聖獣降臨
圧倒的な力を持つ天使は次々と魔獣を倒していく。
その天使がどこへ向かうのか?
これまでにない強敵がノゾミ達を襲う!
急転直下の天使と魔獣の聖戦が今!始まる!
人が3日分と考えてた食料を食べつくし、ついでに大きな音に反応して近づいてきた魔獣を100体以上殴り倒した後、天使は歩き始めた。
「どこに向かってるの?」
「トウキョウ。」
その単語に背中が凍り付く。
「ちょっと待った!」
すたすたと歩く天使の腕をつかんで止める。
「どうしたの?」
「トウキョウって・・・あのトウキョウ?」
トウキョウ、私の知る東京は決して近づいてはならない場所だ。
その場所に人はいない。
血も涙もない魔獣しかその地にはいない。
入ったものは帰ってくることは出来ず、東京への道は片道切符だ。
一説によると、あの地に入った者は人をやめ、魔獣になるとかなんとか。
「あそこだけは絶対に無理!」
「ノゾミ・・・大丈夫、東京はそんな怖い場所じゃないよ。」
「怖いよ!魔獣の女王がいるんでしょ!?」
魔獣には大きく分けて3種類いる。
これまでに遭遇した2~3メートルほどの小型の魔獣。
もっとも数が多く、どこにでもいる魔獣で、一般的に魔獣と言えばコレだ。
どのぐらいの数がいるのかは不明だが、世界中に群れが存在するほどの数がいるはずだ。
そして、次に数が多いのは超魔獣と呼ばれる魔獣だ。
こちらはビルほどの大きさもある魔獣で、世界が滅びたのは、この超魔獣が暴れたからだとされている。
しかしその数は少なく、出会うことはほぼないと言ってよい。
そして、最大にして最強の魔獣・・・それが女王だ。
女王は魔獣を生み出すことができる唯一の魔獣で、世界に1体しか存在しない。
その魔獣はある日、トウキョウに現れたという。
そしてそのまま魔獣を生み出し、トウキョウを縄張りとしているのだとされている。
逆に言えば、トウキョウに近づきさえしなければ出会うこともない。
だから、トウキョウには決して近づいてはならないとされている。
「大丈夫、大丈夫。」
「なんで?」
「だってぼくは女王を倒しに来たんだよ?」
だからなんだというのだ。
「倒せなかったら・・・困るじゃん。」
「理由になってねえよ!」
この天使が一定の強さを持っていることは認めるしかない。
なにせ魔獣をパンチ一つで倒せるのだ。
その力は現代に残る兵器のほとんどを超えていると言っていい。
だが、だからと言って女王を倒せるとは到底思えない。
「そもそもノゾミは女王と戦ったことはあるの?」
「ねえよ!」
あるわけがない。
そんな人間はいない。
全員この世からおさらばしている。
「だったら勝てないかわからないじゃないか。」
「それは・・・」
そうだが・・・
「大丈夫、ぼくを信じて。」
確かに天使は魔獣をパンチで倒していた。
だったら女王ぐらい・・・
「いや無理だろ!」
危ない危ない。空気に流されそうになった。
「魔獣には家ぐらい大きなやつもいるんだぞ!」
「まったく・・・ノゾミは心配性だなあ。」
「そういう問題じゃないんだよ!」
そう言いながらも歩みを止めない天使。
逃げ出そうかと考えていると、少しだけ地面が揺れた。
「地震?」
のんきなことを言う天使に血の気が引く。
「ち、違う・・・」
ズシンズシンと断続的なゆれ。
このゆれ方は一回だけ体験したことがある。
「超魔獣・・・」
そういうのと怪獣の声が聞こえたのはほぼ同時だ。
「なんて?千代マチ子?」
そのせいで天使に正しく伝わらなかったようだ。
「超魔獣だよ!」
超魔獣、女王が最初に産んだとされる魔獣達だ。
その力は人類を圧倒し、倒すことは出来なかったと言われている。
「ああ!超魔獣ね!あれね!」
本当に知っているのか怪しいリアクションをする。
「ちょっくら挨拶してきますか!」
天使がそういうとズンズンと進んでいく。
「ちょっと・・・」
どうにか引き留めようと進んだところで、ソレと目が合った。
一つの目、不自然に大きな前脚、牙は口には収まっていない。
だが、最大の恐怖はその大きさだ。
家ほどもある巨躯がこちらを見ている。
「死んだ・・・」
「GYAAAAAAAAAAAAAA!!」
魔獣の巨大な腕が天を覆いつくす。
そして天が迫る。
すべてを押しつぶす天が。
「セイクリッド・スカイハイ!」
そんな天を天使のアッパーが吹き飛ばした。
「さすがに重いな・・・」
「・・・」
軽く腕を振る天使。
「大丈夫?ノゾミ。」
