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31話 トウコ道中記1

サンドローズ国編が終わり旅に出ます

 「コッキちゃん! キミにきめた! やれ! 蔓で叩く!」

 「シュッパーン!」


 ピンク髪の女がコッキと呼んだ草の塊に命令し、指示に従って硬い蔓で前方を塞いでいるゴブリンに攻撃をしている。軽快な打撃音が鳴るが棘付きの蔓による攻撃なため当たった箇所は肉をえぐり緑色の血を吹き出していた。


 「あーはははははは! 私の道を妨げる愚かなるものに天の裁きをぉ! コッキちゃん! 乱れ打つ!」

 「シュパパパパーン!」


 血の匂いに当てられたのか、それとも素からクレイジーな奴かは知らないが、ピンク髪の女は狂喜した笑顔を浮かべながら追撃命令を下す。

 コッキの乱れ打つ攻撃は先程の棘付きの蔓を増やし、ゴブリンを四方八方からの鞭打ち状態に陥れ、体の軽さもあり地から足が離れていきまたたく間に空中分解されていった。

 空中連続攻撃エリアルレイヴをキレイに決められたら空に花が咲くんですね。ワースゴイ。

 緑色の一輪の花は生命の灯火と共に空へと散っていったのを俺は少し離れた場所で見届けた。


 「やったわコッキちゃん! 私達は最高のパートナーね! これならこの地方のジムリーダーも余裕のヨルムンガンドよ!」

 「今日の神様ジョークも最高でしゅ♪」


 戦闘を余裕で終わらせた自称最高のパートナー達は互いを褒めあっている。神様ジョーク? どこで笑えばよかったのか高度すぎて理解できなかった。だが機嫌を損ねないよう笑って会話に入るとしよう。


 「あっはっはっはっは! 戦闘も神様ジョークもいいセンスですね! これほどとは思わなかったですよウインリー様」

 「ふっふ~ん。何を隠そう私は赤緑から最新の剣盾までやっている古参プレイヤーなのよ。ザコに負けるはずがないわ。私達に勝ちたかったらほのお・ひこうタイプを連れて出直してこいってのよ。それでも負・け・な・い・け・ど」

 「「ねー」」


 ピンク髪の女神ウインリーと森の妖精コッキは息ピッタリに揃えて口にする。この揃い具合は何度もやってるやつだな。つまりお決まりパターン。俺もその輪に入ったほうがいいのだろうか。


 (ねー♪)


 ねーよ。ねーな。そもそも馴れ馴れしい。神の領域に踏み入るなとか言われたらどうしよう。神様との付き合い方も言ってる意味も分からない!! どうすればいいの? どうしよう……助けてボクスさん!


 俺は数日前に別れたサンドローズ国にいる家族と呼べる人たちを思い出し助けを求めた。俺に託された任務は大役だ。それに関しては命をかけてやり遂げると誓ったが、道中のお供は考えていなかった。

 年上だとか教師だとか貴族だとか国王だとかそんなものとはまったく次元が違う。このピンク髪の女性は俺が魔法で召喚してしまった本物の神様だ。この世界で本物の神様と共に旅をするなんて誰一人としていなかっただろう。だから神様と一緒に行動する際の注意事項を相談できる相手がいない。考えなしにしゃべってしまい「あ、それ神に対する禁句です(笑)」(両手人差し指でバッテン)からのコッキによる鞭打ちの刑で全身ボロボロとかシャレにならない。

 ハッ!? まさかさっきのゴブリン残酷ショーは俺に対するデモンストレーションだったのか!? お前もこうなりたくなければ大人しく従うことだな、と。可愛い顔しておいて人の心に焼きごてを押し付け一生忘れさせない烙印を刻む非道なる行為……これが神の御業!?

 思いがけない方向からの精神攻撃に気後れするが、逆に気づけて良かったと安堵した部分もある。頭をフル回転させたかいがあったな。


 「これもしまうでしゅよ」


 俺が考えていた時間にゴブリンから黒い角を剥ぎ取ったらしい。二本の小さい角。討伐した証として売ることができたり魔術用道具として使われるらしい。これを渡されたときコッキの口元がニヤリと笑ったのを俺は見逃さなかった。やはり考えは正しかった。この角は力の証明だ、脅しの道具だ。


