五
シャトルは、高く弧を描き、僕と岡田の間を往来する。午後の薄くなった空の色に、白いシャトルが、映える。
「岡田、知ってる?」
「ん?何を?」
「土屋の…」
進路、と続けようとすると、岡田は僕の言葉が結ばれるのを遮って言った。
「やっぱり?そうだよなぁ。あいつ頭良いしな、うん。それに結構見た目も…」
「何?知ってたのか?」
「いや、見てれば大体分かるよ。俺、そういうの目敏いんだよ」
「見てれば?そういうものかなぁ?」
「まあ、土屋は、ポーカーフェイスだから、あれだけど向こうはもう確実だと思ってたよ」
「え?どういうシステム?」
「そりゃ、久保田からアプローチしたんじゃないかって事だよ」
「いや、ちょっと待って。何かごちゃごちゃしてきた。何で久保田が出てくんの?」
「だから、土屋と久保田が付き合ってるって話じゃねーの?」
「はぁ?そんな話じゃないって。大体いくらなんでも、そんな事ある訳無いだろ」
「いや、土屋はどうか知らんけど、久保田は、絶対好きだと思うな。」
「そうかなぁ」
「ん?じゃあ藤本は何の話しようとしてたんだ?」
「ああ、いや、進路の話。京大だってさ」
岡田は、一瞬ぎょっとした表情になった。
「へぇ?東大じゃないんだ」
「何か東京が嫌いとかなんとか」
「何だよ、その理由。俺が土屋だったら迷わず東大に行くのになぁ」
僕はくすくす笑った。
「だよなぁ」
「京大か」岡田は少し遠い目をしていた。
不図気が付くと、久保田の視線がこちらに向いていた。
一瞬間、僕と久保田の視線が絡んだ。そうして、すぐに二人の視線は別へ向いた。
その頃から、以前感じていた視線は、久保田から発せられていたのではないか、と疑い始めた。




