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サンチコア発。恋のから騒ぎ(序章)☆サウジスカル帝国

「あーあ。つまんねぇの」


皆さんお久しぶり!

期待を裏切らない俺、メルローだ!

と、言いたいところだが最近全く面白いことが起こらない。それもこれも皆納まるところに納まっちゃった所為なんだけどさぁ・・・。


「メルロー? 貴方また何か面白い事、考えてない?」


「あれ? イノリちゃんじゃん? 今日は納品はないんじゃないのか?」


「今日はちょっとザックに頼まれて仕入れに出てきたの。その帰りに寄ったんだけど、ティファは居ないみたいね。しょうがない、帰るか」


この元気はつらつな女の子はイノリちゃん。

キルトの幼馴染で、この宿舎の食材を提供してくれてる子なんだ。ティファとは違う思い切りの良さで俺達を驚かせるとても面白い子なんだけど、俺の求める面白さはないんだよなぁ。


てっきりキルトと恋のから騒ぎを起こしてくれると期待してたんだけど・・・どうも、勘違いだったらしい。


「来たばっかりなんだから少し休んでいったら? お茶ぐらい俺入れられるしさ」


「えー? メルローのお茶? 不味そう」


正直者だよ、この子。

間違った方向に真っ直ぐだよ。

でも、清々しいくらい、いい笑顔なのは褒めるに値する。


しかし、今日に限って俺以外宿舎に居ないとか困った。


俺、実は前にイノリちゃんを泣かせてるんだよなぁ。

それ以来ちょっと、距離を置いてたんだけど・・・。


「でも、折角入れてくれるってんだから、貰おうかな?」


う〜ん。

引き止めたのは俺なのにもう俺は後悔してる。


せめてマッジンが居てくれればなぁ。

アイツああ見えてスマートに女性に接するからな?

流石貴族出。

そう見えないけどな?影が薄ぎてさぁ!ププッ!


「何? 何か面白い事思いついたなら教えてよ。一人で笑ってないでさぁ」


「違う違う。そんなんじゃねーの! ただの思い出し笑い。はい、お待たせ」


「ありがと! わぁ、紅茶じゃない。いいの?」


「勿論。そっかぁ、紅茶は嗜好品だもんな。村では飲まないか」


俺は貴族じゃないけど商家の出だからな。

割と贅沢な暮らしをしていたから紅茶は飲み慣れてるけど平民や農民は余り口にはしないかもな。


こんな会話の端々にイノリちゃん達との違いを感じる事はよくある事だけどさ。やっぱり複雑だよなぁ。


イノリちゃんはこんなに可愛いのに、なんで恋人を作らないんだろうなぁ?


俺に相談してくれたらいくらでも紹介するんだけどな?

とびっきり面白そうな展開を繰り広げそうな相手をな?


「・・・わぁ。美味しい・・・」


「・・・・・・そう? それは良かった」


いや、真剣に探す。

ごめんイノリちゃん。


確かイノリちゃんも、本気で相手を探さなきゃいけないお年頃の筈。ふざけてる場合じゃないよな?

どれどれ? お兄さんが話を聞いてあげよう。


「イノリちゃんは、なんで恋人を作らないの?」


「え? なんで急に恋人? そんな話どこから出て来た?」


確かに。

まぁでも、まどろっこしいの俺、面倒だからいいや。

率直に理由を知りたい。どうなの?


「いや? だってイノリちゃん結婚しててもおかしくない年頃でしょ? 可愛いし、働き者だし・・・恋人が出来ないなんて事ないよね?」


「う〜ん。まぁ、確かに申し込まれた事はあるよ? ほら、私働き者だし、ツテも多いし? 嫁にもらって得な事しかないじゃない? 一時期は申し込みが多過ぎてキルトが恋人だって嘘ついてたくらいだし」


え? そうなの?

だから誤解されてたのか。キルト、お前都合のいいように使われてんな? 今現在もそうだがな? 見習いたくない方面でモテモテだな。(憐)


「私、好きな相手とじゃなきゃ結婚したくないのよ。だから、付き合わないの」


おっと?

物凄く当たり前で真っ当な答え返って来たぞ?

成る程。妥協したくないんだな?


「じゃあ、好きな人が居ないって事か」


「ううん? 好きな人はいるけど?」


・・・はい?


「・・・えっと? じゃあなんで、付き合わないの?」


「あのさ、私だけが好きでも相手が私を好きじゃないと意味ないでしょ? 当たり前の事、聞かないでよ」


はぁああああ!?

何それ初耳ですけど? 何その展開! 誰? 相手は誰なのかな? イノリちゃん!


「そんな顔しても教えないわよ? それに、知ってもメルローが楽しい展開にはならないからね? 遊ばれるの分かってるのに教えるわけないでしょ?」


「ええ〜? 揶揄ったりしないから教えてよ。俺の知ってる奴?」


「だ・め! 教えない。それに私、相手に言うつもりないし」


「え!? そうなの? なんで? まさか既婚者?」


あれ? なんでそんな渋い顔?

あ、しまった。俺また悪い癖が出てたかな?ゴッメーン!


「はぁ。メルローこそ人の色恋沙汰ばかり追いかけてないで自分の事考えたら? メルローは恋人作らないの?」


おや?

矛先がこちらに向いたぞ?

確かに俺も人の事言えないよなぁ。


「う〜ん。あのさイノリちゃん。俺、女の子に好かれるタイプだと思う?」


「思わない。女性受け悪そう」


ストレートだな!

