表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
1/10

危険なネクロマンサーの追放

「ベルモンド……お、お前は追放だ……!」


 国王陛下は男を睨み付ける。

 その顔には恐怖。底知れぬ畏怖。

 汗を流し、したたり落ちる。

 その一挙一動にすら……誤りがあってはならぬと、大海をも泳ぐが如く目を泳がせる。


「陛下。それはクビということですか?」


 男は蛇のような瞳で自国の王様を睨み付けた。

 その声は低く。かといって、感情を感じさせない。

 何よりも空気が押しつぶしそうなほど重たい、と。

 幾度もそう評されてきた。


「そ、そうじゃ! 追放、クビじゃ! 今すぐに荷物をまとめて出て行くが良い!」


 国王の顔を見れば分かる。

 死と懸命に戦っている顔だ。

 ベルモンドにとって、ひたすらどうでも良いこと。


「では、陛下の御心のままに」


 さらりと言ってのけたベルモンドに、国王の臣下たちが慌てて口を開く。


「ど、どうかお待ちください! 国王陛下!」

「ベルモンド様は、決して……追放してはならぬお方!」

「死神の死霊使いなのです!」


 ベルモンドは臣下たちの言葉になど、興味はなかった。

 一々、決まったことに対して抗議をしたところで、時間のムダだ。


「だ、黙れ……! キサマらに分かるか……! この男が……! この男が……!」


 ゴクリと王様は唾を飲み込む。


「いかに、“恐ろしい”存在なのかを……!」


 死神の死霊使い。

 ベルモンドにとってひたすら。心底どうでも良い二つ名だった。


「あらゆる死者をよみがえらせ! あらゆる死者からあらゆる能力を吸収したかのものは、もはや……人間ではない!」


 震える唇を見て、ベルモンドは哀れという言葉しか抱かなかった。

 人間、ここまで心が脆弱なものなのかと。


「もはや……キサマは魔王、だ……!」


 ベルモンドはふと唇の端を上げた。


「なんだ。俺をその程度としか見ていなかったか」

「なっ……!?」

「陛下。それでは俺はこれで」


 ベルモンドは静かに王宮から立ち去っていく。

 荷物など、一つ足りとも持たずに……。




 臣下と共に残された国王は頭を抱える。


「お、恐ろしい男じゃ……! 真に……あやつは死神じゃ……!」

「お、恐れ多くも陛下! あの者を野放しにすること事態が国家の脅威となるのでは……!」

「分かっておる! 分かっておるのじゃ……! じゃが」


 怖かった。

 ただただ、それだけだ。

 童ですら考えぬおろかさであると分かっている。

 だが、それ以上に、全てを呑まれるようだった。

 奴は……“闇”だ。

 命を奪い、全てを死へと誘う、闇。


「陛下! わ、私はあの者が、国家に反逆することはなかったと存じます!」

「私もです! あの者は、闇魔術の研究さえさせておけば満足だったハズ!」

「死、死ぬのは嫌だ!!!」


 国王を責める者、恐怖のあまり半狂乱する者。

 そして、それ以上に……国王は恐怖の感情に支配されていた。


「だ、黙れ! 逆らう者は皆殺しだ! ワシの決定は国家の決定である!」

「へ、陛下……!?」

「国家の脅威? 人類の脅威? ははは! ワシにはなんのことだか分からぬわ!」


 狂ったように笑う国王は、もはや冷静だった時の面影はなかった。

 それほどまでに……ベルモンドという男を恐れていたのだ。

 そこに愚かさも何もない。

 ただ、野性的な本能に身を任せ、死という分かりやすい避けるべき事態から、逃れたに過ぎない。


 この日を境に、国家は地を這うに等しい衰退が始まる。

もし、話を読んで面白いと思えば感想、ポイント、お気に入り登録などよろしくお願いします!

評価をするにはログインしてください。
この作品をシェア
Twitter LINEで送る
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

この作品はリンクフリーです。ご自由にリンク(紹介)してください。
この作品はスマートフォン対応です。スマートフォンかパソコンかを自動で判別し、適切なページを表示します。

↑ページトップへ