中2-冬(1)
正月明け。翼は杜都の家にいた。年末年始は、東京の実家で過ごしていたという杜都は、誰もが知ってるお菓子のお土産を買ってきてた。翼は遠慮なく食べることにした。
「でも、翼の家以降落書きの情報がないのは意外」
「犯人捜しをしていたからだろ。だとしたら、お前んとこも狙われないのがおかしい」
「セキュリティが万全だから、入れなかったのかな」
「う~む…」
二人は、リストを見ながら、これまでの被害場所を振り返った。
「マンションから有名な店まで、範囲が広いですこと…そもそも、犯人が一人とか複数とかも分からんし…情報が少なすぎるわ」
杜都は何かを睨むようにしてリストを見ていた。
「どした?」
「被害は広範囲だけど、マンションとか団地は、ここからでも歩いていけるところばかりだ」
「マジ…」
翼はリストをじっくりと見た。10月は夏喜のマンション、小学校の通学路途中にあるマンション2棟、夏喜たちと遊んだ公園近くの団地。11月は、民夫のマンション、初恋相手のお姉さんが住んでいた団地、中学校に行く途中にあるマンションなど。
「…確かに。つーか、全部、青葉第一中学校の学区だぞ」
「犯人は近くにいるってこと…」
「そうかもな…んっ?」
翼はあることに気づいた。
「どうかした?」
「ごめん、杜都。俺、家に帰るわ」
「急に…」
「確かめたいことがあるんだ。リストも借りてくから。終わったら連絡する」
「…分かった」
翼は急いで帰った。
「やっぱり、そうか…」
翼は確かめた結果が会っていたことに安堵したものの、これが事件とどう関係してあるのか分からなかった。
「偶然というわけではなさそうだけど…」
「何が偶然なの」
空也の声がしたので驚いた。
「いつ、帰ってきたの?」
「10分ぐらい前。『ただいま』と言ったけど、お前は調べものに夢中で、全く気付かなかったけどな」
そんなに夢中になっていたのか。
「何か分かったことがあった」
「例の落書きについてね」
「俺ん家以来、落書きの情報が入ってこないみたいだな。もう飽きたのか」
「そんなわけないと思うけど…」
「諸星英輝には、いつ会わせてくれるのかな?」
「聞いたら、テスト期間が終わってからの方がいいって」
諸星に会って伝えた際、嫌な顔をされたのが、何回も翼の頭の中を過ぎった。
「ふぅん」
「兄ちゃんもテストあるんでしょ。勉強したら」
「お前に言われんでもやってるぞ」
正直なことを言えば、空也と諸星は会わない方がいいのではないか、と思っていた。会えば嫌な予感しかしない。
「テスト期間、とっとと過ぎてほしい」
出来れば、一生テスト期間の方がよいかも。
翼はそんなことを思いながら、杜都に連絡をした。