中2-秋(4)
岸川夏樹に話しを聞いたのは、翌日の放課後。部活が終わってから、夏喜のクラスに集まった。
「初めまして、岸川夏樹です」
「天王寺杜都です。よろしくお願いします」
「仙田にピッタリな名前だよね」
「先生たちによく言われるよ」
「何のこと?」
翼が二人に会話に割り込む。
「杜都って、杜の都って書くだろ」
杜都が自分の名前を黒板に書く。
「仙田の愛称が杜の都だからさ」
「あぁ…だからか…」
「1年半の付き合いがあるのに、気づかなかったのか…」
「…」
「翼は鈍感なところがあるからね。俺も、文香に言われなきゃ気づかなかったけど」
「文香?」
「牧文香。俺らと同学年だけど、先月転校したんだよな…」
「ずっと一緒だから、聞いたとき驚いた。それで、後からだんだん寂しい思いが募ってきて…」
「夏喜と文香は、同じマンションに住んでいたからな」
「転校前に送別会したけど、泣いてたね」
「仙田大好き、とか言ってたな…」
感傷に浸る翼と夏喜。
「そういえば、文香が天王寺君の名前の由来が気になるって言ってたんだよね。杜の都だから、親族が仙田に関係してるんじゃないかって」
「おじいちゃんが、この名前が合うって決めたのは、聞いたことあるけど、由来までは…」
「仙田に来たのは運命だって、文香が一時騒いでいたけど…」
「それより、夏喜に聞きたいことがあるんだ」
「落書きのことだね」
杜都が仙田に来た理由を知っている翼としては、この話題を切り上げて、本題に入った方がよさそうと頭の中で判断した。チラッと杜都を見たが、少しホッとしたような表情になった。
互いに自己紹介したあと、早速本題に入った。
「二人ともラッキーだね。あの落書きを最初に見つけたのは俺なんだ」
「マジで!」
「ホント、ホント」
「詳しく教えてもらっていいかな」
夏喜が落書きの見つけたのは、先月の第一日曜日。
「急にお菓子を食べたくなって、コンビニに行こうとしたんだ。そのとき、黄色の丸を見つけて、汚れかな、と思ったら落書きだった。残念ながら、写メは撮ってない」
「写真見たかったな…」
「被害が広がると分かっていたら、撮ったんだけど…せっかくだから、現場に行ってみる?」
3人はそのまま夏喜が住んでいるマンションへ向かった。
「白い壁に黄色だから、近くで見ないと分からないな…」
「夏喜、よく気づいたな。俺なら、素通りするわ」
「偶然、偶然」
「他の現場にも行きたいな…」
杜都がリストを見ながら言った。
「小学校のときの通学路にあるマンションも被害になっているのか…そこだったら、部活の帰りにでも寄れるぞ」
「中学校に行く途中にあるマンションも落書きされている」
「明日行こうか?」
「俺も手伝おうか?」
夏喜が名乗り出た。
「ありがたいが、お前を巻き込むのも悪いから、俺と杜都だけで調査を続けるわ」
「そう…」
あっさり断られたことに、不満気味な表情の夏喜。
「何か、分かったら教えるから、そんな不満げそうに見るなって」
「俺は手伝いたかった…」
夏喜の携帯電話が鳴った。
「民夫からだ…え~っと…自宅の壁に黄色い丸が描かれていた!?」
翼と杜都は顔を見合わせた。