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Hello again ~昔からある場所~ -11


 ―――仙貴君

 優しい囁き

  耳に心地いい

 ゆっくりと振り返る

 そこでは 由起子が 心配そうに見つめている

 笑んでみる

 笑みが返ってくる

 どうしたの?

 心配そうな声 いつもと違う声

 ―――いや…… なんにも

 ―――信じられない?

 ―――いや…… 信じられる

 ―――面影はある?

 由美子に視線を向ける

 華やかな雰囲気 朗らかな笑顔

 ―――全然ないよ

 ―――そう……

 ―――でも かわいいよ

 ―――残念?

 ―――んん 嬉しい

 ―――本当?

 ―――あぁ… ずっと思っていた きっと 幸せだって

    やっぱり 幸せだった

    よかった

 ―――本当ね よかったわ

 ―――ん よかった


 喧騒は ますます 高まってくる

 ―――どうするの?

 ―――なにを?

 ―――あなたが 本当の お兄さんだって 云うの?

 ―――いや

 ―――やめておく?

 ―――うん

 ―――どうして?

 ―――幸せだから

    まゆみが…… 由美子…ちゃんが 幸せなら それでいい

    それ以上は なにも 必要ない

 ―――ずっと探していたんでしょ?

 ―――あぁ

    でも ずっと 願ってた

    幸せであって欲しいと

 ―――それで 充分?

 ―――それで 満足

 満足げに微笑んだのは 由起子の方

 大柄な仙貴の体を 抱き寄せて 髪を撫で回す

 ふうんわり 好い薫り

 懐かしい 良い匂い

 仙貴は 戸惑いながら すっと 身を預ける

 由起子は語る

 ―――貴方は いい子ね

 仙貴は 頷く 幼子のように

 ―――いつか 由美子ちゃんが 貴方のことを 思い出したら

    教えましょう

    本当の 兄は 貴方だと

    本当の 家族は もう 貴方 一人だと

    それまでは 内緒にしておきましょう

    あの娘が 幸せならば

    貴方も 我慢できるのであれば

 ―――我慢?

    とんでもない

    僕は 我慢なんて してないさ

    ただ これが いまの場所なんだ お互いに

    流れ流れて 僕はここにいる

    あの娘も 流れて そこにいる

    それだけさ

    それが 運命さ

 ―――いい子ね

 由起子は いっそう強く 仙貴を抱き締めた

 仙貴は されるがままに 身を預けた

  決して 由起子に 顔を向けることなく



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