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死霊使いへの感謝

「死霊使いベルモンド殿!」


 人質になった村人たちが集まってくる。


「危ないところを助けていただきありがとうございます! まさか、国王軍魔術研究所首席さまだとは気づかず……」


 皆が恩に対して頭を下げているが……ベルモンドには興味は無い。

 それどころか、逆だ。責めるのが当然だ。


「連中は俺を殺すことが目的だった。感謝される謂れはない」

「ですが……」

「俺が来なければ家屋は焼けずに済んだであろう。田畑も無事だった」


 ゆえに、と。ベルモンドは魔法を使う。


「全てを元に戻す。それで許してはくれまいか」


 暗殺者たちの死体を再び蘇らせ、家屋の修理に働かせる。

 田畑は地の魔法や植物の魔法で。

 殺されたばかりの家畜であれば、得意のネクロマンサーとしての魔法で蘇らせれば良い。ちょうど死んだばかりの新鮮な遺体は、古い遺体よりも蘇らせるのは簡単だ。死したばかりは魂もすぐ近くに遺っているためである。

 アンデッドとしてではなく、死者の完全なる蘇生。

 家畜たちは、先ほどまで死んでいた事実も忘れ、呑気にエサを食べている。


「おお、全てが戻っていく……! ありがとうございます……! ベルモンドさま!」


 ベルモンドはただただ居心地が悪かった。

 そんな顔を察したのか、エルはくすりと笑う。


「ベルモンド様も、時にはそのようなことを言うのですね」

「これが、俺への恨み言であれば、興味は無い。が、誤った態度は正さなければならない」

「誤った、ですか?」

「俺が来なければ、無事だった。ゆえに俺を憎まなければならない」

「……ですが、ベルモンド様がいなければ、彼らの無事は分かりませんよね?」

「それは確かに分からない。が、憎しみを抱くのが普通だと教えたかった」

「なぜですか?」

「研究者は誤りを訂正しなければならないからな」


 だから、感謝などおかしい。

 そんなものよりも恨み言を吐き、「元通りにしろ!」と糾弾するのが自然だ。

 憎しみをぶつけられるよりも、感謝の言葉を告げられる方が不愉快で、それでいて居心地も悪い。


「ネクロマンサーさま! このような村を助けていただきありがとうございます!」

「……そういう態度が困る」


 村人から感謝の言葉を幾度とかけられれば、いつものように「どうでも良いこと」と吐き捨てることはできない。


 ひとしきり感謝の言葉を告げられた後、ベルモンドは死者の蘇生を行う。

 黒翼の平定者の遺体。それもリーダーの男のだ。


「う……俺は、どうなった……?」


 男は死したばかりで、己がどうなったのか。死んだことにすら戸惑っているようであった。

 ベルモンドは蘇ったばかりの男の頭を鷲掴みにすると、不敵な笑みを浮かべる。


「こいつは、国王陛下の手土産にしなければ、な」


 ベルモンドが慈善で人を生き返らせるわけがない。

 この男を蘇らせたのは、余計なことをしてくれた国王への忠告をするためだ。


「な、なにを……」

「国王陛下に、いらぬ世話だと脅して来い」


 暗殺者たちのリーダーであった、男はフラフラとした足取りで去って行く。


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