中2-秋(2)
日曜日。翼は杜都と仙田の街を歩いていた。
「記憶力の悪い翼君が諸星さんを覚えているのが1番の驚きだよ」
「あんなことあったのに、忘れる方がおかしいだろ」
「…いとこであるさくらさんのことは忘れていたのに…」
「…杜都、怒ってる?」
「部活も休みなのに、くだらないことに付き合わされる身にもなって」
杜都から文句を言われても、翼は気にも留めなかった。
「さくらちゃんと諸星さんが付き合ってるなんて、納得いかん!」
「誰と付き合おうが、個人の勝手なんだから、他人である翼君が口出しする必要はないよ」
「他人じゃねえ、いとこだ!」
「僕は、さくらさんと諸星さん、お似合いだと思うよ」
「どこが!」
「雰囲気とか…」
「似合わん、似合わん」
杜都は半ば呆れ気味に杜都に尋ねた。
「で、これからどうするの?」
「さくらちゃんに連絡したら、今日は1日中バイトで家にいない」
「…どこの向かっているの」
「ただ、諸星さんはバイトかもしれん」
「…諸星さんのバイト先に向かうの」
「向かう価値はある」
「…迷惑なことに気が付かない」
「突撃することに、迷惑なんて関係ない」
こうなったら、何を言っても聞かないことを、杜都は知っている。騒ぎになる前にその場から離れよう、と杜都が考えているとは翼に知る由がなかった。
諸星のバイト先であるディスカウントショップに到着したが、店内が騒がしい。顔の怖い店長も怒っているようで、客はもちろんのこと、他の店員でさえ、店長に近づかない。
「帰る?」
翼に杜都が聞いた。
「いや、俺が用事あるのは、諸星さんだけだ」
「諸星さん、いないようだけど…」
「俺なら、ここにいるけど…」
いつの間にか、諸星は二人の後ろにいた。
「何か用があるの?」
「翼くんが諸星さんに聞きたいことがあるようです」
諸星が翼の方を向いた。心なしか睨んでいるように感じる。
「…バイトは忙しいですか?」
勢いはしぼみ、しょうもないことを聞いてしまう翼に、杜都は呆れ顔。
「…そんな質問をするために、ここに来たの?」
「い、いえ、違います…いや、違わなくないです」
「諸星さんはさくらさんと付き合っていますか?」
埒が明かなそうなので、代わりに杜都が聞いた。
「…はぁ…」
「付き合っているか、付き合ってないか、正直に答えてください」
「…付き合っていると言えば、付き合っている」
「だそうだよ、翼くん」
「いや…あの…」
「もういい?俺、仕事に戻るから」
諸星は店長の方へ向かい、話し始めた。
「いざとなると、弱腰なんだね…」
「仕方ないだろ。あの人、睨んでくるし。やっぱ、得体の知れない何かがあるぞ」
「付き合っているようだけど…」
「納得のいく答えじゃなかったけどな…もっと、深く切り込まないと」
「今度は、翼くん一人でやってね」
「それはなぁ…」
店長と話していた諸星が、翼たちの方を見て、店長に何かを告げた。店長もこちらを見る。
「…嫌な予感がする」
「…同感」
二人はその場を離れようとするも、目の前には諸星の姿が。
「店長、この二人に調べさせましょう」
翼と杜都は何のことだか分からず、互いに顔を見合わせた。