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20話 猛虎炎帝による魔法講座

説明回

 次の日の朝目を覚ますと俺は金縛りになっていた。正確に言えば金縛りのようなものだが。体を起こそうと身動きするが水の中にいるよりも抵抗があり時が遅くなっている感覚に陥っている。体の動きが4倍遅くなるデバフ魔法(身体能力低下魔法)をかけられたらこうなるだろう。


 「うぎぎぎぎぎぃ……!」


 歯を食いしばり必死に動こうともがく。


 「ああっ!!」


 なんとか体を回転させうつ伏せ状態になった。これだけでもひどく体力を使った感覚に陥ったため呼吸が荒くなる。


 「くっあ……」


 筋肉が痙攣する痛みも走る。

 パチン、焚き火から音がした。

 見ると師匠のビスマルショットが火にあたっているのが見える。


 「し……しょ……っ」


 何かを焼いている香ばしい匂いが鼻に届くため料理をしているのだろう。

 振り返り満面の笑みを向けてきた。

 今感じているこの痛みは何かやられたのだろうか。しかし残酷なことが行われた記憶はない。毒か?なぜだ。考えなくては。

 思考を巡らそうとしたところあっさりと正解を口にした。


 「よお起きたかよ。どうだひどい筋肉痛だろぉ?かっかっかっかっ。だがストレッチをやらなかったらもっとひどい状態だっただろうな。感謝しろよぉ。さあ飯ださっさと起きて食え!」


 答えは筋肉痛だった。筋肉を酷使した次の日は計り知れない痛みを感じ、ひどい場合は立ち上がるのもやっと、壁に手を付いて歩かないとトイレにいくのも困難な状態になる場合もある。これは筋トレによって筋繊維が傷つき炎症を起こしたためその回復をしている最中におこると言われている。つまりこれも筋肉が成長していることによる喜び! 痛みを楽しむのだ!


 「すっっっっっっごい筋肉痛でゆっくり動くのがやっとです。今日の筋トレきついっす」

 「大丈夫だ安心しろ、今日は魔法メインの座学だ! その前になぜ座学かというとだな、まず極度の筋肉痛状態で筋トレをすると怪我が起きやすい。怪我をするとかえって筋トレが出来なくなる時間が長引いてしまうからやりたくても休んだほうがいいんだ。そもそも筋繊維が回復している最中にまた炎症をさせても効果はあまりないと俺は思っている」

 「なるほど……あ! 炎症ってことは怪我しているってことと一緒ですよね? これ回復魔法で治せないんですか?」


 回復魔法のヒールを使えば痛みがなくなる。そうするとすぐに筋トレが出来る。短時間で強化可能じゃないか! これはすごいぞ。ナイスアイディアだ。


 「それは伝説の勇者が解明したんだが結果は不可能だった。

 筋肉の増強は筋繊維を傷つけ炎症させる。それを人体が回復させるときに今以上に耐えれる体を作ろうと筋肉を大きくさせる。

 ヒールなどの回復魔法は“体に刻まれた正常だった頃の記憶を読み取り元の形に戻す”だ。

 せっかく筋トレをしたのにヒールをしたら筋トレをした前に戻ってしまい無駄になってしまう。筋トレの効果が出るのは筋肉痛からみて最短2日後だろうな。

 ちなみにヒールは肉も血も復元されるんだがそれは他の部位にある贅肉や筋肉を使って補っているんだ。だからヒールの多様は命を削るともいうな。補うものがない場合ヒールは意味をなさない。筋肉を鍛えるってことはある意味保険を増やしているとも考えられる。だから筋トレは大事なんだ! 筋肉は裏切らない!」

 「やっぱり皆考えることだったんですね。筋肉は保険。筋肉は裏切らない……すばらしい言葉ですね師匠!」


 名言を聞き俺は感動してしまった。そして筋トレの意味もわかりより一層努力しようと心に誓った。


 「あれ?ちょっと待ってください。ヒールって他の部位を使って修復するんですよね? 俺ここに来た時―――」

 「よーし! 筋トレとヒールの関係も分かったことだし違う魔法の話をしていくぞ!!! 分かったか! 聞きたいよな! 知りたいよな!!」


 俺が2回死にかけた事を追求しようとしたが気迫に押され流されてしまった。実を言うと死にかけたときに上着はもう着ていないから自分の体がよく見えたのだが明らかにガリガリになってるなとは思っていたことだった。

 目の錯覚かもしれないし俺の体どうっすか! なんか変っすか! って聞くほうが変だと思うから言えなかった。

 逃げた俺が悪いのだけども……

 仕事とリハビリで肉がついてきて嬉しかった思い出があるんだぞっ


 だが漠然とやっていた筋トレより知ってやる筋トレのほうが何倍も効果とモチベーション(意欲)が違う。がんばろう。

 そしてあの時の努力は無駄ではなかった。じゃないとヒールの効果がなくて生きていなかったかもしれない。

 無駄な努力なんてないと信じよう。どこかで役に立つと信じよう。


 「俺もっと魔法のこと知りたいです!」

 「いい返事だ! ならこれを飲みながら聞け!」


 ゴトッと置かれさコップには牛乳・卵2個・オレンジが入ったものだった。


 (美味そう!)


