四
3年の体育は前期と後期で種目を選択するという方式が採られていた。
男子は、サッカーとバドミントンとバスケットボールの3つ。
中学の頃一応入部していた(部活が強制だった為に所属していたに過ぎませんでしたが)バドミントンを選択していた。
全18名、6人1組で3つのグループに分けられ、ダブルス3組が作られていた。
そのグループで僕は、岡田遥輝と組んでいた。岡田は、理系クラスに在籍しており、確かバドミントン部に所属していたと記憶している。
数学が得意だったが、英語はからっきし駄目で後は標準。
大人しかったが、気が優しくて良い奴だった。
グラウンドに出るとまだ岡田の姿は無かった。
仕方ないので、土屋を相手に軽く打ち合いをする。
「そう言えばさ、土屋ってどこ行くの?」
「何が?」
「何って大学だよ」
「ああ。お前とおんなじとこ」
「…あのなぁ…真面目に答えろよ」
「はは。一応京大」「そうなん?東大じゃないんだ」
「うん。東京嫌いだから…あ、受かる自信はあるけど」
「嫌いって…」僕はそれが妄言でも、虚勢でも無いことを知っていた。
そうして、好き嫌いで大学を決めるなんていうのは、特別な人間、数限られた人間にだけ許されているのだということも。
土屋は、東大か京大でなく、全ての大学から選んで京大と言っているのだ。
何となく力が抜けた。その時打ったシャトルは、ふらふらとなだらかに下降して、
土屋のラケットに届くことなく力尽きた。
「土屋君」
土屋がペアを組んでいる(グループを決めた際、阿弥陀籤で決まりました)久保田美貴だった。
「折角ペアになったんだから、一緒にやろうよ」
無邪気な笑顔が眩しかった。しかし、こんな風に、土屋に話し掛ける女子は久保田くらいだったろう。
「あ、そっか。岡田君がまだ来てないのね」
「ああ」無愛想に土屋が答えた。
それでも気にしていない様子で、久保田は、人差し指を下唇に軽く当てて、思案する様にして
「じゃあ、藤本君も一緒にやらない?」と言った。
久保田は誰にでも優しいから、僕にも気を遣ってそう言ってくれているのは分かっているのだか、
女子と話す機会自体少ない僕には、その優しさがくすぐったい様な、痛い様な心持ちがした。
「え…俺…?俺は…」
その時、岡田が来ているのに気が付き、「あ、岡田来たから」と言ってそそくさと逃げ出した。
自分でもしどろもどろの、醜態を演じたのが、判然と分かっていたが、どうにもならない。
そうして土屋が笑いを堪えているのを背中に感じた。




