元鞘なんて少々虫が良すぎるのではないでしょうか?
一番最初に書いた作品なのでおかしな表現などもあると思いますが暖かい目で見ていただけると幸いです。
私はリリー。悪役令嬢に転生した。いやもう元悪役令嬢か。
昔は誇り高きアリーナ公爵家の令嬢のリリアーネ・サフィ・アリーナだった。
でも追放された。阿呆でボンボンな王太子に。
私は別に悪役令嬢だからといって特別なことなんかしなかった。ヒロイン虐めたり、王太子に執着したりなんかも。でもなんか婚約破棄された。意味がわからなかったけど好きでもなかったし婚約破棄に応じた。
そしたらなんか身分を剥奪されて庶民になった。けど、別に困らなかった。父様と母様からは一年はゆうに暮らせるようなお金はもらえたし、前世ではレストラン開いてたからその知識を使ってカフェを開いて暮らしている。
「リリー?空いてるかい?」
「はぁ〜い空いてますよ〜!」
そう言いながら店に入ってきたのはアル。
本名はアルバート・クライスって言って、隣の靴屋で働いてる。銀髪でサファイアブルーの目をしててめっちゃモテる。ちなみに私、この人に片思いしてるの!きゃぁ〜、、、ってそんな事どうでもいいや。準備しなきゃ。
「リリー?また何処かへ行ってるよ?」
「ごめんアル。今準備するから。」
そう言いながら私は厨房へと入る。するとアルも入ってきた。
「っちょ、アル?なんではいってくるの?」
「いや、手伝おうと思ってさ。大変でしょ。
最近儲かってるし。」
そういたずらっぽく笑ってアルはエプロンをつけた。
んんっ〜カッコイイ!!やばいドキドキする。
「おはようリリー。今日もかわいいね。」
「おはようございます。クリスさん。まだ開店してませんよ。」
「んもう、つめたいなぁ〜」
そう言って笑うのはクリスさん。向かいのパン屋さんの息子でサラサラの金髪、紫色の瞳でモテる。でもとってもチャラくて事あるごとに私を口説いてくる。
「リリーさん!おはようございます!今日も一日よろしくおねがいします!!」
元気よく挨拶してるのはアリス・スローリアちゃん。ここで働いてる子で、栗色の髪、栗色の瞳の小さく可愛らしい女の子。
「おはよう。アリスちゃん。今日もよろしくね。早速だけど下準備、お願いできる?」
「はい!」
そう言ってアリスちゃんは厨房に入っていった。
「アル〜、クリスさん〜ちょっとまってて。」
アルとクリスさんに一言言ってから私も下準備をしにいった。
〜〜〜
「いらっしゃいませ〜」
私はそう言いながら料理を作る。
「アリスちゃん?これ2番テーブルにお願いね。」
「はぁい。いらっしゃいませ〜こちらへどうぞ〜」
今はお昼どき、一番忙しくなるときだ。私もアリスちゃんも慌ただしく働いている。
「注文いいですかぁ〜?」
「はぁい!」
あちこちで注文をお願いする声が聞こえる。
「相変わらず賑わってるねぇ」
「リャーナさん!コリナさん!」
「やぁリリー空いてるかい?」
そう言いながら入ってきたのはリャーナさんとコリナさん。この二人はカフェを開くときに色々とお世話になった人。
「まぁいつもので頼むよ。」
「はい!」
そう言って私はビーフシチューを用意する。この店で一番人気なのはビーフシチュー。前世でおばあちゃんに教えてもらったのをカフェで出したら大人気だった。
「ビーフシチューおかわりおねがいします。」
そう言った声がたくさん聞こえてきた。
☆☆☆
「ふぅ、疲れたぁ〜」
「お疲れ様。今の時間帯はあまりお客さん来ないから、ちょっと遅いけど、はい、お昼ご飯の賄い。」
「ありがとうございます。」
満面の笑みで、賄いを食べるアリスちゃんを横目に私はアルに言った。
「ありがとうね。手伝ってくれて。」
「ううん。別にいいよ。好きでやってるだけだし。」
アルはそう言った。するとクリスさんがニヤつきながら言った。
「またまたぁ〜ほんとはリリーちゃんにあいt」
「ちょクリス!」
そう言ってアルはクリスさんの口を押さえた。なんでかはよくわかんないけど。
そんな二人を見ながらリャーナさんとコリナさんはニコニコしていた。
「ふふっ仲がいいのね。」
「本当だな。」
顔見合わせながら笑っている。ほんとぉ〜にお似合いだと思う。私もいつかアルとそうなれたらな、なんて。まずへ告白からだろうけど。
カランカラン
ん?こんな時に誰だろう。いつもはこの時間だれもこないけど。みんなも不思議そうな顔してる。
するとお客さんは入ってくるなり私の手を取って突然
「俺の婚約者になってくれないか?!」
と、言ってきた。うん。意味わからん。それにどこかで会った事あるかも。よぉ〜くみてようやくわかった。王族特有の銀髪でサファイアブルーの瞳、そう王太子だ。私を振った張本人。本名はスティーブ・クライス・サフィーナ。いやぁ記憶から抹消されてたよ。
「・・・いや、あの子はどうしたのよ?」
「?あの子?」
「そうあの子、え〜っとそう、アリアンちゃん。あの子と婚約したんじゃ無かったの?」
「アリアンは・・・」
なぜか王太子は口籠った。あっ、アリアンちゃんとは、このゲームのヒロインにあたる子で王太子の婚約者。
「なんで?答えられないなんてことないでしょ?」
「あっアリアンとは別れたんだ。」
そう言って王太子は話し始めた。その話はめちゃめちゃ長く、しかも所々に“可哀想な俺!”といったような発言があったので割愛し、要約すると、アリアンちゃんは私が追放されると王太子の婚約者になったそうだが我儘で横暴、浪費をしまくるくせに王太子妃になるための勉強はまったくしない。だからすぐに婚約破棄されたらしい。だから回り回って私をまた婚約者にとなったわけか。
「いや、あのわた・・・」
「我が兄ながら恥ずかしい。婚約者がいながら浮気したから王位継承権を剥奪されたんでしょ。で、もう一度リリーを婚約者に出来たらまた王太子にしてやるって言われたんでしょ。」
「うぐっ」
なるほど。もう“元”王太子なのか。
・・・ん?兄?