 ここに来て美味そうなものが出てくるとは予想外だった。

 ちょびっと口につけ舌で転がす。

 オレンジの酸味と牛乳のまろやかさがたまらない! しかし卵が邪魔をしている……卵は筋肉に必要なタンパク質が摂れる食べ物ランキングNo.1なため一日に5個は摂取したいものだが組み合わせが……混ぜずにゆで卵でよかったのではないかと作ってもらってなんだが愚痴りたくなってしまった。まあ言ったら蹴りが飛んでくるから言わないけど。


 「記憶がないって事だから一から説明する。この世界には魔法とスキルがあり己が持つ魔素を使って使用する。

 魔法は火や水や雷など自然現象を再現するモノを指す。

 スキルは身体強化など自分の体を元にするモノを指す。

 大雑把に言えば自分以外に魔素を使えばそれは魔法ってことだ。

 魔素は体が毎日生産しているが体にも貯めれる量ってのがある。作りすぎた魔素は体から煙のように放出されている。

 魔素を感じれるように意識して修行していればそのうち体感できるようになる。

 魔法やスキルを使えるようになるための最初の修行がそれだな。このあとやるぞ。


 よし、とりあえず火の魔法を見せる。昨日ボクスとやったときにも見たから分かると思うが」


 そういうと手を前に出し『猛虎炎弾』と唱えた。すると手のひらの前に丸い火の球が現れ太陽のように轟々と紅炎(こうえん)が走る。少しだけ離れているこの位置でもそこから発せられる熱を肌で感じる。


 「これはウィザードが使う『ファイアーボール』とはちと違うが今は同じものと思ってくれ。ワタリはこの熱を感じているよな? 俺は感じていないがそれには訳がある。魔法やスキルが自分にも被害が出ないように魔素で体の周りを固めるんだ。固めれる量は自分で調整できる。こうすることによりあらゆる攻撃から身を守ることが出来る。

 この魔素障壁(バリアー)はメリットとデメリットがある。

 さっき説明したが魔素には貯めれる限界がある。例えば魔素を100貯めれるとして『猛虎炎弾』が魔素を10使うとする。『猛虎炎弾』の熱を耐えれるようにするには安全を考慮して魔素障壁の消費魔素は8~10使いたい。『猛虎炎弾』を使うだけで消費魔素は最大20必要となる。これまでは分かったか?」

 「大体は……つまり『猛虎炎弾』を使えるのは5回ってことでいいですよね?」


 100から『猛虎炎弾』の10と魔素障壁の10で計20を割ればいいから100/20=5。簡単だな。ふふーん。


 「そうだ、だが実際は違う。魔素を限界まで使ってしまうと意識を保つことが難しい。それは負けを意味する。だから最大使用回数は4回だ。ただこれは単純計算の話だ。実際の魔素障壁の特性は 

①徐々に薄くなる

②使ったら風船のように割れるわけではない。


 となる。風船のように割れていた場合俺がこうして『猛虎炎弾』を持続していたらどれだけ魔素障壁を重ね掛けしなくちゃならないのかって話だな。

 バリアーの壊れる条件は時間経過と弱い攻撃の積み重ね、または強い衝撃を食らったら一発だ」


 「えーと……そうなると今そうやってる状態でも徐々に薄くなっているのと『猛虎炎弾』の熱で削れていくから魔素障壁が時間経過より早く壊れる?」


 「理解が早いじゃないか。そのとおりだ」


 ビスマルショットは手を払いのける動作をして拳を握り『猛虎炎弾』をかき消した。


 「イメージは溶けていく卵の殻を想像してくれればいい。衝撃を食らった部分にヒビが入っていき耐えきれなくなったらその部分が壊れる。そんな感じだ」


 「なるほど、そう考えると楽ですね」


 「その点ボクスのような『シールド』持ちがいるとバリアーの節約ができて楽になる。『シールド』は魔素障壁のように時間経過で溶けないバージョンだな。耐久値も十分高い。ボクスは変則的な使い方もするから天才だな」


 やはり師匠の目から見てもボクスは天才に見えていたのかと自分のことじゃないのに褒められたことに嬉しくなる。


 「そういえば魔法とかスキルはどうやって覚えることが出来るんですか? 本とか修行ですか?」


 愛弟子を思い出し何かを考えているところに気になっていた事を聞いてみた。


 「魔法やスキルを使えるようになるには“神に祈る”ことにより願いが届けば授かることが出来る。火を授かりたいなら火の神に、水を授かりたいなら水の神に祈りを捧げる。ちゃんと祀られている場所に行くか自分で祭壇を作るかしないといけない。祀られている場所に行くのは骨が折れるから基本は祭壇を作って祈ることになる。祭壇というが厳密にはフィールドを作るといったところか。そうだな……1班にチョチョコーネがいるだろ。あいつが施設の庭を作ってたよな、あれがそうだ。エルフだからな、森信仰だ」


 あの小さい庭には他の場所と違う神聖さを感じたがまさにそのとおりで森の神の祭壇だったことに驚く。


 「そんな秘密があそこにあったんですね」

 「まあ秘密ってほどでもないが、あれを見て分かる通り自分で作る場合は時間がかかるんだ。そして祀られている場所よりかは授かる率は低い。

 魔法やスキルはな、奇跡的に授かってもそれを使える魔素が無ければ宝の持ち腐れなんだよ。だから簡単に使える魔法やスキルを授けてくれる神を信仰するやつらが大半だな。俺が使う猛虎は本当に奇跡だったよ。かっかっかっかっ」


 ビスマルショットは豪快に笑う。確かに聞く限りだと自慢したくなるしボクスのように羨ましがるだろう。だが猛虎を使うための魔素を高める修行もまた辛いものだったに違いない。だからこその筋肉美なのだと悟った。


 筋肉は…裏切らないっ


読んでいただきありがとうございます。


魔法、スキルはガチャだった。


説明回でした。やっと大事な一歩が動けました。

ちゃんと説明できたのだろうか…

なぜ甘味君(プロローグにでた勇者)が一度熱を感じなくなったかの説明です。

魔法・スキルもガチャなため強力なスキルを使える人は羨ましがられますがそれと同時に努力も認められます。国家資格的な。


それでは次話もよろしくお願いいたします。

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