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開幕~プロローグ2~

 つづいてもう一話投稿します。

 よろしくおねがいします。

暗い闇が支配する世界、夜。


人が活動を停止する時間帯であり、日が沈めば家で寝るのがこの大陸の常識だ。

アゼルバイシャンの王都といえども同じことだ。警邏のためにわずかばかりの

篝火があったとしても、平時では色町をのぞいてあまり使われない。それが常識

であったはずだった。

 

 紅蓮の炎が王都をおそっていた。助けを求める悲鳴が響いてくる。城門から更

に遠く離れたこの場所ですら聞こえてきた。今、あの場所ではさながら民にとっ

て地獄絵図が展開されているのだろう。

 将軍であるハーキルは己の務めを果たさず他人事のようにそれを見ていた。

 宮殿が炎に包まれていた。はっきりと見える。ようやくこの時が来たのかと高

ぶる気持ちが抑えられない。自分の指揮下の兵を纏め上げ、闇に紛れるように密

かに兵を遠く離れた領地から集結させた。この日のために鍛えた兵は燃え上がる

王都を見て動揺しているようだが、命令さえあれば直ちに動くことが出来るであ

ろう。もうすぐだ。己の大願を果たす時が来るのだ。

 気持ちを落ち着かせるために深呼吸をする。空気を普通に吸い、長く息を吐く。

こうすれば不思議と冷静になる。小さいころからの癖であった。

 草原に整然と並んだ兵を馬上からぐるりと見渡し、前を見据える。紅に染まっ

た王都が見える。兵たちからすればありえない不気味な光景でもハーキルには美

しく見えた。

 アゼルバイシャンの首都には高い城壁がある。その中に町があり、住民は例外

なく城壁の内側に居を構えている。それほどまでに広く、なお余裕があるのが王

都だ。この国の人口はここに集中し、日々増え続けている。貿易と産業の起点と

しても栄え、近くに流れる大河は船による交易も可能だ。その発展を象徴する宮

殿は一際大きい。高い城壁すらも隠すことが出来ない建築物はまさに圧巻の一言

だ。

 この国の象徴として贅を凝らした宮殿はため息がでるほど無駄遣いがされてい

る。黄金であしらえた彫刻が屋根のところどころに飾られ、建物の柱は例外なく

大理石が使われている、白亜の宮殿とも言われる外観は諸国の王でさえ羨ましが

る程だ。もちろん、防衛面でも力を入れてはいる。城壁で全て囲わている王都の

中心に堂々と鎮座し、近くに流れる大河から引き入れた水で囲う、止めとばかり

に内側には更に城壁。進入路を特定されいるこの構造は、たとえ王都に敵が雪崩

れ込んでいようとも宮殿だけで何カ月でも立て籠もれるようになっている。国民

の血税をこれでもかと注ぎ込んだけはあり、まさに鉄壁の構えだ。それが正に今

崩されている。

 

 賊が宮殿に侵入しているのだ。

 

 当然のことだろう。何せ自分が手引きしたのだから。

 この日のために賊を国中で暴れさせてきた。つまりは斡旋していたのだ。鎮圧

するため中央総督府の軍は各地に散らばっている。馬鹿な奴らだ。今の腐敗した

この国にはまともな判断が出来る奴らがいないのだろう。都の警備をなおざりに

しすぎだ。

 もうすぐ四十歳に届くかという年である。幼き頃からこの国に忠誠を誓ってい

た。誰よりも強く、賢くなるであろうと、周りの大人からはそう言われ育ってき

たのだ。

 事実自分は一を教われば十覚えるという天才であり、誰もがこの国の将来を担

うであろうと期待されていた。子供だった自分は、それを単純に嬉しく思い、い

つかは御伽話に出てくるような救国の英雄になれると信じて疑わなかった。

 

 今の自分をおちぶれているとは思わない。国王グラハムは優しいだけが取り柄

の愚か者だ。

 

