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プロローグ 2話 使えない女神に悪態を

初投稿 初執筆 初挑戦!


こちらはプロローグとなっております。

 (いやほんっとまじ使えねぇ……普通わかるっしょ。飛んだ先にこんな状況で出てきたら危険が危ないだよ。混乱して話が進まないやつだよ。華々デビュー不可能だよ。

赤髪女神め……創造スキルを完璧にマスターしたらぶっ飛ばしにいってやる)


 甘味が降り立った地は見渡す限りの砂! 砂! 砂山! 凸凹してる! そう、砂海地帯である。空は晴れ、肌に差す太陽の熱は、恵まれた体に容赦なく痛々しい爪痕を残していく。

 もうどれくらい歩いただろうか。太陽が傾いてきたのはわかるが、時間を計るすべがないため感覚に頼るしかない。


 (歩いて4時間くらい経ったか? 今にも倒れてしまいそうだ。体がおかしい。早くオアシスを見つけて安全を確保しなくては。特に水が欲しい。喉がカラッカラだ)


 残念ながら甘味の予想とは大きく異なり、実際にはまだ60分ほどしか歩いていない。しかし甘味がそう思うのも仕方のない劣悪な環境である。訓練していない者なら誰だって感覚は狂うものである。甘味は悪くない。甘くない事態に放り込んだ赤髪女神がすべての元凶なのだ。勇者に対する配慮が足りてないのは誰の目から見ても明らかである。


 (思い返せばあの時赤髪女神の言葉数が少なかったし、もしかしたら新人女神とかで初めての勇者召喚による緊張から色々抜け落ちたのか? ドジっ子系か。ツンっとした顔立ちだったから、如何にもなやり手秘書だと決めつけていたが、そっち系なら嫌いじゃない。ギャップ萌えは好きな方だ。でもこの状況はありえないからぶっ飛ばすのは確定事項。そこは譲れない。俺は男女平等パンチができるヤツなんだ)


 甘味は暑さで意識を失わないように、赤髪女神への恨みとこれからの勇者英雄譚を考えながら砂海を歩き続ける。


 「くそ! 創造スキルが使えたらこんなところすぐに抜け出してやるのに」


 かすれた声が砂海に虚しく生まれ消えていく。

 甘味の言葉から察する通り、この世界に飛ばされてから真っ先に【異世界渡り確認事項】を試したのだ。


 この異世界にきた時を思い返す、なぜ赤髪女神に呪詛をかけているのかを。


☆☆☆


 赤髪女神から放たれた魔法陣の眩しい光が消え、甘味の意識が世界とリンクした。異世界に飛ばされた俺は真っ先にやらなくてはならないことがある。

 昨年発売されるや否やまたたく間にベストセラーとなった著:時渡セイヤ 氏の【異世界に転生、転移、憑依したら】税込み¥4,800に書いてあった【第一章 まずやるべきこと】のページの確認事項だ。

 時渡先生、ありがとうございます! とても興味を惹かれる本だったので熟読して覚えました! あなたのファンとしてこの異世界で最強の勇者になってみせます!


 甘味はあまりよろしくない頭をフル回転させ内容を思い出す。


 【異世界に転生、転移、憑依したら】【第一章 まずやるべきこと】

 [確認事項1:今いる場所の確認。城召喚だと◎、いきなり戦闘だと逆にチャンス]


 うーむ、見渡す限りの砂である。砂海は初めてだ。

 日本でここみたいな場所といえば鳥取砂丘とか聞いたことあるけど行ったことはない。写真でみたぐらい。人生の中で最大級の広い砂があるところは通っていた中学校のグラウンドくらいだ。それよりも遥かに大きい。この規模で凸凹していれば砂海で間違いないだろう。

 場所評価をすれば✕だ。水や食料なしなら死神がパーティーメンバーになってるぐらいの最悪な状況だ。

 死神「大丈夫!君は僕が守ってあげるよ!」

 ってやかましいわ! それ「大丈夫! 君は僕が(他の死神から)守って(死の国に連れて行って)あげるよ!」ってことだろうが! 自分の獲物を逃さない魂が凍えるような目で友達みたいに声をかけないでほしい。

 いけないいけない、最悪なスタート地点のためか前の世界から使っていたスキル【架空友達】を発動してしまった。結構使っていたためスキルレベルがあるとすれば相当なものだろう。


