号泣のラヴ・ソング
レオナの目が見開かれた。
「ラヴソング……? オレは……ただ、オマエへの気持ちを……みんなに届けたかっただけなのに……」
「鏡見てみ? 君、人狼でしょ?」
レオナの爪が壁に食い込み、低い唸りが漏れる。
「そうだよ……オレは人狼だ。でも、それがどうした? オマエへの想いと音楽には、そんなの関係ないだろ!」
「絶対、メタルじゃん」
レオナの唸りが強くなる。
「……メタルだってラヴソングは歌えるんだよ! オマエには分かってほしいんだよ!」
「ギターガンガン弾けよ。速弾きやれよ。ヘドバンしろよ。何で可愛らしいコード弾いてるの?」
「……うるせぇ!」
その言葉に反射的にギターを掴み、弦を鳴らす。
美しい、柔らかな音色が倉庫に広がる。
それは、確かに甘く、切ないメロディだった。
「これが……これがオレの本当の音だ!」
「何処が激しいの? 滅茶苦茶甘ったるいじゃん?」
レオナはギターを投げ捨て、壁を殴った。
拳から血がにじむ。
「くっ……オマエに理解されないなら……もういい! 出てけ!」
「違うよ。ちょっとギター、借りるよ?」
ジェスは投げ捨てられたギターの元へと向かう。
警戒した目つきでジェスを見つめる。
「何をする気だ……?」
ジェスはギターを抱え、弦を強く弾いた。
ギュギュギュギュ……キュインキュインキュイン……ズギャーン……!
音が倉庫を震わせた。
速く、激しく、獣の咆哮のように荒々しいリフ。
レオナの耳がピンと立ち、瞳が大きく見開かれる。
「そんな、音……知らなかった……」
ジェスは演奏を止め、静かに言った。
「メタルってこれじゃん?」
レオナの手が震え、涙が零れ落ちる。
「そうか……オレ、ずっと間違ってた……オマエの言う通りだ……」
ジェスも目を潤ませ、声を震わせた。
「そうでしょ?人狼が格好いいメタルやってたら絶対ウケるから……他のメンバーは皆、それ期待して入ってくるんだよ……?でもレオナの演奏聞いて、皆抜けていってるんだよ?」
「ごめん……ごめん……オマエを苦しませて……オレの我儘で……みんなを……」
「別にメタルでラブソングでもいいの。『お前の事を悪く言うヤツは俺が殴る』程度でもいいの。ただ『学校帰りにパフェ食べよう。二人はフワフワ気分』ってのはメタルじゃない。フワフワ気分ってなんなんだよ……」
ジェスは感情が止まらなくなり、号泣した。
「うっ……オマエ……オマエがそこまで……オレのために…」
レオナは泣きじゃくりながらジェスを抱きしめた。
「お願いだよ、お願いだから目を覚ましてくれ……僕も限界なんだよ……いつになったら僕はツーバス踏めるんだよ……うちの曲、全部ドラムはハイハットしか叩いてないじゃないか……」
抱き締められながら、ジェスも号泣する。
声を震わせながら、強く抱き返す。
「そうだな……オレ、目を覚ますよ……オマエと一緒に、新しい音を作りたい……」
その後、レオナは目を覚ました。
獣の咆哮を宿した激しい曲調に、切ない想いを乗せたラヴソング。
新メンバーも無事加入し、倉庫の音は街の夜を切り裂くように響き始めた。
人狼の歌声は、満月の夜に、より深く、遠くまで
ようやく『人狼っぽい感じで』届くようになった。




