そして本は開かれた
此処は何処でしょう。
其処は、座標として定義されていない空間とも言いきれない様な世界だった。いつの間にか存在していた者は溜息を吐く。
座標として定義されていない、この定義はかなり面倒で嫌いなんですが。座標として定義されていないというのに何で私は存在しているのかが分からない。
存在しているためには空間が無ければいけない。このとき、空間というのは[心の中]という様な概念的であっても良い。
だが、概念的であっても空間が無ければ存在することはできない。
この様な持論を持っている私ですが、これで嫌なのが座標が定義されていない場合ですね。普段から空間は座標で認識している私からすると、厄介にも程がある。
座標があって空間が存在すると認識しているのですから、持論を真っ向から打ち砕きにかかって来ていると言ってもね。過言じゃないんですよ。
私の中では、ですが。まあ、持論なんて自分自身で矛盾に気づかなければ使っていても良いとは思いますよ。
今回はまあ、座標がないとしても存在しているなら其処には空間があるとしていますがね。この理論というか持論の使い方、不安定過ぎて使いたくはないというのが本音ですよ。流石に、無謀を好む訳ではないのでね。
私一人なら少し危なかったですが他に存在している者が居るなら話は別ですよ、勿論ながら。
この場には最低でも、他に存在する人物が居るでしょう?
だってこの話は其れを目的として制作されたのですからね。
まあまずは五百文字達成……ここまで来ると六百文字達成おめでとうございます。何かでるという訳ではないですが祝っておきましょう。
何と言ってもここまで読み切っているのですから。
この小説はただの実験の様なものですよ。前に存在しているものとの比較の為に、ね。
だからここまで何かがおかしい。そして理解を行いずらいものとなっている。まあ、比較という程前に存在する物語が良いものかと言われれば首を傾げますがね。
ただ、この物語を手がけた者が前作の方がこれよりかましな小説と優越感を得たいだけですよ。
つまりは作者の自己満足であり、……
「何時までその世界に浸っているのかな?」
「……ああ、助かりました。あれ以上は少し危なかったので」
「もう少し危機感を覚えるべきだよ。私が居たとしてもね。私の能力は万能ではないのだから」
「貴女の能力は有能ですがね。貴女自身が能力の長所を潰しているのではないですかね」
「知ってはいるよ。改善する気はないけれどね」
月の出る前の夜空の様な色の髪を持つ女性は少女の肩を揺さぶって少女を起こす。桜色の髪を持った少女は正気に戻ったことで女性に向けてお礼を言う。
「次は飲まれない様にね。その本は私ではどうすることもできないから」
「言われなくてもそうしますよ」
女性の苦言に少女は溜息を吐きながら手に持っていた表紙が焦げ付いた本をその場に置く。