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Hello again ~昔からある場所~ -1


ハローアゲイン~昔からある場所~


 某月某日―――晴。風向、西。


                 * * *


 風が かわった


 窓を開け放していた仙貴は そう感じた

 風向きのうつろいとともに 気温の変化も

 そう さっきまでは 穏やかな陽射しが 射し込んでいた

 それが ちょっと 翳っただけで 冷たい風にかわった

 ―――もう 秋 なんだ

 読んでいた参考書を 放り出して 窓に近づいた

 空には 白い雲が ふんわりふんわりと 浮かんでいる

 あまりに のどかな気分に

 仙貴は

 自分の居場所すら忘却していた

 空に 落ち込んでいく そんな気分で 空を見上げる

 天と 地が 逆転していく

 わずかに 射し込む陽射しは

 仙貴の頬を温めて 優しく 夢の世界へ誘う

 すうっと 風が 吹き込む

 仙貴は 目を開いた

 そこは 翳りに包まれた 自分の部屋

 人気のない 自分だけの 空間

 淋しさも もはや 感じられない

 いつもと同じ 孤独の 空間

  ふと 思い出す 過去の記憶

 いつも 淋しい想いを してきた

 ずっと 淋しい想いを させてきた

  そして 今も きっと

 思いやるのは

  忘れられない 過去の記憶

  取り返さねばならない 過去の記憶

 現在は 闇の中

 何も見えない 闇の中

 手掛かりすらない

 ―――こんなことをしていて いいんだろうか?

 戸惑いも 冷たい風に かき消されてしまった


 仙貴は 窓を閉じて 電灯のスイッチを入れた

 明るく 映し出された部屋は

 仙貴の 現在の 空間

 ほっとしながらも わずかな戸惑いは 残っている

 机に放り出された 参考書

 それは紛れもない 現在の 自分の世界

 ―――だけど……


 小さく コンコンと ノックの音

 ―――はい?

 ドアが小さく開いて 声が聞こえる

 ―――ごはん できましたよ

 しのぶの声

 ほっとしながら 仙貴は答える

 ―――ありがとう すぐ 行くよ

 ドアは 静かに 閉まる


 そう 現実には 生活がある

 きっと まゆみにも……

 そう思いながら 仙貴は机を片付け 電気を消した

 薄暮の中の部屋 それは 陽炎のように頼りない

 つい その風景に見入ってしまい

 慌ててドアを 開いた

 ―――みんなが待ってる

 明るい廊下から 部屋を振り返ると

  抜け出せない

 そんな気分がしたので 振り返ることなく

 静かに ドアを 閉めた



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