七
あれから、徒にざらざらと月日は流れて12月20日になった。
腕時計に目をやると5時30分を指している。
少し早いか、と思ったのだが、会場には既に半数くらい集まっていた。
会場をうろうろしていると、背中に懐かしい声をかけられた。
「久し振りだな。くく…全然変わってないな」
「そういう土屋こそ」
見目形は、丸で高校時代の儘に見えた。敢えて言えば峭刻な顔つきが
少々強調されたくらいのものだった。
「でもさ、千里はこういうの来ないかと思ってたよ。クラスでもグループから離れてる様なとこあったし」
「いや、それ言うなら土屋の方だよ。クラスで誰かと喋ってんの殆んど見なかったぜ」
「そうだったかな」
「全く…相変わらずだな」
腕時計を一瞥すると5時45分になっていた。
会場をざっと眺める。久保田らしき姿は見受けられなかった。
「あのさ、岡田って覚えてるか?」
「え?ああ覚えてるけど…何だよ突然」
不思議そうな目をする土屋に構わず続ける。
「岡田が昔変な事言ってたなぁって…ちょっと思い出したから」
「変な事?」
「久保田は土屋好きなんじゃないかって。」
恐る恐る土屋の表情を読み取ろうとする。初めは呆気に取られた様な表情をしていたけれど、
次第に、何か思い当たったらしく表情に幽かな笑みが忍び込んだ。
「ふ〜ん。成る程な」
「…何?」
「詰まりさ、千里は久保田が好きなんだろ?」
「…え?いや…」
顔の紅くなるのが自分でも判然と分かった。
「分かりやすいな。抑、久保田が俺に気があるらしいって、千里がそんな事
態々言うなんておかしいからな」
全くの図星だから、僕はただ黙って土屋の高説を聞いていた。
「今日は屹度、久保田も来る筈だから、聞いてみろよ」
「え?今日?態々?!」
「大丈夫だって。多分向こうも気があるって」
「そうかなぁ」
「俺の勘じゃ大丈夫だ」
そんな事を話していた時、不意に背を軽く叩かれた。
そこには、昔の儘の花の様な笑みを香らせる久保田が立っていた。




