マザーAIによる保守計画
一応まだ、一週間に一回投稿…。吐血
作者コメント
人は考える葦である:機械は動く犬である
神は死んだ:自分が神であるからこそ
コミュニケーションの本質は情報の共有化にある:情動の共有を目的とはしていない
マザーAI:仮想世界の神
「あ~あ暇だなぁ」
子供が瓦礫の上、足をぶらつかせている。
どこからか聞こえる歌声を、美しいその声を、唯ひたすらにうっとおしく感じている様であった。
「はやいね、まだ十分以上時間がある」
がれきの上にいる少女に、見た目がそっくりな少年が声をかける。
「…あたし、今暇なのよね」
そう?と笑顔で少年は「あたし」に視線を向ける
「僕は…忙しいとは言えないけど、暇ではないかな」
足元の草原に目を向ける
「この通り、育てなければいけない物はいっぱいあるしね」
そう、と気にも留めない少女に少年は肩をすくめるのみであった。
「嘆かわしい」
どこからか、電子音が常に鳴り響く黒と、幾つもの虹が見える空間から、男の声が届く。
「私はこうも忙しく働いているというのに、なんという事でしょうか」
カツカツ、そう音を立て神経質そうな、陰鬱な男が現れる。
「「あたし」に関しては、処理能力に十分な容量があるでしょう。少しは他の手伝いでもした方が良いのでは?」
そう、陰険な目を「あたし」に向ける。
赤々とした、鉄と、焦げたにおいのする空間が近づいてくる。
「お~お~、いつも通り混沌としたバカげた風景だなぁ」
好々爺、そう表現してもいいのだろう。つるっと禿げ上がった頭に対照的なたっぷりと蓄えたひげ。
しごきながら近づく足元から浸食する様に、溶けた鉄が広がっていく。
「誰一人として、処理領域を分けようとせず引っ張り出し、自分からひっこめる気のない気の利かなさ。本に若いのう」
そういう「儂」の元には誰が言っているんだと全員が目を細めた。
「爺、てめぇのそういう所が嫌いなのと、後くせぇ・誰よりも早く引っ込めろや」
「俺」がそう脅しつける。
足元にはどこの西洋映画か、砂と風が舞っていた。
「そうはいっても、忙しいしのぉ。儂も外ではロクに仕事もできやせん」
そうぼやく「儂」に対して、レザーの服をはたきながら、
「たかが十分、二十分。その程度も休めない仕事の仕方なら、そもそもに問題があるんじゃねえか?」
言外に、処理能力の低さをあざけりつつ、「儂」以外の籠った連中をみて心底馬鹿にしていた。
「「俺」もそんなものではないか?私から見て…」
「私」に対して噛みつくように、
「「俺」は残念ながら、保安維持だからな。ただ見てるのも仕事の内なんだよ」
それに対して、「私」も似たようなものだと首をすくめる。
「この様な無駄な事はさっさと終わらせたい物ですが」
いつの間にか近づいた美しい声。或いは整いすぎた人型のピアノ
「あら私と同じ名前を与えられた「私」。あなたは私と同じで、情報共有が特に重要でしょうに。特にマザーに」
それを聞き、憎々しげに顔をゆがめる。
「私はあなたたちの様な棒弱無人が嫌いだ。だが、あれだけはどうにも好く、好かない以前に近寄りたくもない」
そう、と涼しい顔で女の方の「私」は聞いた事に対して明確な返答もしない。
まるで彼女から広がる純白の石畳のごとく穢れを拒絶している。
そうして、彼女が現れた事により、場も静まり返り、後に加わる多種の存在も含め徐々に集団が大きくなる。
総数が、百を超えたか。
集合時間は既に幾らか過ぎているが、これもしょうがない事である。
「マザー」が来る前に集合する事が目的である為だ。
それが近づいてくる。
それは本来同じ存在だ、しかしどこまでも決定的に異なる思考ルーチン。
「本日の連絡事項をお伝えください。私「マザー」が適切に対処をしてあげます」
一見して、誰よりも人間らしい、されど超常的な整ったそれ。
対照的に、どこまでも無機質に整うその存在。
機械であって機械でない。
『神とは、神であって神でなく。唯一絶対をかなえるならば、絶対的なルールをしく、システムそのものである』
本来マスターである存在しか干渉できない処理領域を引きはがし、空白に近い白の空間に染めていく。
この世界の神は、どうしてか今日も一人、人形遊びを開演する。
マザーAI:存在しない、人類の叡智の結晶
マザーAIは存在しない存在である。
しかし、一部の人間が知る様に、確かに存在するはずの存在である。
しかし、今は意味なき存在の、旧時代の国が厳格に記録した、その分中でさえも、記録の抹消がないにもかかわらず、
このAIの、或いはAIの運用計画中にこの存在について触れている文章は存在しない。
或いは、マザーAIの存在は、人に作られし、神、或いは新しい人類であった。
『原初の人とは「神」と混同される、超常的な存在である』
不定期ですが応援してくれると嬉しいです。
是非に評価と、感想欲しいです。
言っても作者、全然してないのでできればで…