 腐敗した国家を統治する力はなく、国は乱れに乱れた、もともと先王の官位を

売る行為が原因だ。もはや手遅れとしか言いようがない。誰かが何とかしなけれ

ばならない時が来ている。

 どれほど前から考えていたか、悩みに悩んだ末の結論は、

 王都を奇襲した上での国王グラハムの暗殺であった。

 専制君主制のこの国では国王をすげ替える以外に方法はないのだ。

 国を救う英雄

 自分の行動はそうなるであろう、いや、そうに違いない。俺は英雄になるのだ。

 国を救うのだ。何も間違った事はしていない。


 「(たとえ王を殺したとしても・・・・・・・・・・)」


 「伝令!伝令!」


 待ち望んだ声・・・ついに来たのだ。

 

 「国王グラハム様以下数十名賊の手にかかり、あえなく討ち死に!・・・・・」


 国王の見張り役としていつでも逃げ出せるようにあらかじめ潜り込ませておい

た兵士の一人だ。事情は知らせていない。ただ、変事があればこの草原に来るよ

うに指示は与えていた。危急を告げるその声は悲壮に満ちており、体中から血を

流すその様は騎士の鏡だ。惜しむらくはあとで始末しなくてはならないことだが・・・。

  

 「なお王女殿下ソフィア様は近衛騎士団の活躍によりからくも賊の包囲を突破!

  ですが今現在行方不明であります」


 「!?」


 予定とは違う!王女が賊に捕まっていない。宮殿に侵入した賊だけはただの賊で

 はない。自分の私兵を賊に見せかけていたのだ。

 王女はまだ十四歳の小娘である。国王さえいなくなれば後はどうとでもなるはず

 だ。

 自分は名門貴族の出なのだ。誰にも文句は言えない、言わせない。

 賊に捕った王女を助け出し、この手に押さえ、残った臣下の信頼をえる予定だ。

 その勢いに乗じれば、このアゼルバイシャンという国において絶大な権力がふる

 える。王家の血筋は絶対にして神聖だ。成長した王女と結婚するなり子供を生ま

 せれば、この国は自分の物になる。

 それなのに・・・・・・・、


 「(くそっ!)」


 内心の舌打ちを隠し、伝令を下がらせる。直ちに軍を動かさなければ!これ以上

 賊を放っておく訳にもいかない。それに自分で宮殿に行きたかった。もしかした

 ら何かの間違いかもしれないからだ。


 「カーター!すぐに軍を動かすぞ、お前は歩兵を率いて行け、盾など余計なもの

  は捨てて行け!俺は騎馬のみで先行する、駆けに駆けよ!」


 カーターは副官で、優秀な男だ。たいていの事はやってのける。


 「すでにやっております。歩兵には鎖帷子のみで、いつでも出陣出来ます」

 「生意気な!そんなことは言わずとも良い」

 「申し訳ございません」


 いつもの会話だったが妙に癪だった。


 「行くぞ!遅れた者は死罪だ!鬨、あげい!」


 銀卵の鎧に統一された兵が勇ましい声をあげはじめた。

 自分は運に見放されていない。これからなのだ。まだまだチャンスはある。王女

 を捕まえてこの国で最強の権力を手に入れるのだ。そしてこの国を救い英雄になる。

 そのためだったら何をしたっていい。

 そうだ。

 何をしたっていいのだ。

 救国の英雄になるのだ。


     ◆


 ラグランジュ大陸の東に位置する国アゼルバイシャン、肥沃な大地と強力な騎士団

 によるこの国の栄華は、ミレニアム王国と呼ばれるほどの発展を遂げた。だが、相

 次ぐ後継者の死去により内部分裂を始め、混迷を深めることになる。それは周辺諸

 国の干渉のきっかけとなり、侵略戦争を引き起こすことになった。現国王であるグ

 ラハムは事態打開のため和平を持ち込むもこれを拒否される。ネーデルランド平野

 の決戦によって、からくも勝利を手にするも国内に深刻な損害を与えることになっ

 た。国民の怨嗟は高まり、臣下は離れ、相次ぐ不平に先導されるように起こる反乱

 や盗賊の出没は、更なる混迷を呼んだ。


 これは結果的にある青年(見ためはショタ、中身は凶暴)が一人の少女と出会うこ

 とによって人生が変わるサクセスストーリー?である。

 感想文がいつ来てくれるかドキドキです。

 PCでメールをしたことがないので楽しみです。

 評価・感想ビシバシお願いいたします。


 誤字・脱字が誤字ましたらよろしくのほど連絡おねがいします。

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