「あっあっアル?」
「どうしたのリリー。」
「兄ってどういうこと?え?」
私が戸惑ってるとアルがクスッと笑って、
「言ってなかったね。俺はアルバート・クライス・サフィーナ。この国の王太子だよ。」
えっえっうそぉ〜。アルって王太子だったのぉ?・・・いや待てよ。アルってたしか銀髪でサファイアブルーの瞳・・・・って王族の印じゃん。なんで今まで気付かなかったんだろう。まさに恋は盲目だね。え?違う?まぁいいや。するとアルが私の前に膝をついててを差し出して言った。
「突然で申し訳ない。リリー、いやリリアーネ、俺のいや恋人になってくれないか?」
えっうそぉ!?マジで嬉しい。生きててよかったぁ。
「はい。喜んで。アルずっとずっと好きだったよ。大好き。」
もちろんYES。だってもうほんとぉ〜に好きだったもん。
「リリー、俺も大好きだよ。」
そう言ってアルが抱きしめてほっぺにキスしてくれた。私もギュッと抱きしめ返す。
気がつくとみんな微笑みながらこっちを見てる。うぅ恥ずかしい。
「おい!」
そんな甘々で幸せいっぱいの空気をスティーブの声が壊した。
「リリーは俺の婚約者だ!」
なんて変なことを言ってる。私ちょっとナニイッテルノカワカンナイ。
「おい、あに・・・スティーブ。リリーのことを気安く呼ぶな!さぁリリー行こうか。」
アルは私の腰に手を回して抱き寄せると店を後にした。
そうすると一気に現実が戻ってきた。まず第一にお店のこと。次にアルにタメ語だったこと。知らなかった時はいいとして知ったあともタメ語じゃまずいということが頭をよぎった。え?“元”王太子はって?あいつはいいよ。タメでも。ふったのはあいつだし、頭が上がらないみたいだからさ。
「え?お店・・・アルじゃなかったアルバート殿下お店はどうすればいいんですか?」
私が戸惑ってると、アルは優しく微笑みながら
「クリスに任せておけばいいだろ?散々リリーにバラそうとした罰だ。あとアルでいいよ呼び方。リリーには愛称で呼んでほしいから」
「いや、さすがに王族のお方に敬称なしじゃまずいですよ?!」
「ん〜じゃ、アル様。」
「アル様・・・ギリギリ許容範囲です。でもギリギリですよ?!」
うーんアル様呼びは大丈夫だよね?でも私庶民だし不敬罪になるかも?うーん・・・
「リリー」
「はい?」
「二人きりの時は敬語はなし。アル様呼びもダメ。ちゃんとアルって呼んで?」
なんてことをキラキラした笑顔でそう言われたので心臓が死にました。私がキュン死してるとアルがクスッと笑って
「リリーは可愛いなぁ。」
と言って頬にキスしてくれた。突然のことだったから私は真っ赤になってしまった。
「アル様!こういう不意打ちとかやめてください!特に人がいる時は・・・」
「なんで?」
「はっ恥ずかしいからです・・・ってもう!」
私は恥ずかしくなってアルのことをペチペチ叩いてるとアルがその手をとってグイッと自分の方へと引き寄せた。そしてアルの方へとよろけた私をアルはギュッと抱きしめた。フワリとアルの使っている男性用の香水の匂いがした。
「ん?!」
びっくりして見上げるとアルの頬が赤く染まっていた。そしてゆっくりと身体を離すと頭を撫でながら
「リリーは俺を惚れさせるのが上手いみたいだ。」
と言った。私は良くそんな冗談が言えるなぁと考えていた。
と、そのときガタガタと大きな音がして、スティーブが出てきた。、、、え?呼び捨て?
いいっしょ別に。
スティーブはなにか叫びながらおいかけてきた。
・・・・・・はぁ
とりあえずスティーブに言いたい。
元鞘なんて少々虫が良すぎるのではないでしょうか!!
読んで頂きありがとうございました