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月光はギャルに魅せられて

自分を呼び出した何者かのためにボランティア活動をするという大まかな指針が決まった今、残る項目は



▽ 名前設定 (変更不可)



のみとなった。



「せっかくなら転生記念で違う名前にしたいよねー

ちょー可愛いやつにしよー」



そう言って数秒目線を宙に漂わせる。


淡いシルバーカラーのカラコンで彩られた瞳が青空を映し出した。


しかし、なかなかピンとくる名前にたどり着かないようで時間と比例して眉間のシワが濃くなっていく。



「ってゆーか、この世界の普通の名前ってなに?

未来(みく)とか莉理(りり)とか可愛くていいなーって思ってたけど、周りローラ的な感じだったら気まずすぎるー」



こちらの世界に来て未だ誰一人として出会っていない彼女にとっては、そもそもこの世界の情報自体が不十分すぎるのである。


唯一の手がかりであった自分を呼び出した張本人達も姿を表さないままである。


彼女はもう数秒悩んだ後、おもむろに座り込み、地面を指先で撫でた。


静かな森の中に砂と砂の擦れる乾いた音が響いた。




▽ セメテリー村

不死屍(アンデッド)の住む小規模な村。

元は墓地だったが付近の鉱山で魔力石が大量に破壊された影響で死体に魂が宿り、不死屍が生まれた。

元来、不死屍はその見た目故に敬遠される傾向にあり、他周辺地域から迫害を受けている。

現在の村長は 個体名 : アルド


▽ 土

土属性の魔法によって人工的に作られたもの。


▽ 魔力石の破片

割れた魔法石の破片。

魔力は完全抜けているため、ごく普通の砂と変わらない。




「うわ待ってうち天才かも!!

地面、あんたもまじ天才すぎ!らぶ!」



水を得た魚とはこのことで、早速彼女は周囲の「動かない自然のもの」に狙いを定めて目につくものを触りまくった。


動かず感情を持たない地面は彼女にとっては貴重な情報が豊富に取れる宝庫となっていた。





それからしばらくして。




▽ ぐー〇る Lv. 5/99 未覚醒


というレベルアップを知らせる音がなったところで

ひとしきり情報を集め終わり、改めて自分の新しい名前と向き合い始めていた。



「とりあえず、なう村長アルドらしーから、せっかくだし海外っぽい名前つーけよ!」


「れいなって名前好きだからなー、要素入れたいよなー」



…………………………………………


「ルーナとか?

うわ!いいじゃんルーナ!

なんか女の子の味方って感じの名前的な感じするし!!」




早速画面に戻り、名前を設定し始める。


表示されたのはよく見る50音と濁音、半濁音、拗音、撥音が書かれたキーボードと、恐らく打ち込んだ文字が表示されるであろう細長い四角いスペースだった。


右下には 確定する という項目もあり、表示はすべてカタカナだった。


よほど名前が気に入ったのか鼻歌交じりに指を左右に動かし、「ルーナ」と入力する。


2、3回読み返して間違いがないことを確認した後、確定を押す。


指先が触れると同時に画面が眩い光を発し始めた。


思わず顔を歪めて目線を地面に逸らす。


しばらくすると、もうすっかり聞き慣れてしまった音声が脳内に響いた。





▽ 種族が確定しました。


▽ 不死屍の象徴である「月」の女神「ルーナ」の名前が入力されました。


▽ 召喚者+不死屍+月の女神 により属性が 「月」へと進化しました。


▽ 続けて種族が

不死屍・魂ノ伝導者(ソウルマスター) に決定しました。


只今より肉体適合を行います。




_____________________________________________





「おい、このままじゃ本当に全員消滅するぞ!」


「また魔力石が盗まれてた…もうここ数日で5回目だぞ…!」




もはや服とも言えないボロ布を纏った骸骨が、カタカタと骨を鳴らしながら訴える。


もう何日も魔力を供給していないその体は、全身骨がむき出しであるとはいえ更に痩せ細ったような印象を受ける。


元は眼球がはめられていた大きな穴から除く青白い光は小刻みに揺れていた。




「もうどうしようも無いのだ…

どんな手を尽くそうとも我々が不死屍であり、それが他種族の畏怖の対象となるのは変えられぬ必然なのだ。」




「だからってこのまま消滅してもいいのか、!

死体にも五感はあるし腹も減る!

不死屍で年をとらないと言っても子供もいるんだ

これ以上ひもじい思いはさせられない!!」




「分かってる…!!

だが魔法陣に魔力を使ってしまった今、俺たちにできるのは残りの魔力石を守っていくことだけなんだ…!」





言い争いに使うエネルギーこそ無駄であると察したのか、はたまたこの問題自体に終着点がないと勘付いたのか、不意に沈黙が訪れる。


表情こそ読み取れないものの、骨の軋む音がやりきれない気持ちを増長させていた。


村の面々の姿と倉庫の隅に追いやられるほど残り少ない魔法石の映像がぐるぐると頭を回り続ける。


もういよいよ本当に、消滅に向けての備えをしておくべきではないかと一抹の不安がよぎる。





と、その時。


不死屍の片方_______

村長であるアルドが首から下げているペンダントが青白く光り出した。


それは新たな長、救世主(メシア)の到来を告げる合図だった。



_______まだ、まだ俺達は死んではいない…!




アルドともう片方の不死屍、コールは互いに顔を見合わせ、弾かれたように魔法陣を描いた方角へ走り出した。






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