 まあ、自慢できるものでもない……。


 ヤメヤメ違う違う考えていたのはこんな話じゃなく場所についてだ。

 できればスタート地点は城が良かったな。言葉が通じるのか試したかったし、俺に相応しい装備とパーティーメンバーを用意してくれるだろうしな。

 次点で森が楽だと妄想にふけっていたのだが砂海は予想の範囲外だったなぁ。


 さて次の項目は


 [確認事項2:自分がどうなっているか確認せよ。若返ってるなら転生。元の世界のままなら転移。知らない身体だったら憑依だ]


 本を読んでいて転移だけはイヤだと願った。今の身体が好きじゃなかった。それは最近の話。


 中学時代俺は走るのが得意だったため陸上部で活躍していた。練習により痩せ目でありながら筋肉のついた身体は密かな自慢だった。勉強も運動もできない同級生がけなされているなか、お前は運動ができるからまだマシだなの言葉に、あいつよりできると優越感を感じていた。


 認められている感覚は気持ちが良かった。


 中学3年、青春の陸上部を引退した俺は友達の勧めで借りたマンガがきっかけで筋肉をつけたくなった。背中に鬼の顔ができるとかまじかっけー! と感動した。そのマンガの主人公は大猿と戦う話で「身体を大きくするには食べるしかない」と言っており、真に受けて筋肉のついた身体をイメージしながらただただ食べまくった。


 残念なことに忙しい高校生生活により鍛える時間がなく、食だけが続いたため後に悲劇を生んだ。

 中学卒業後、高校1年の初め頃に異世界転生モノが流行りだし俺の魂にベストマッチング。読書部に入部しマンガ・アニメの話で盛り上がる。


 大学進学に失敗した時気づいたら見る陰もない残念な姿がそこにあった。

 こんなの俺じゃない。鏡から目を背けるしかなかった。

 勉強も、運動も、人生すべてがなくなった姿を見たくなかった。


 だからこの姿で転移をすることはイヤだと拒否し、1からやり直したい、転生がいいと願ったものだ。

 強くてニューゲーム、現代知識で無双が人気なのは、優越感という至高にして甘美なる味を容易に想像できるからだろう。甘味も太っていない身体で強くてニューゲームが理想だった。


 しかし、現実は非情だった。願いは虚しくぷっくりと膨れた腹が目に映っていた。知った身体だ。というか全裸だった。


 「()? 裸裸裸(ららら)?」


 あまりにもな光景に口からリズミカルに驚く声が出てしまった。

 俺は間違いなく服を着ていたはずだ。大手服メーカーのユニシロ一式だ。主人公が死に戻り能力を使うアニメとコラボをしたため大奮発をして揃えたお気に入りだったはず。

 トラックの前に飛び出して接触する前に異世界転移をしたと思っていたが、現実では服がなくなるくらいぐちゃぐちゃになってから転移したのだろうか…?

 う~ん、わからん! ただ俺が裸なのは赤髪女神だったら分かるんだから勇者に相応しい格好にして送るべきだろ!! 召喚系の転移だったら知らない人たちの前に全裸で登場してたじゃないか。あっぶねー……


 全裸と砂。太陽は燦々と地に陽光を当て熱を蓄える。この組み合わせは非常に危険である。


 「あっちちちちいいいいいいい!!!」


 魔法陣の光が消えても少しは力が残っていたからか最初は外気を感じなかったが、今は太陽の熱が全身を強く焼く。特に足の裏がストーブに直接触れているかのように焼ける痛みを感じさせる。

 飛び跳ねながら砂山の影に移動する。運良くどの角度からも日が差し込みにくいえぐれた砂山だったため、他の場所よりかは熱くなかった。


 「ひぃひぃ、ひどい目にあった……」


 真っ赤になった足の裏がズキズキと痛む。涙が滲む。うううううぅ、いたいよぅ。

 痛みをどうにかしようと思い出す。[確認事項]の続きだ。


 [確認事項3:ステータスは確認できるか]

 ステータスとは自分の身体能力が数値化されていたり獲得しているスキルを視認できるゲーム的なアレである。ステータス表示ができるかどうかで異世界冒険の難易度が大きく変わる。自分の強さと相手の強さを比較して、戦うか逃げるかを事前に判断できるのは、生死を別つ場にとって重要な比較要素だ。


 「お決まりの物から片っ端にやるぜ。ステータス! ステータスオープン! コマンドステータス! オプション! アドミニストレーター! えーと、えーーーと、あ! 指を上から下にシュッとすると出るやつか!?」シュッシュッシュバッ


……?


