Hello again ~昔からある場所~ -3
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中川の企画で 校内は沸いていた
歓迎の準備が 進められている
どうして そんなに と思う間もないほど 校内は 賑わっている
屋上から 見下ろしていると 学園祭か体育祭でも あるようだ
仙貴は そんな校内を ひと通り見回すと 遠くの景色に 目を向けた
風は穏やかだ
遠くの景色は かすかに紅く 染まりつつある太陽の下で 広がっている
この風景が好きだ
遠い 忘れられない 記憶を 思い出させてくれる
現在も この空の下で 生きている
たぶん
忘れられない 過去
想像もできない 現在
校内は 活気を帯びている
仙貴の心などとは 無関係に
* * *
―――パーティ?
夕食の食卓で ミキが口にすると しのぶが 敏感に反応した
―――パーティって 緑川さんところで?
―――うん 来週土曜日
由美子ちゃんが帰ってきた お祝い なんだって
―――それは あたしたちも 出ていいの?
―――うん 由理子さんから みんなに伝えてって
―――いいのかな
―――いいんじゃない
朝夢見としのぶは 顔を見合わせながら 頷き合った
仙貴は ぼんやりと そんな言葉を聞いていた
―――仙貴君もおいでって
―――あぁ
小さく応える
ミキは 何も気にせず 話し続ける
今日 仕入れたばかりの話を
―――由美子さんってね……
女三人 姦しく 騒いでいる
仙貴は もう聞いていない
ただ いつも思うこと
―――自分だけが 幸せなんじゃないだろうか
忘れてはいけない 過去の記憶
抱き続ける 淋しい思い出
きっと 幸せだろう まゆみも
騒がしい三人を 眺めながら 思いを 馳せる
きっと 幸せに 違いない
* * *