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11話.ふしぎ種草花

閑話っぽい感じ。チョチョコーネ視点です。


 ここサンドローズ国の北部には難度S級エリア、災厄の腐海『グラトニートラップ』からくる魔物を防ぐUの字型の壁、名を“迎い入れの防壁”があり、関所門をくぐって国に戻ると広場の周りに防衛隊施設が多く囲っている。

 これは万が一関所門を突破された際の第二の壁としての役目となっている。

 その防衛隊施設の後ろに並ぶ建物の一つが今トキが住み込みで働いている対魔物防衛隊調査施設である。


 関所門前にある広場には防具に身を包んだ人達でまあまあの活気に溢れているのだが、一歩奥に入ると人通りがまばらになる。

 これには理由があり三百年前の神の怒り事件によって幻惑の砂海『トラップデスネスト』が災厄の腐海『グラトニートラップ』へと難度S級エリアの性質がガラッと変わってしまったのが原因である。


 グラトニートラップは毒沼から毒霧が発生するため毒に対する準備が必要となった。


 人種は状態異常にとことん弱いため耐性装備を求めることが多く良質な品は出回りにくい。


 このグラトニートラップの毒は悪質で、毒が原因で死ぬのではなくゾンビ種に種族変化を起こす。一般的なゾンビとは異なるため便宜上グラトニーゾンビ種と呼ばれる。


 そのままの知識を持ち、腐る体ではなく、体表の皮が剥がれ筋肉繊維が丸見えの人体模型の中間みたいな見た目になる。

 グラトニーゾンビ種は変わり果てた姿になると同時に幻覚に侵され魔物以外が魔物に見えるようになり、先程まで一緒にいた仲間たちを襲うようになってしまう。仲間を探しているかのように名前を叫びながら行動するため、元仲間だった者たちは精神的疲労によって帰還する者が後をたたない。


 遭遇した場合リミッターが外れた身体能力で掴まれ引きづられ毒沼に沈められる。ここの毒沼に浸かっても種族変化に耐えれる装備は現在確認されていない。そしてまたグラトニーゾンビ種が出来上がる。

 現在の調査で判明しているのはこれぐらいだが、毒に近づきたくない、耐性装備がない、種族的に向いてないエリアになったなどの理由により国の人口が激減。

 特にひどかったのが第二の壁である北広場の周辺施設で人数不足により空き家に近い状況になったため後ろの施設で働いている部署を前に移し今に至る。

 三百年の間に毒の影響はここまで届いていないと解明されたのだが、それでも北広場周辺の人口増加率は思わしくない。


 つまり毒怖い、近づきたくないから人いない。


 今でも北広場周辺の人たちは気持ちの問題で保険として毒耐性の装飾品をつけているぐらい根が深く深刻な問題となっている。

 地価が安い、家賃が安いで釣られた人は噂を聞き絶望の洗礼を受けるのが最近の不動産ブーム。国が安全って言ってるんだから事前に知らせる必要ないよね。



 そんな環境の中にいるとは知らないトキが働いている対魔物防衛隊調査施設には、1班の部屋隣にエルフのチョチョコーネが世話をする小さい庭があり、この施設で唯一生命の力に溢れた空気を作り出している。


 今日もチョチョコーネは庭で甲斐甲斐しく草木の世話をする。

 最近は各国から種を仕入れ育てているため色とりどりの草花が芽を出し咲き乱れている。


 (この国は育つの大変なのに君たちはがんばってくれた。ありがとう。君は少し元気ないのかな。君は環境に対応したね。君は鮮やかだ。君はこの前喜んで食べてくれたよ)


 一つ一つに触れ育ちをみる。

 目に留めた葉を摘み口に入れ舌で転がし飲み込む。指が通り道をなぞり胸に手を置き全身で感じ取る。


 (うん、今日はこれにしよう)


 気に入った葉を数枚摘みいつものようにトキに持っていく。


 「チュチュチュチュチュウウウウン! はい俺のほうが多く牙をむいた! 俺の勝ち!」


 いったいどんな夢を見ているのか気になるが今日もまた寝坊せずに起きれたようだ。

 少し前にどんな夢を見たのか聞いたら


 「チュンチュンだったかなぁ。うーん、もう忘れてしまった」


 と一瞬で忘れてしまったことを思い出そうと唸っていた。


 (今日も鳥っぽいこと言ってるし鳥に関することだと思う。そろそろいいかな)


 部屋の前で起きるのを待ち、タイミングを見計らって扉を開け部屋に入ると、トキはもう慣れましたとばかりに部屋に入ってきた私にむかって挨拶をしながら出迎える。


 「はい、今日のは今までと違う魅力が詰まった出来。栄養いっぱい食べ過ぎ注意」


 庭で摘んできた今日の葉っぱを手渡しで食べさせる。


 「んー!」もぐもぐ「コレもまたうまい! 俺気に入り……からああああああああああい!」

 

 ふぬあああと叫びながら転がる彼は感情豊かでとても面白い反応をしてくれる。これからもおいしい葉っぱをあげなくては。


 「もう朝起きれそうだからこの草持っていくね。今後は自力で起きること」

 「え? あ、はい。起きます。てかなんですかそれ。なにか関係あるんですかそれ」


 彼は不思議な顔をしてベッドの近くに置いてあった小さな鉢植えの観葉植物を見つめる。


 「これはオキレソウ。草が水分を欲して朝だけ強い匂いを放ち睡眠から覚醒を促す。その匂いを嗅いだ時に脳が目覚めそうな夢を選択する。鼻が悪い人には効果が薄い」

 「めちゃくちゃ便利な草じゃないですか。このまま使いたいですよ」

 「ダメ。草がなくても起きれるようにならないといけない。これは練習用」

 「なるほどー、練習用……そうか! 草が枯れて効果が出なかったり、草がないところでも起きれるようにってことか」


 彼は納得してくれた。そう、自分で答えを出す。その答えが間違っていてもいい。思考は自己を磨き将来を開拓する。間違った答えなら周りが正してくれる。発信と聞く耳を持つこと。

 子供たちの影響が彼にとって特別なものになってよかった。

 彼は草を凝視していたがあることに行き着いたのか苦悩顔を浮かべ言った。


 「今までの変な夢はその草のせいかよ!」


 フフ、いい顔だ。黙っててよかった。しかしこれだけかな? 気づくかな? 楽しみ。班長早く帰ってこないかな。頼んでおいた種が待ち遠しい。

 よし、木に祈りを捧げよう。大地の力を授かろう。


 気まぐれな神様に祈りよ届け。


 子供の頃から歌ってきたエルフの祈願歌。森に住むエルフ族に代々伝わる祝福の歌。ただのおまじないと分かっていても頼りたいときについつい口ずさんでしまう。

 神から授かりし力は強大で役に立つ。少しでも効果があると思われしモノはやったほうが得だ。

 実り豊かな土地を信仰するエルフ族が砂一面の大地で長い時間をかけて地道に進める大地再生計画。その役に立つ魔法を得るため今日もまた祈る。


 その日もまた変わらぬ時間が過ぎていき平凡な一日が終わった。


読んでいただきありがとうございます。

夢は起きると忘れてしまうことが多いですよね。

睡眠のときに見る夢も、将来を語る夢も、現実というスケールのでかさにビビって忘れてしまいます。

ああ夢よ!愛してるぜ!異世界から帰ってきたら結婚しよう!


では次話もよろしくお願いいたします。


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先生…俺、いっぱい夢みたいです…!!

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