「しっっ!、それ以上は禁句!禁句ですよ?、それで何の要件ですか?早く

  言って逃げてください!?」

 

 ようやく伝令兵はいったい誰に根も葉もない戯言をいったのか理解したのだ

ろう、震え始めた。溢れ出る俺の殺気は大気すらも揺らすことが出来る。


 「・・・ぞっ、ぞ、賊が・・町の広場で暴れております。直ちに救援を願い

  されたし。」


 上ずった調子で報告してくる。可愛そうなくらい怯えている。少し溜飲が下

がってきたが、許す選択肢は全くなかった。


 「おっ、お待ちください、私はモリー様を頼って王都からのがっががががが・

  ・・・っ」



 目にも止まらぬ俺の逆突きが炸裂する。ニコラが邪魔で斬ることが出来ない

代りだ。


 殺すのはやめてやろう、せめてもの情けだ、

 その代わりにもっと酷い目にあわせてやる。


 「貴様はもう用済みだ、おいっ、そこの兵士、こいつを逃げられぬように縄

  で縛り、後で男娼として、売り飛ばせ、ツラだけは一流だから高く売れる

  ぞ、金はお前らで山分けしてしまえっ!」


 ニコラは庇う事が出来ず、後ろで落馬した男を憐憫の表情で見たあとにため

息をつく。


 「本当ですか?隊長っ!?」


 「さすが、俺らのマスコットは言うことが違う!」


 「はぁ、はぁ、一生付いていきますよ、ラインハルトちゃん」


 巡邏隊から歓声が上がる、何人かは、息を荒げ赤面している奴らがいるが、

本能的に目を合わせないようにした。


 「よし、他の者は調錬を続けろ!俺一人で賊を蹴散らしてやる。」


 忘れてはならないが、兵の調練はしているものの、本来の俺の役目はリター

ナを含めた近隣の治安を守ることだ。


 「一人で行くなどと無茶です。」


 「ならばニコラ、お前が付いて来ればいい。」


 言うだけ言うと、馬を走らせた。ニコラはまだ何か言っていたようだが慌て

て付いて来た。

 町の中、駆け抜ける。このラインハルト・シュニッツラーが通るのだ。町の

住民は急いで道を空ける。

 しかしその一方、中には逆に、見物しようと家を飛び出してくる者もいた。

恐れられているだけではない。この光景は周辺の町では当たり前のことになっ

ている。


 「きゃぁぁぁっ、生ラインちゃんよっ!」


 「こっちを向いてラインちゃん、手をふってぇぇぇっ!」


 「お菓子あげるから、私の妹になってぇぇっれ」


 「結婚してぇぇっぇぇ!、なぁんにもしなくても、私の家で一生面倒みてあ

  げるから」


 更に女たちにまで人気あるのが俺の魅力。何を言っているかほとんど分から

ないが、きっと俺を賛美する内容なのだろう。そこにいる小娘なんかは顔を真っ

赤にして手を振っている。

 慕われているのだ。ここらに住んでいる住人ならば誰でも俺の顔を知ってい

る。


 ふっ、とそこで気づくことがあった。


 「(―――そういえば、何故、あの伝令兵は俺の顔を知らなかったのだ?)」


 不思議な事である。モリーに拾われ、リターナに流れ着いてから何年もの間

この辺りで暴れまわってきた、ラインハルトを知らない者はいないはずだ。


 「余所者がここに来ていたということか?」


 独り言を漏らして自分で確認をとる。


 「(あの男、妙に良い鎧を着ていたな、美しい面構えといい、どこぞのエリ

  ート貴族のボンボンといったところか――、)」


 ラインハルトは頭を振る。


 それがどうしたというのだ、俺にとってはもう関係のないことだ、何よりあ

いつは俺のことを小さいと言いよった。一生ここで女だけでなく男の相手もす

る男娼として生きていくのが運命だ。もう関わり合いをもつこともないであろ

う。

 

 人々が騒いでるいる広場が見えてきた。


 一人の少女が大勢の男に取り囲まれて、捕まえられそうになっている。父親

らしい者や従者は斬り伏せられ、血だまりに顔を埋めてた。あの出血量だとも

う死んでいる。

 半ば捕まったも同然の状態で、少女は必死に死体に呼びかけ続けているのが

哀れだった。


 「邪魔だっ!」


 みすぼらしい格好ではあるが、剣で武装している男が振り返る。


 「なっ、やめ・・・・・っ」


 賊の一人を背後から不意打ちした、顔面をモロに打ちすえたから、血をまき

散らし、歯をバラまきながら倒れていく姿が滑稽であった。


 「白昼堂々とっ、ここを俺様、ラインハルトの縄張りと知っての狼藉か!?」


 馬を横に滑るように派手に止まらせる。槍の柄を両手で持ち、馬上で立ち上

がり手を空に上げて大声で威嚇する。

 そこでラインハルトは理屈では言い表せられない奇妙な感覚をおぼえた。

大勢の賊が動揺するなか、はっきりとラインハルトは少女と何故か見つめあっ

ていた。

 まるでお互いの瞳が吸い込み合ってるかのような、視線を逸らすことが出来

ない不思議な感覚であった。


 おかげさまで第四話「海辺の少女」を投稿できました。彼女がRESULTのメインヒロインです。登場が少し遅い気もしないでもないですが。皆様に可愛がっていただきたいと思います。


 みなさんの感想・評価をすごくお待ちしておりますので、何卒!なにと~ぞっ!よろしくおねがいします(笑) 誤字・脱字がございましたらお知らせいのほどよろしくお願いします。

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