 甘味はステータスを表示させようと試行錯誤するが出る感触がない。かすってもいないのは感覚で分かった。つまりステータス表示が出ないタイプかカードに表示されるタイプの異世界だと決定づけることにした。まあいい、次だ次。大本命!


 [確認事項4:スキル又は魔法が使えるか]

 これは使えると確定している。そもそも確定しているから俺は余裕でいられる。

 異世界転移の時に赤髪女神に願って【創造】という最強のスキルを与えてもらったのだから使えないわけがない。


 なぜ【創造】スキルが最強のスキルかだって? 考えてもみてほしい。【創造】を使えば若返りも永遠の命も理想の身体も富も名誉もスキルもハーレムも、【想像】できるものはすべて【創造】できてしまうのだ。足が火傷しようが【創造】でどうにでもなるのである。

 さあ楽しいスキルの時間だ! 勇者甘味の物語の始まりだ!


 「我は【創造】する! この砂漠を快適に横断できる車を! ハァ!!」


 とりあえずこの暑い状況をどうにかしたい甘味は冷房が効いた車に避難したかった。

 頭の悪い甘味だが実は普通自動車免許を持っているのだ。豆腐屋カーで鍛えたドライビングテクニックと、これで免許が取れちゃう! を必死にプレイした賜物である。最近のゲームはすごい。免許を取れた時、改めて甘味はゲームに巡り会えたことに感謝した。


 「くっ、創造されないな。よくある魔法やスキルを使った時のMP(マジックポイント)的なものを使った感触もない。こんなときのQ&Aだと確か 

【①イオナズンを使おうとしたがMPが足りない現象】 

【②正しい詠唱がある】

【③この世界に存在しない物は創造できない】

【④気合が足りない】 

だったよな」


 甘味はバイブルと呼んでいる時渡セイヤ 氏の【異世界に転生、転移、憑依したら】税込み¥4,800の内容を思い出しながら、口に出して状況整理をしながら心を落ち着かせようとした。


 人はストレスを感じた時、心を落ち着かせようとするときや状況を整理したい時に、意図せずポロッと人に聞こえない音量で口に出してしまうものらしい。気にかけよう心のSOSに書いてあったのをふと思い出す。


 「車は無理だったから簡単なもので草とか【創造】してみようとやってみたが失敗。確認事項から考えるに【①MPがない】と【③存在しない物は創造できない】だった場合時間が解決するからいいとして、【②正しい詠唱がある】は非常にまずい。

 お約束だと頭に詠唱が浮かび上がってくるとかなんだが何もなかった。そうなるとこの世界で魔法使いを探して教えてもらうしかないが、【創造】はかなり特殊なはずだから詠唱文が存在していない可能性がある。

 とりあえず簡単にできる【④気合が足りない】に望みをかけて全力投球だ。いつやるの? 今でしょ!! 気合だ気合だ気合だあああ! 輝け俺ええええ!」


 気合は鬼気迫る勢いである。背中に鬼を背負えなかった男は気合でそれを表現しようとしている。


 「おらあああ! ぐりゃあああ! ぬぅぅおりゃあああ! はああああ!」


 もしこの場にギャラリーがいたらこのあつ苦しい光景を見て、増量し続けるミネラルいっぱいのペットボトル麦茶をがぶ飲みしながら悪態をついていただろう。しかしああなんということか、この馬鹿らしい努力は無駄ではなかった。ついに能力を使ったときに感じる怠惰感を魂が掴んだのだ。


 「出ろおおおお!!! うわっなんだ!? 寒気みたいなゾワゾワした感覚が身体からでたような気がしたぞ……!」


読んでいただきありがとうございます!


太陽の熱が暑いと言っているのでそれを遮ること、自分で答えを言っているんですよね。

太陽の熱で暑い場所は肌を露出しないほうが逆に涼しくなります。

オリンピックの日射病対策、ミストで涼しくとかじゃなくなにか逆転の発想がありそうな、そんな無責任の投げっぱなし感想でした。


では次話もどうかよろしくお願いいたします。

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