そこはもっとこう・・・いや、まぁいいや。


「そうなんだ。俺モテないんだよ。だから彼女出来ないんだよなぁ」


「そうなの? 私はメルローは恋人作る気がないんだって思ってたけど」


イノリちゃんって偶に鋭いというか、結構確信突いてくる時あるよね。モテないのは事実であるが。


「面倒なんでしょ? 恋人作るの。まぁ、私もそうだから気持ちは分かるよ」


「え? イノリちゃん実は恋愛経験豊富なの? 俺ちょっとドキドキしちゃうな?」


なんだろう。

なんだか若干苛々してきたぞ?

確かに俺、気は短い方だけど、ここは苛々する場面じゃないよな? え? なんで?


「まぁ。豊富というか・・・何人かと付き合った事はあるよ。すぐ別れたけど」


「へぇ? 因みにどうして上手くいかなかったの?」


「・・・可愛くないらしいわよ」


可愛くない? ん? 誰が可愛くないの?


「男から言わせると、私は色気も素っ気ないつまらない女らしいわ。化粧っ気もなくて、朝から晩まで仕事漬け。偶に会えば会話の内容も収穫の話や村の事ばかり。それに、私は相手にすぐ言い返すから生意気なんですって」


ヘェ〜? オイオイ?

イノリちゃんて見かけによらず、男見る目ないんじゃないの? それ、まさかそのまま言われた訳じゃないよな?


「ムカついたから何人かは思い切りグーパンチかましてやったけど・・・それで激怒してやり返されそうになる度キルトが助けてくれたから、変に誤解されちゃってさぁ。これでも、悪い事したなって反省してるんだけど」


「いいんじゃないか? 気にしなくて。キルトは家族みたいなもんなんだろ? それに、女の子に手をあげる方が悪い」


「あはは! メルローもやっぱり騎士様なんだね? 皆キルトや、メルロー達みたいな男性ばかりじゃないよ。それに、先に手を挙げたのは私の方だしね?」


ふーん? イノリちゃんて俺が想像してたよりも大人なんだなぁ。当たり前だけど。

生意気で可愛くない、ねぇ?


「イノリちゃんも、その男達も見る目ねぇなぁ。イノリちゃんはその素直な所が可愛いのにな?」


「そりゃどうも? メルローもそんな風に女の子褒められるんだね。初めて見た、そんなところ」


あれ? イノリちゃんなんで機嫌悪くなったの?

何か怒ってる?


「何怒ってるの?」


「怒ってないけど? ただ、思ってもない事口にしないで欲しいわ。私、メルロー達とはいい関係を築きたいの。変な気を使われたくない」


そんなつもりなかったんだけどな?

俺の胡散臭が前面に出ちゃったかな? イノリちゃん?


「何? イノリちゃん俺とそんなに仲良くなりたいの?」


「うん」


「・・・俺はキルトとは違うけど?」


「当たり前でしょ? メルロー、キルトと被るところなんて一つも無いんだけど?」


いや、パシリにされるのは流石に遠慮したいという意味なんですが? 上手く伝わらなかった!


「マッジンもメルローも、やっぱり住む世界が違う人だよね。気安いけど、やっぱり壁を感じる。まぁ、しょうがないんだろうけど・・・」


「・・・イノリちゃん?」


「・・・嬉しかったのにな」


「え?」


「あの時、メルローに怒鳴られて思ったんだよね。私、もっとメルローに頼られたいよ。腫れ物に触れるみたいに扱われるのは嫌」


・・・本当に、この子鋭いよね。

やっぱり気付いてたか。俺がイノリちゃんを避けてたの。


「俺は嫌だ。女の子を傷付けたくない」


「メルロー?」


ああ〜やだなぁ。

イノリちゃん絶対許さないって言ったじゃん?

そのまま許さないでおいてくれ。


「そんな事言われたら俺勘違いしちゃうかも知れないけど? 好きな奴がいるなら誤解される様な事言わない方がいいんじゃないか?」


「別に構わないけど? 誤解じゃないし」


会話が噛み合ってない?

アレ? イノリちゃんソレはどういう意味?・・・え?


「さ、そろそろ私帰らないと。メルロー紅茶ご馳走様! 凄く美味しかった」


「え? あ、いや。そりゃどうも?」


「他人の揉め事を眺めるのも程々にね? その調子でティファに絡み続けたら、いい加減ハイトも黙ってないと思うよ? じゃあね」


バタン!


「・・・ありゃ・・・え? 嘘だろ?」


これは、全て見透かされてたな?

一体いつバレた?


あと、イノリちゃん。マジですか?


「・・・俺? イノリちゃん本当趣味悪っ!?」


どうすんだコレー!?

しまった。これは予想出来なかった。

余計な事聞くんじゃなかったーー!!


「わっ! メルロー居たの? そんな所で何してるんだ?」


「・・・マッジンの阿呆。どこ行ってたんだよ、役立たず」


「あ? お前唐突になんだよ」


言えない!

こんな事誰にも言えないぞ!

こんな事知られたら俺が皆に面白おかしく楽しまれてしまう!!それはいただけない! しかし、どうしたらいいのかも分からない!ぐぁー!


「・・・お前、遂に禁断症状でも起こしたのか? 揉め事を楽しむのも大概にしておけよ・・・」


違ぁーう!

しまった。普段の行いのツケが一気に来たぞ?

もう俺は開き直るぞ? 俺は何も知らない、気付いていない・・・イノリちゃんが好きな相手が実は俺だったとか絶対あり得ないからな!!

不機嫌令嬢はお犬様を懐かせたい

の27話目のやり取りの内容が少し出てきております。


気になった方はそちらを覗いてみて下さい。



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