 「ハハ、ありがとうございます」


 俺は苦笑いを浮かべながら受け取り、脇に置いてある荷物入れにしまった。


 「ん~、しっかし脇道にそれるとすぐ襲われるわね。時間がかかるのは良くないわ」

 「南に行く馬車に同行させてもらおうと思ったんですけどね。あの状況じゃいつ事故にあうか……」

 「馬車同士の事故か、モンスターによる襲撃か。どっちもどっちねぇ」


 なぜ俺たちがルートから外れて行動しているかというとそれには理由がある。国から国への間にある街は基本的に栄えやすいため利便性を考え道が整備されているそうだ。形状記憶自己修復型ゴーレム9号配合と書かれた看板がある区間は一見なんてこともない土道だが、車輪や馬の足跡がついても時間が立つと元の形に修復される。面白くて穴を掘ってたら道行く商人に怒鳴られたため慌てて逃げたっけなぁ。

 ……まあその話は置いといて、便利な道があるんだけど今はサンドローズ国に行く馬車や早馬で溢れており我先にと追い越し者が続出。これは危険だと悟り徒歩で移動する者たちは野営地に留まるかルートから外れ先を急ぐかの二択となった。

 急ぎたかった俺はルートから外れるコースを選んだが、コッキが野営地で情報収集をしたほうがいいと提案があり神様が承諾。結果的にはそのとおりでしたが? 何か負けたっていうか戦力から見ても全敗でいいところ無しな俺はモヤモヤしながら荷物持ちをしてる流れ。

 ゴブリンぐらい俺でも倒せるんですけどね。コッキの戦闘方法はちょっと反則じゃないのかなーって。遠距離攻撃は正々堂々じゃないからノーカンみたいなー。そう自分に言い聞かせて無理やり納得させる。


 今はサンドローズ国から離れて三日が過ぎ、標高が低めの山が乱立した中のどれかにいる。正規ルートを意識しながら歩いてるので道に迷ってないが、日が出てるうちに野営地か街に行きたいと急いでいるところでゴブリンの襲撃があり終わらせた。

 しかし人数差があるのに一匹で出てきたのが謎だ。俺たちが弱そうに見えたのだろうか。経験上群れで行動すると思っていたんだが。英雄願望でも芽生えたのだろうか。

 気になったので知っているか聞いてみることにする。


 「他のゴブリンが出てきませんね。一匹で行動していたのでしょうか」

 「えーっと、何かあったけど……神である私から話す内容ではありませんね。コッキちゃん説明してあげて」


 ウインリーはニッコリと微笑み会話をパスする。その笑みに(あ、かわいい)と不覚にも少し胸が高鳴った。

 くそ! 違うだろバカが! 俺はこの女神が嫌いだろ! みんなの前で言った言葉忘れないぞ! あの恥ずかしさは今思い出しても顔からカム着火インフェルノだッ! いつか仕返ししてやるからな胸でかケツプリ女め!!

 右へ左へ回転させの妄想を露知らずコッキは俺の疑問に答える。


 「生き残りか偵察、後はハナレでしゅかね」

 「ハナレ?」


 生き残りと偵察は分かるがハナレはイマイチ想像がつかなかったため聞き返したところに「あー! ハナレ!」と女神は声を上げ、続けざまに説明に入る。


 「いーい? ハナレというのはおらついちゃったキレた若者よ。こんなところにいられるかー! オラは外に出てビッグになってやるんだー! ってやつ。大抵は骸とかすんだけど、生き残ると知恵と力が付いて厄介な存在になるそうよ。分かりましたか~ボ・ウ・ヤ」


 指を右へ左へ振り、最後に鼻にちょんと触れた。人を小馬鹿にするかのような動作、子供扱いしやがってと思わなくもないが、指が鼻先を触れた瞬間、AED治療を受けたような衝撃を心臓にうけキュン死しそうになった。

 「ウッ」と小さく口から漏れ、頭から足までビクついた俺の姿に満足したのか、女神はニヤつき顔で離れていく。

 お、おおお、おおおぅ、俺は本当にこれから先どうやって付き合っていけばいいんだ。心がエラーを吐いてるんです……どうしたらいいんですか、助けてボクスさん。

 コッキと共に先導するウインリーの後ろを追従しながら女神、魔性の女、人たらし、魔女、ぶりっこ、妖美、悪魔、あざと神といった当てはまりそうな言葉を考えるのだった。

前回から時間が空いてしまいました申し訳ございません。

読んでいただきありがとうございます。

初執筆開始が2月です。コロナによりあれよあれよと世界は大混乱。会社も大混乱。

もちろん頭の中も大混乱。

執筆ができなくなり、物語の流れからして打ち切り完結しても…と考えたのですが

連日投稿を諦め4日に1回ぐらいの投稿でやっていけるかがんばってみます!

こんな私ですがお付き合いいただけると大変うれしく思います。

どうかよろしくお願いいたします。


それでは次話もお読みくださいm(_ _)m

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