アラフォー冒険者、少女を目覚めさせる
「なんでこんな所に女の子が?」
俺は棺に近づき少女の様子を見た。
「息はしてる……、脈も打ってるし心臓も動いてる……、意識はあるみたいだな、でも眠っている状態……」
少女はどうやら生きてはいるみたいだが、目を覚まさない。
「この少女が何者なのか……」
俺は辺りを見回した。
「本棚か……、何かヒントになる物は無いのか……」
俺は本棚にある本を何冊か取って読んでみた。
殆どが錬金術の本とか魔導書だったが残念ながら俺には専門外なのでさっぱりわからん。
「ん……、これは日記か……」
本の中に日記があった、人の日記を読むのはちょっと気が引くが仕方無い、俺は読んでみる事にした。
そして読んでみて少女の素性がわかった。
この少女の名前は『サーリャ・ローワン』と言い、この城の元の主の娘だ。
城の主の名は『アーネス・ローワン』と言いやはり錬金術師みたいだ。
サーリャは生まれつき体調が悪くベッドの上で過ごす事が多かった。
アーネスはサーリャの病気を治療する為にこの城に移り住んだ。
しかし、努力も虚しくサーリャは危篤状態になってしまう。
なんとか命を助けたいアーネスはサーリャに仮死にする薬を飲ませた。
そして棺に時を停止させる魔法をかけた。
その間に治療薬作りに没頭した。
結果として治療薬は完成したのだが、その先が書かれていない。
「アーネスの身に何かあったんだな……」
日記を読み終えると1枚の紙が挟んである事に気付いた。
『この日記を読んでいる者へ、多分私は既にこの世にはいないだろう、誠に勝手な話だが棺に眠る娘サーリャを託したい、治療薬は既に完成している、それを飲ませればサーリャは長き眠りから目覚める。 サーリャの事をよろしく頼む』
メモの下には薬の在処であろう場所が書いてあった。
俺はその場所である床下の一部を剥がした。
すると液体が入った小瓶が埋めてあった。
「コレを飲ませればこの子は目覚めるのか……」
正直、どうしようかと迷った。
結婚もしていないのに女の子一人を育てる事が出来るのだろうか。
そして明らかにわかったのはこのアーネスと言う人物は訳ありだ、と言う事。
つまり、サーリャが目覚めた事は公にしたらマズいという事だ。
せっかくスローライフを楽しもう、と思ったのに厄介事に巻き込まれるのはゴメンだ。
「しかし、このままにしておくのも……」
色々悩んだ結果、俺はサーリャに薬を飲ませる事にした。
口を少しだけ開けさせて薬を飲ませた。
ゴクンという音が喉から聞こえた。
「ん……」
サーリャはゆっくりと目を開けた。