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一応軽くご挨拶☆サウジカル帝国サンチコア

ナレーションで度々登場。

そう。私はこの大陸の神様なのです(無力)

挿絵(By みてみん)



ある世界にミシュティンバルという大陸が存在した。


その大地には現在六つの国が存在し、それぞれ独自の文化のもと暮らしている。


その他にも魔物や、伝説の竜、そしてまだ誰も辿り着いていない幻の大地もあるのだか、その話は今回出てこない。


人間の間にそれぞれの文化や掟があるように、この大陸には普通の人間が知りえない理がある。


人の暮らす国には必ず、一つの精霊が存在するのだ。


彼等は基本、人間には干渉しない。

ただその大地を見守り慈しむ。

彼等がそこに存在する、それだけで大地は基本潤った。


精霊は役目を終えると自然と世代交代を終え、その姿を消す。その力を大気や大地に返すのだ。


そうやってずっと彼等はこの世界で生きて来た。


しかし、その過程で今まで何も問題が起こらないわけではない。


「ちょ! シェルミンテ! 勝手に持って行かないで。 お金! お金払わないといけないから!」


「え? お金ってなんだっけ? んー? あ、物と交換するやつ?」


・・・・。


精霊は世代交代で人間に生まれ変わる者もいる。


きっかけはいつだったか。

ある精霊が人間社会に強く興味を持ち人間に生まれ変わる事を強く望んだのが始まりだった。


そして、その願いは叶えられ、人間が魔力を持つように進化した。精霊の生まれ変わりは強い魔力を所持していたからだ。


それから、人は魔法を使うようになった。


その後、他の精霊も次々に人間へと生まれ変わった。

彼等からすると人間はとても不思議で興味深く意味不明な存在らしかった。それはそうだろう。


精霊には人のような複雑な感情は持つ事が出来ない。

彼等は無垢な監視者だ。


しかし、厄介な事にそんな彼等と同様に、この地に役割を持って生まれてくる人間もいたりする。


その人間は生まれながらに精霊と強い繋がりを持っている。彼等は精霊が人として生まれ変わる事が出来るようになった時、同時に生み出された。


精霊を守る一族。


そして、精霊に無条件で愛される存在である。


「アレェ? なーんか見た事ある人があっちから来るよ? キルトー? いいの? アレ」


「げぇ! ケ、ケルベナ様?」


「騒ぐな、気付かれる。久しいな? シェルミンテ」


「わーい! レインハートだ! 私に会いに来てくれたの?」


さて、長い前置きは置いておく。

ここからが本題なのだが、さっきから下で騒いでいるこのシェルミンテという娘、察しはついたと思うが元精霊の生まれ変わりである。


しかしその生まれ変わり方が問題だった。


彼女は精霊の時の記憶を全て残したまま、人の体を介せず生まれ変わってしまった中途半端な異端児である。


因みに私はこの世界を見守る存在。

ある国では【神】と呼ばれる存在だ。


しかし、私がする事はあくまで見守り続けるのみ。

私が手を出せる事は本当に限られている。


だから、彼女があんなヘンテコな転生を起こした責任は私にはないとここで弁明しておく。


彼女は精霊の時、余りに人間と接触し過ぎてしまったのだろう。その為、正しく世代交代が行われなかったらしい。

本来なら新しい精霊が目覚めてから、その姿を消すものなのだ。


「ああ。買い物を済ませて宿舎に行くぞ。新しい精霊を見る事が出来るのは今のところシェルミンテしかいないだろ? 少し確認しておきたい事がある」


「なーんだ。私に会いに来てくれた訳じゃないんだ? ガッカリ〜」


「勿論、可愛いシェルミンテにも会いたかったぞ? 立場上気軽に城下に降りられないからな? おいでシェルミンテ」


「えへへ〜! 行っていい? キルト」


「・・・・失礼のないようにな?」


しかし。

この状況はなんなのだろうか。


シェルミンテは最初キルトという一介の騎士が彼女に名前を付けた事で人への転生を決めたはずだった。


それが何故か今は自分の運命の相手探しに夢中であり、当初予定していた相手は完全に保護者扱いである。


キルトが不憫でならない。


「今日は豚と豆の塩煮込みだってティファが言ってたよ? 二人は豚、好き? 私初めて食べた時の感動が忘れられないんだぁ。豚ってあんなに美味しかったんだねぇ・・・味覚ってすご〜い」


「実は俺はティファの料理をまだ食べた事がないんだ。そんなに美味しいのか?」


「美味しいなんてものじゃないです。絶品です」


サウジスカル帝国首都サンチコアにはとても腕のいい料理人が存在する。


彼女はこの国の騎士達が暮らす宿舎の料理人である。

実はここだけの話、彼女はこの国を救った張本人でもある。本人に自覚は全く有りはしないけれど。


「・・・取り敢えず、話はご飯を食べた後でいいか。一人分増えても問題はないな?」


「恐らく・・・ただハイトが怒るかも知れませんが。分け前が減るとかなんとか・・・」


「それは問題ない。私の権力でねじ伏せる」


「強気だね? ハイト相手に強気だね? 流石殿下だね?」


因みにさっきから話しているこの三人、特にその内2名は本来ならこんな場所に気軽に来てはならない立場の人間である。


ケルベナ・レインハートはこの帝国の皇族であり、シェルミンテは前精霊。しかも力も記憶もある程度所持したままという、とても危険な存在だ。


しかし、この国は昔からの風潮なのか、はたまた危機感が薄いのか、細かい事は気にしない者達の集まりだった。


「今日はどんな当たりクジがあるのかなぁ? 楽しみ〜」


・・・。


このシェルミンテという少女。

精霊時代に余りに苦労をかけ過ぎたせいか、生まれ変わった途端にアホに変貌した。


歴代最年長記録で精霊を務めた人物である。

その功労を讃えたい。


素直に・・・讃えたいのだが。


彼女はきっと何も考えていない。

シェルミンテはただ、人間になりたかっただけである。

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