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お座敷童子編01-11『護封七家の頂点』

side 彩葉


神とは。

悠久を過ごす者。

その価値観は有限に縛られた人とは比べるべくもない。


神とは。

比類なき者。

その神通力は有限に縛られた人とは比べるべくもない。


神とは。

俯瞰(ふかん)する者。

それは人を観ている。


人とは。

か弱き者。

触れてしまっては壊れてしまう(・・・・・・)


不文律が生まれた。

神と人は必要以上に交わってはならない。






今さらではあるが彩葉の立場は高い。

だが『護封七家(ごほうななけ)封じられた(・・・・・)夜行家の当主』であり、それは『封じた者』がいるということである。

つまり夜行家を封じた『(すめらぎ)家』こそが『護封七家(ごほうななけ)』の上に君臨するのだ。


一度、整理してみよう。

大きく三つ(・・)の勢力が存在しているとする。


『神々』

『陰陽庁』

『人間社会』


以上の三つだ。

ここでいう『陰陽庁』には(すめらぎ)家を頂点とした『護封七家(ごほうななけ)』及びその『分家』が所属する。


さて、まず大前提として『神々』は直接的に人間に関わらないよう自らを律している。

だが何事にも例外があるものだ。

神々によるそんな例外(むちゃぶり)が発生したときに仲介役となるのが(すめらぎ)家だ。

彼らは神々の要求を聞き、『護封七家(ごほうななけ)』に解決を依頼(まるなげ)する。


絶対に神々を『人間社会』と関わらせてはならないのだ。

ここに例外はない(・・)


そこからわかるように、『(すめらぎ)家』及び『護封七家(ごほうななけ)』は『人間社会』に含まれない。


もしも吉祥天が『(すめらぎ)家』経由で『夜行家』に依頼していたならば話は比較的スムーズに進んだだろう。

少なくとも一目を(はばか)って不法侵入じみた真似をする必要はなかったし、彩葉(いろは)の神経をゴリゴリとすり減らすこともなかったはずだ。

だが吉祥天としては(主に肉体的な)事情があり、直接夜行家に出向かざるを得なかった。

強いて言えば『吉祥天』『(すめらぎ)』『夜行』の三者で話し合いの場を設けていれば・・・といったところではあるが詮ない事か。


少々前段が長くなってしまったが、彩葉が今こうして『(すめらぎ)家』の談話室で黄昏(たそがれ)ているのは、そういった事情である。


「本日は急な連絡にも関わらずお時間を頂戴できたこと、誠にありがとう存じます。」

「ひさしぶりやね、彩葉殿。襲名式以来か?」

「ご無沙汰しております。」

「うんうん。急ぎなんやろ?前置きは置いといて、本題話してええよ。」

「お気遣い有り難く頂戴いたします。

まずは順を追ってお伝え致します。」


彩葉は吉祥天の来訪とその目的について時系列に沿って余すことなく伝えた。

一部臨場感を盛って伝えたのは、そうしたほうが喜ぶ(・・)からだ。


彩葉の正面上座に座すのは皇家当主である『皇一麿(かずま)』だ。

恐らく四十から五十代前半であろう線の細い優男で、その眼差しは柔らかい。

だが魑魅魍魎(ちみもうりょう)どころか目を合わせることすら畏れ多い神々と日常的にタフ(・・)な交渉を務めているのだ。

その一点だけで決して侮れるものではない。

彩葉は神を相手にしているという心持ちでこの会談に臨んでいた。

それはあながち間違いとは言えないだろう。


「難儀したねえ、彩葉殿。」

「畏れ多くもかの吉祥天様にお目もじ頂けたのですから、末代までの名誉と致します。」

「ふふ、謙虚やなあ。ほんまに十六なん?うちの子に見せてやりたいわ。」

「恐れ入ります。」


「機会があったら教育したってや。

ま、それはいいとして吉祥天様の件やな。

今回は吉祥天様、御自(おんみずか)らやのうてあくまで分体やしな、そう目くじらを立てんでもええやろ。

とはいえ、や。仮にも『天』やしなあ。

その影響は大きいと言わざるを得ん。

というのがわいの考えやが、ここまではええか?」


「はい、同意します。」

「よっしゃ、ほんなら条件は三つ。

吉祥天様ご自身(・・・)で『天部』から正式に許可を頂くこと。

依り代の座敷童子が復帰するまでの期間とすること。

大規模な術式の使用をご遠慮頂くこと。」


彩葉は小考し、妥当であろうと判断した。


「寛大なご配慮に感謝します。」

「まー、何年になるかはようわからんけど、気張り(・・・)や。」

「・・・微力を尽くします。」

「ほな今日中に、起請文(きしょうもん)にして届けるさかい。」

「お手数お掛けします。」


「ところで彩葉ちゃん(・・・・・)


ここから先は夜行家ではなく彩葉個人との話ということだろう。


「うちの末子と見合いしてみん?」

「有り難いお話ですが高貴なる血筋であらせられる御家は、夜行家如きではあまりにも釣り合いません。」

「いやいや、『表』ではないもん(・・・・)として扱われとるし問題あれへんよ。」


公には認められていないが、『皇家』は確かに皇族の遠い血脈だ。


「かの神武天皇は天照大御神の五世孫と聞き及んでおりますれば、余りにも畏れ多く。」

「うーん、手強いなー。」


彩葉は苦笑する。


「重ねて申し上げるならば『護封七家(ごほうななけ)』の秩序が乱れ兼ねません。」

「全く、難儀な世の中や。」

「表も裏も、でございますね。」

「しゃーない、撤退や。

とはいえ彩葉ちゃんも適齢期やし、ええ話はないんか?」

「愚弟のこともありますれば。」


「伊織くんか。・・・悪いんか?」

「未だ目処は・・・」

「すまん、悪いこと聞いてしもたな。

彼のことでなにかできることがあれば遠慮なく声かけてな。」

「御気遣い感謝いたします。」


「ほな話は仕舞いや。

落ち着いたらいつでも遊びにおいでや。」

「はい、本日は急に押し掛けたにも関わらずご対応いただき、ありがとうございました。」

「ええんや、そんなん日常茶飯事やで。」


皇一麿との会談は滞りなく終わった。

だが彩葉の心は重かった。


|(まさか皇からの見合い話が出るとは思わなかったわ。

今まで七家からはそういう(・・・・)お話はなかったけど・・・

皇に気を遣っていた?抜け駆けを咎められないように?

だとしたら今後は増える可能性があるわね。

どうしようかしら。)


彩葉は面倒事が列をなしてやって来そうな予感に今度こそ小さな溜め息を吐いた。

______

ちゃむだよ? >_(:3」∠)_

 ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄

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