アラフォー冒険者、不動産屋に行く
翌日、宿屋を後にして俺は街の不動産屋へやって来た。
「いらっしゃいませ」
「家を買いたいんだ、良い物件はあるか?」
「ご予算によりますが」
「予算はこれだけなんだが」
俺は金が入った袋を机に置いた。
「中身を確認させていただきますね……、ふむふむこの予算でしたらこちらなんかどうでしょう」
袋の中身を確認した店員はファイルを取り出し見せてきた。
いざ提示され何件か見ていくとどれが良いのか迷ってしまう。
「因みにお客様のライフプランはございますか?」
「ライフプランか……、のんびり畑を耕しながら暮らして行けば良いかな、と思ってる」
「なるほど、スローライフをご希望なんですね、それでしたらオススメの物件がございますよ」
そう言って店員は別のファイルを見せてきた。
「コレって……城じゃないか? 俺は貴族じゃないんだが」
「こちらの物件は貴族が所有権を放棄した物なんですよ」
「放棄?」
「えぇ、なので現在は国が管理しており我々が委託販売をしております」
「ある意味、国のお墨付きが付いている訳か……」
「えぇ、好きな様に改築しても大丈夫ですし丈夫に出来ていますから災害にも耐えますし」
いくつかの物件を見せてもらったがその中で1つ気になった物があった。
「この城は?」
「こちらはですね、国内でも最も古い城なんです、古すぎて元々の所有者の記録が残っていないんです」
「なるほど……」
話を聞きながらも俺は何故だかこの城が気になっていた。
俺の直感が『ここが良い』と言っている。
……ただ、この直感が良い方なのか悪い方なのかはわからんが。
だが、こういう時は直感が大事だ。
「この城を買うよ」
「畏まりました、手続きにはちょっと時間がかかりますので1週間後にまたご来店ください」
こうして、俺は人生最大の買い物をした。