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27話 戦争の匂い


 すぐ、の事だった。

 庭にいたらまずいとのことで、一番近い俺の部屋にご案内しようと移動中「よお、何があった」と塀の上から声がした。

 孤児院に行くといって出ていった2班班長ビスマルショットだ。

 来るのに気づいていたのか分からないが、声がした瞬間1班班長のポンドゴーは近くに飛び乗り耳打ちをした。

 目を見開き俺が誤って召喚してしまったピンクのパジャマ姿の神ウインリーを凝視し、弟子のボクスにも目線を送る。

 緊急時に冗談を言う二人ではないことは長い付き合いで分かっているのだろう。

 すぐに神ウインリーの前へ飛ぶと深く(こうべ)を垂れ「貴方様をお守り致します」と告げどこかへと去っていってしまった。


 「よし、2班が時間を稼いでくれる。すぐに作戦を立てるぞ」


 班員全員からただならぬ緊張感が伝わってくる。心が焦っている。状況が体をせきたてる。ボクスが言った。これはまずい、世界が動くと。

 俺にとって兄弟子に当たる人でここに来て一番世話を焼いてくれた人。一番信頼出来て一番尊敬している。給料から生活費を抜いて余った分のほとんどを孤児院に寄付していて優しさに溢れているけど厳しい面もちゃんと持っている人。

 そしてサポーターとしての能力に秀でていて冷静な判断を取る人が事態の悪さに警笛を鳴らした。

 部屋に入り扉を締めビンベンが監視に付いた。風がざわめく。魔法で警戒しているようだ。


 「神様、騒がしくさせてしまい申し訳ございません。早急にお耳に入れていただき、ご判断を仰ぎたく存じます」


 自体を重く見たのだろう、先程までのふわっとしたイメージはかき消えており神としての立ち振舞を見せた。


 「構いません。地に神が降りるなど本来有ってはならないこと。状況を知らせなさい」


 「は!畏まりました!現在ここサンドローズ国は災害により長年の復興作業に追われ、また遠征費、防衛費も重なり見た目以上に国力が疲弊しております。古の勇者によって作られた強固なる壁に助けられておりますが現状で手一杯となっております。この状況で神様が降臨なされたと表に立たれますと、神様と国を守りきれるか判断できかねます。失礼を承知で申し上げますが、神様は自身の身を守れるお力を所持しておられますでしょうか」


 ポンドゴーがなぜ焦っているのか説明する。それを聞いた神ウインリーは話の内容を咀嚼(そしゃく)するように重ねた手を動かす。俺も理解できているか内容を考えてみよう。


 まずこの国は金が無い。その状況で神様が出たと言ったらどうなるか。

 (あが)(たてまつ)る信者が押し寄せて混乱する。

 偽物だと吹聴(ふいちょう)し神の名を語る不届き者とか言って殺しに来る。

 神だと言うなら力を見せろと言ってくる。

 こんなところか。


 神の力を見せた場合は信者が国にとどまってくれるから一気に国力がアップしてウハウハなんじゃないかと軽く考えたが、受け入れ体制が出来てない状況だと治安の悪化にしかならないのか。

 そうなると警備費が余計にかかって国が保たなくなる。制限して受け入れていけばうまくいくんじゃ。違う、来る人全員が金を持っているとは限らないのか。不法占拠に強奪強盗、逆にその人達を狙った人さらい。治安の悪化を軽く考えていた。

 金、か。

 そもそもなぜ神を頼ってくるのかは自分の利益になるようにか。

 魔法、スキル、健康、学力アップ、事業の成功、平和、すべて自分の利益になるように神に祈りを捧げる。

 欲深い信仰。

 本物の神様が現れたら直接この欲をぶつけてくるだろう。この神ウインリーがすべての者に願いを叶える力がなかった場合魔女狩りのように引きずり出される…ッ

 力があれば、せめて300年前に起きた“神の怒り”と言われる天罰を使えたら恐れて愚行に走る(やから)は現れないのではないだろうか。いや、待てよ…


 俺は俺で考え、神は神で話を進める。

 それぞれが一番いい未来になるように。


 「そうですね…今は緊急時です。(かしこ)まった言い方は辞めて簡素に答えることを許します。さあ練習です。先程のを簡素に、そして危惧していることを答えなさい」


 「は!ありがとうございます!では簡単に。神ウインリー様はどれほどの力をお持ちなのでしょうか。それによって対応も変わります。もし厳しいようでしたら政治的に利用されてしまう可能性が高く私達の力ではカバー出来かねます」


 「…わたしの力、神力を無闇に使うとこの世界への影響力が強くでてしまうので、大衆の前で使うことは固く禁止されております」


 「命の危機でもですか?せめて神だと証明できる何かがあればいいのですが…」


 会話が途切れたタイミングを見て疑問に思った事を聞いてみる。


 「あの、神様の事を心配されているのも分かるのですが、『森の精霊召喚』での騒ぎですよね?コッキでしたっけ、彼女?を表舞台に出して神様を俺みたいに匿えばいいんじゃないでしょうか」


 神様を一緒に召喚してしまったのは誤算だけど隠せばいいだけな気がする。

 この疑問についてチョチョコーネが答えた。


 「あの時一緒に見た天から刺さった光は精霊召喚では起きない現象なの。あれは勇者が関わっているかそれ以上の何か。天も地も白に埋め尽くされた。目撃者が多数いる、ごまかせない」


 「あの光にそんな意味が……」


 「他の国だったらまだ喜んだだろう。しかしこの国は300年前に各国に対して勇者に関わる情報を開示すると協力宣言を出している。これでは抜け駆けしたと捉えられてもおかしくない」


 300年前に起きたことがこの国、この世界にとってとても大事のように語られる。そこまでのことなのかイマイチ実感が沸かない。当時のことを知っている人はもういないわけで歴史として語られてるに過ぎない。……そうか生きている人がいるのか。

 ヴァンパイアは長命と説明があった。俺も長生きする可能性がある。エルフであるチョチョコーネが何歳なのか分からないが種族として長命と聞く。

 歴史を語るには人種は圧倒的に不利なのか。

 当時体験した者が今あれはこうだったと言ってしまえばそれが真実になってしまう。

 “抜け駆けした”から読み取ると召喚系は国同士の監視下の元に行わなくてはならなかったのかもしれない。

 長命の証人がいない国は歴史を知らないと条約の元に攻められても文句言えないのか?

 破棄したらどうなる。それこそか。


 考え込むには時間が足りない。


 「それにわたしはコッキを犠牲にする気はありませんよ。いえ、今はあなたが召喚主となっておりますので最終的にはあなたに委ねますが、わたしはする気はありませんよ」

 「ウインリーしゃま~~」


 抱きつくコッキを見てそんなつもりではなかったと謝罪する。神様から二重で拒否されたらやるなと言われてるのは誰だって気づく。


!!


 まるで雷に打たれたかのように圧倒的閃きが脳内を駆け巡る。


 「そうだ!!召喚したのならその逆も出来るのではないでしょうか!?そうすればこの問題を無かった事にできるのでは!」



 神様クーリングオフ作戦 発案




読んでいただきありがとうございます。


学生の頃社会科とか今のことも分かってないのに過去を勉強してもと思ってましたが

過去を学ばずに今のことを勉強しても結局過去を知らなくては未来は開かなかったり


そう分かっても勉強をしようという気にはなれず。

宝くじ5億ぽんっと当たらないかな!


それでは次話で。

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