12話.元気いっぱーつ
例えばの話、道を歩いていたら美女とぶつかって一緒に転んだらお互い相手の股間部分を見れる体勢になってしまい、慌てて立ち上がろうと身動きしたらバッグから荷物が全部出てしまい、これまた慌てて落ちてた婚姻届ににサインを書いて結婚して幸せな家庭を築いたとしよう。
幸せなら大いに結構! そんなハッピーもいいよね。
例えばの話、河原で決闘をする不良男子校十人VSチャラ男高校十人の大乱闘があり、殴る蹴る投げる潰すの死人が出るんじゃないかとヒヤヒヤする高校史上最大の伝説に残る決闘。互いが力尽き相手の力を認め「YOUやるじゃん」「はっお前こそ強かったぞ。ま、俺よりかは弱かったけどな」「言う言うじゃじゃん! チェゲラッチョチェゲラッチョ!」と二十人が褒め称え愛の第二大乱闘夜の部が開催されハッピーエンドを迎える人たちがいたとしても、今の俺ならおめでとうと祝福しよう。
まさかこんなことでここまでうれしいなんて。いやーまいったなー。こんなときどんな顔をしたらわからないの。なんちてーと表情筋がゆるっゆるになりながら思い出しニヤニヤする。
それはまた孤児院の子供たちと一緒に掃除をする日がやってきたときのことだ。
ソワソワしながら玄関口で掃除をしていると孤児院で子供たちの引率指導役であるユウキャンが子供たちと手をつなぎながら敷地内に入ってきた。
「あ、おはよう! 今日も、天気、いいね!」
「おはようございます♪ 洗濯物がおひさまの匂いをいっぱい溜め込みそうなとても爽やかな天気ですね」
朝の挨拶をしてると子供たちは兄ちゃんだーと足に体当たりしてくる。
なんてかわいいんだ。将来は立派な大人になってほしい。
「みんなおはよう! 今日もよろしくね! アッー! 、ちょ、あかん! カンチョーはやめるんだ!」
後ろの男の子が執拗に俺の穴を狙ってくる。
なんてハンターだ。将来は立派な開拓者に目覚めるだろう。
子供たちなりの挨拶も済ませ仕事に入る。やはり子供たちの動きについていけない。これが熟練者との差か。改めて思い知らされる。今日もまた足を引っ張るだけだがいつかは絶対にだ! 動きをちゃんと見るんだ。ちゃんと!
「兄ちゃんそれこっちだよー」
「すみません!!!!」
くっ! ガッツが たりない!
体力が追いつかず、頭が追いつかず、動きが見えず。ダメですねコレ、トキ・ワタリ選手33―4の結果でゲームセット完敗です。
ヘロヘロに打ちのめされ備蓄庫に行くと三日前に仕込んでおいたレモン漬けが空になっており多く作るよう要望が書かれていた。
「やったじゃないですかワタリさん! すっごい喜んでくれたってことですよこれ!」
「へ?? 普通に作っただけなんだけど……」
「あれですよレモンの間に砂糖を挟んだのが好評につながったんですよきっと! すごいなーすごいですよー」
まさかそんなことで……だって結局は一緒じゃないか? 砂糖水で浸すんだから。だって、なー。
「何困ったような変なニヤつき方してるんですかワタリさん、嬉しいときは嬉しいって素直になっていいんですよ」
「いや、だってこれは普通にレシピどおり作っただけで」
「レシピはレシピ、料理を作った人が偉いの! 作らないと食べれないの! だから作った人が褒められて当たり前なの! はい、嬉しいって言う!」
「嬉しい……です……」
「小さい!」
「嬉しいです!!!」
「はい、よくできました♪」
そう言ってユウキャンは俺の腕に絡まりながらコツンと体当たりをしてきた。
(うおおっなに今のなに今の超ドキドキするんですけどおお! 女の子のあれが確かに当たったよな。全体的にやわらけぇふおお)
一瞬の出来事だったが片腕に残る感触は溶けたように熱を帯びておりしばらくはおかずに困らない思い出になった。この思い出は永久保存版として大切に扱おう。
一方ユウキャンはいつもの子供たちとの接し方をしてしまった自分に恥じていた。
孤児院では子供とのスキンシップが大事とされており、優しくするときも、怒るときも肌に直接触れながら目線を合わせ諭す。本来親から愛情を注がれなくてはならない子供たち。寂しさと不安で脳と心が萎縮してしまい性格や成長に大きな悪影響を及ぼす事が長い歴史の中で経験と知識により判明している。いっぱいの愛情を注ぎ成長につれて離れていく。拒絶ではなく健全なこと。
親離れに寂しく苦しく思うが成長してくれたことをなにより一番に喜ぼう。
それが孤児院での教え。
自分もそうだったから。この話を勉強したとき当時の引率指導役だったお姉ちゃんにたくさんの愛情を注いでくれたことに気持ちをこめて感謝を述べた。
(うわああああ……うちは大人の男性になんてことをしちゃったんだ……つい勢いでやってしまった……ワタリさん固まってるよぉ。シレッと何事もなかったようにしなくちゃ)
「さてそうと決まったレモンをいっぱい切らなくちゃならないですね砂糖水も用意して瓶も用意してああレモンあったかしら探しにいかなきゃー」
「そぉおですねボーとしてちゃいけませんねハハハレモンレモンは取りに行ってくれるんでしたそうそううん、俺は瓶だな」
それぞれが一方的に納得し口早に作業に入っていった。
出来上がったレモン漬けは三瓶でレモンの在庫がなくなってしまった。
「もっと作ったほうがいいですかね? レモン買いにひとっ走りしてきますが」
「個数指定がなかったのでどうなんでしょうか。ワタリさん、この施設は何人の方が勤めているかご存知ですか?」
「正確には知らないですがたぶん15人ほどかと」
「そうなりますと三瓶で十分な気がしますね。三日に一回作りますので都度要望聞き入れでよろしいのではないでしょうか。作りすぎて痛むのもなんですし」
「そうですね、そうしましょう。他の仕事もありますし」
俺たちはレモン漬け以外の保存食も作成し料理の工程を終える。あとは掃除だ。
廊下の床拭き競争を交えつつやった子供たちとの楽しい仕事は体感よりも早く終わった。
また3日後と別れを告げ部屋に戻り今日起きたこと、学んだことを頭の中で整理する。
いやー俺のレモン漬けそんなにかー! そんなにかー! ウヒヒと嬉しかったシーンを何度も繰り返す。
(そこからあーなって…かー! 柔らかかったなー。ふにって感じで温かいのなんの……)
(…… … …)
フ~~~、さあ明日もがんばりますか!!!!
こぼさないように慎重に動きながら外に出て手を洗い、気持ちのいい空気を吸い明日への気合をいれる男トキ・ワタリ19歳 今日も健康でした!
読んでいただきありがとうございます。
作中にあるように初めてふにっとされたときは衝撃でした。
衝撃ついでにフロム・ソフトウェアのソウルシリーズに武器に魔法付与をするアイテムがあるのですが拾ったときは表示されたアイテム名に我が目を疑いました。
私も魔法付与をしたい誰かのために白くべたつくなにかを配置しといたほうがいいのだろうか。
(´・ω・`)「前に捕まった人がいましたよ?」
ソウルに導かれてしまったか。おおー愚かな行為をした痴れ者よ 汝の罪が抑止力になるように祈りましょう ○ーメン
それでは次話もよろしくお願いいたします。