「怖えよ!」
「そうだよね・・・あんな大きな手に迫られたら怖いよね。」
「それを吹き飛ばす天使も怖えよ!」
「え?聖なる祈りの力だよ?」
だったら聖なる力も怖いよ。
「だけど、さすがにデカいか・・・」
「それを殴り飛ばしてたよね?」
天使がすぅと息を吸う。
「ら~~~~」
そして、次に出てきたのは、先ほど巨大魔獣をアッパーで吹き飛ばしたとは思えないほど、美しい声だった。
「うっ・・・」
それはただ伸びた声のようでもあり、また歌のようでもある。
その声の美しさに天も輝いているようだ。
「・・・輝いてる!」
訂正しよう。
輝いているようではなく、本当に空が輝いていた。
「ら~~~~~~~~~!」
天使の声が強くなる。
すると輝きが空で塊になった。
「え?え?」
そして、その塊が地面に降りる。
「成功したみたいだね。」
「なにが?」
光の塊は卵のような形になる。
そんな卵を前に魔獣も困惑している。
「聖獣の降臨。」
「聖獣?」
聞いたことがある。
聖獣、聖なる獣。
ユニコーンやペガサス、ドラゴンなどなんか白い動物・・・
それが聖獣だ。
「割れるよ・・・」
天使がそういうが、卵は中々割れない。
「あれ?」
天使が割れない卵を不思議そうに見る。
「GYAAAAA?」
魔獣も少し困っている様子だ。
「GYAAAAAAAAAAAAAA!!」
だが待つ義理もないことに気がついたのか、魔獣が卵に体当たりをくらわす。
しかし、卵はびくともない。
「おい!早く出てこい!なにしてんの!」
「GYAAAAAAAAAAAAAA!!」
キレる天使。
それをかき消すように叫び、卵を殴ったり、のしかかったり、口から破壊光線を放ったり、どうにか破壊しようとする魔獣。
「GYAAAA」
「・・・」
魔獣と目が合った。
そこには明確な「あれ?別に卵壊す必要なくない?」という気配を感じる。
「ええい!はよ出てこんかい!」
天使が卵をぶん殴ると、卵にひびが入った。
あれほど魔獣が攻撃してもビクともしなかったのに。
「まったく・・・寝坊助だな。」
そして卵が割れると、中から聖獣が出て来た。
「聖・・・獣・・・?」
中から出てきたのは、魔獣にも負けない巨大の生物。
背中はごつごつした装甲を持ち、尻尾にはハンマーのような塊がついている。
アンキロサウルス、そう呼ばれていた生物に似ている。
「え?あれ大丈夫?」
「大丈夫だって!これでも強力な聖獣なんだから!」
「そう言われても・・・」
顔を見てみると、なんだか間抜けな顔だ。
魔獣が「肉食ですけど?」みたいな顔だとすれば、この聖獣は「ぼけー」とした絶対に草食な顔をしている。
これならマンボウの方がしっかり者に見えるぐらいだ。
「いけ!キロオ!」
キロオ、それがアンキロサウルスの名前のようだ。
名前を呼ばれたキロオはぼけーっとしている。
「GYAAAAAAAAAAAAAA!!」
突然出て来たキロオに少し驚いていた魔獣だったが、すぐにキロオが敵だと理解したのか、キロオの横っ腹に向けて破壊光線を放った。
口から放たれた強力な光線は、かつて人類のビルや核シェルターすら破壊したと言われ、人類の要人の9割は核シェルターごと命を消し飛ばされたそうだ。
「キロオ!」
思わず名前で呼ぶが、彼?彼女?のことは良く知らない。
そんなキロオは破壊光線を受けて、ぼけーっとしている。
「キロオの装甲は最強・・・どんな攻撃も通さないよ。」
天使がどや顔で語る。
だがキロオはぼけーっとしている。
「・・・で?」
「ほら!戦えキロオ!」
天使がそういうがキロオはぼけーっとしている。
いっそすがすがしいぐらいだ。
破壊光線ではらちが明かないと判断したのか、魔獣がキロオへと襲い掛かる。
叩きつけ、のしかかり、噛みつきを試すも、キロオはぼけーっとしたままだ。
「あのさあ・・・」
天使が拳を作る。
「戦えって言ってんの!」
そしてキロオの装甲に天使の一撃。
「ぼおおおお!」
さすがに痛かったのか、キロオが痛みから逃げるように体を回す。
「GYA・・・」
その際にハンマーが魔獣に当たった。
すると魔獣が吹き飛んだ。
「やればできるじゃん。」
天使がキロオをねぎらう。
それに嬉しそうにキロオは応える。
じゃれつく天使と巨大生物はまるで神話の世界のようだ。
「あの天使のパンチ、破壊光線より痛いのか・・・」
いらないことさえ気にしなければ、神話の世界がそこに広がっていた。




