才能
才能才能才能才能才能
才能が在る人間と無い人間。この世にはその二つしかない。俺は、後者だろう。才能が無い奴は生きてる価値もない。負け組だ。だから、俺は、自殺する。自殺をする奴はみんな、才能の無い奴だ。首吊りだ。俺がする自殺方法だ。カーテンを掛けるところに、ホームセンターで買ってきた縄を掛け、扉の上の部分に反対側を掛けて、扉を閉める。さらに、真ん中に輪っかを作る。輪っかを作る際には別の縄を結んだ。これで死ねる。後は輪っかに首を入れて椅子を蹴るだけ。よし、死のう。俺は飛び込んだ。
「ウッ、ググ、ア、アア、ハァァオァゥ」
足をバタつかせる。なので爪先を張る。苦しい。けど、死ねる。散々な俺の人生が終わる。
小学校の時は名前を馬鹿にされた、中学の時はイジられた。高校の時なんて、思い出すらない。っても三日前に卒業したばかりだがな。それも終わる。死ねる。才能の無い俺は、生きる才能も無い俺は、死ねる!
「グアぁ」
・・・は? 何が起きた? もしかして、落ちたのか? 嘘だろ。ふざけんなよ。死にたいのに。なら、別の方法だ。カッターナイフで首を切ってやる。
「ハァハァハァハァ、フッ!」
痛い痛い、い痛い。血が、血だ。でたでた、死ねる。あれ? 何で死ねない? なら、薬だ。大量の薬を飲めば死ねる!
「フゥ! ハァ、イッ」
トイレトイレトイレ!
何で、何で死ねないんだよ~才能の無い俺なんて~死んだ方がいいだろう~
「ア? そうか、在るのか。才能が。俺には、死ねない才能が!」
俺にも在ったんだ! 才能が! 負け組じゃない! 生きてて良いんだ!
「ヤッフ~イ!」
最高! 最高! 最高! 最高~!!! 俺、最高~!!! 才能が、在る~! んだよ、人生明るいじゃん! 先ずは金だよな! 生きるためには金!
「それで、うちでバイトすんの?」
「はい! 深夜でもいけます!」
「・・・じゃ深夜ね? でもさ、変な客多いよ? 本当に大丈夫? コンビニより、もっと良いとこ在ると思うけどな~?」
「いえ、大丈夫ッス!」
働けるなら、何でもオーケーです!
「今からね」
あれから一週間経った。レジ打ちも出きるし、彼女を自慢げに話す無能な猿の対応も出きるようになった。それに、友達もできた。同じ時間帯に入ってきた女の子。年上だけど、メッチャ優しい。俺、自殺しないで良かった~
「ねぇ、今日さ遊びにいかない?」
え? マジ? 誘われたんだけど! 最高じゃん!
「何時に行きます?」
「帰って寝てから行きたいから~二時くらいで良い? それから駅集合ね?」
俺も帰って寝たいから、うん。ちょうど良いな!
「大丈夫ッス!」
「んじゃ私は先に上がらせてもらいま~す。早く上がりなよ~」
バイトが終わるまで後、十分。耐えるぞ~
「遊べるなんて夢みたいだな~」
俺は、帰りながら空を見て言う。友達なんて、ろくに居なかったし。つか、デートじゃね? 告っちゃおうかな~それも、良いよな。アッでも、振られたら気まずいよな。告白が怖いのってこう言うことなのか。はぁ~でも、楽しみだな~俺も速く帰って寝て、駅に行こ。俺、今、最高じゃん。生きてて良かった~死ななくて良かった~幸せだ~
「ん? ガ、え? ウウ、あれ? ブハッ」
え? え? え? 何? 倒れた? 誰か走ってく、それからあったけぇ。血だ、血が、出てる。刺された? 何で? でも、あれ? 俺は、死ねない才能が在るんじゃ、他人には作用しないとか? あ~あ。違うな。違う違う違う違う違う違う違う違う、違う。
「苦しみたくないな、もう少し、縄、緩めよ」
「浅くても、死ねるだろ。奥に指したら、痛いし」
「ウエ、ハァハァハァ、吐いちゃった」
俺、才能が無い。元から無い、なのに、俺は、あ~あ。最悪だ。
[取り調べによると、容疑者は 「俺には、人を殺す才能が在るんだ!」 等と供述しており―――]
ヤッフ~イ!