もう二度とないと思っていたトキメキ6
「事の始まりは3歳の頃」
「3歳!?」
恋を始めるだの、なんだと言ったからてっきり最近の話だと思ったから物凄く時を遡るからオウム返ししてしまった。
思ったよりこじれた話になるのではと身構える。
どんな話が来ても驚かない、そう決心する。
「光君は活発な子で何処へ行くにも私の手を引いてくれたの」
手を組んで思い出に馳せ、そう語り初めて、続きを言わない。
思い出をかみ締めているのだろうか、辞めてもらいたいのだけど。
「うん、それから?」
「終わり」
「終わり!?」
先を促すと、以上だと言われ、俺はもう何が何だか分からない。
「本当に申し訳ないんだけど、何を言ってるのか分からないし、何をしたいのかも全く分からない」
「そうね、説明不足だったわ」
説明不足過ぎて説明のせの字の、1画目で終わった感覚だぞ。
「その光くんが隣のクラスに居たの。最近気付いたわ」
「ああ、そう」
「リアクションが薄い!」
ビッュっと拳が飛んできて、寸前のところで回避する。
思い通りにならなくて手が出るなんてなんて野蛮。
クラスでの仮面はすっかり飛んでいき、メッキも剥がれ落ちたその素顔はジャイアンだったか。
「手が出てる、手が!!」
「失礼」
やっぱり人は信じられない。つくづくそう思った。
そして、光君よ。強く生きてくれ。
多分そのうちこのモンスターが君の元へ駆けつけるだろう。
顔を知らない光君に強く同情しながら、どうこの人を落ち着かせたものかと苦心する。
ため息くらいは許して欲しいものだ。